米Googleの環境活動、時間単位の粒度へ
クラウド大手の米Googleは標準的な再生可能エネルギークレジット(REC: Renewable Energy Credit)よりも詳細なエネルギー追跡を可能にするツール、「Time-based Energy Attribute Certificates」(T-EAC)の世界展開について進捗を発表した。
T-EACは1時間ごとに生成されるRECに相当し、企業は1日の特定の時間を選んで持続可能なエネルギーのクレジットを購入することができる。RECの場合、企業は電力消費量を相殺するためのクレジットを月単位または年単位で購入するため、時間ごとで見た場合に電力網によるエネルギー消費の全てを再生可能電力で賄ったという保証にはならない。
世界の電力網を脱炭素化するためには、「あらゆる電力網でどのようなエネルギーが生産、消費、取引されているかをエネルギー消費者、システム運用者、政府が1時間単位で正確に把握できる新しいシステムが必要です」。Googleでエネルギー開発を担当するMaud Texier(モード・テクシエ)氏が自社ブログに書いている。
T-EACの開発が完全に完了し、Googleの内外に展開されれば、同社のCFE目標はさらに達成に近づく。また、再生可能エネルギーのエコシステム全体にプラスの影響もあると同社は期待している。
Texier氏の説明によると、1日の全ての時間帯について電力網でカーボンフリー電力が利用可能な状態かどうかという有益な情報がT-EACによって得られるという。こうした知見が得られれば消費者が自分のエネルギー使用量について理解するのに役立ち、政府がより迅速で費用対効果の高い脱炭素化戦略を策定する促進材料にもなる。
「また、最も必要とされる時間帯にカーボンフリーエネルギーを供給する技術やプロジェクトに対する新しい投資を刺激する価格シグナルも生まれるでしょう。これが一番わくわくする部分かも知れません。電力網全体の脱炭素化を加速することができます」と氏。
T-EACの活動
Googleは昨年この活動を3大陸に拡大し、T-EACのパイロットプログラムを実施した。
北米ではエネルギー属性証書の追跡と検証を行う非営利団体M-RETSと提携、1時間ごとのエネルギー追跡手法をM-RETSのプラットフォームに適用した。また、米APXと協力し、同社のプラットフォーム「North American Renewables Registry」(NAR)を通じてSPP(Southwest Power Pool:南西地域電力プール)内で1時間ごとのREC提供を支援している。
「この取り組みによって、間もなく米国中部と中西部の発電事業者は、時間単位のデータが利用可能な場合であれば1時間ごとに証書を償却するという選択肢を持てるようになります」。Texier氏は説明する。
チリで実施したT-EACパイロットプログラムでは、チリのデータセンターの1時間ごとのエネルギー消費量を3つの再生可能エネルギープロジェクトによる毎時間の発電量で相殺し、データセンターの電力需要を100%賄うことができた。
同社は2021年に発行された全てのRECについて時間単位で証書を償却している。再生可能エネルギーが検証可能な形で販売・利用されたことになる。
Googleによると、こうしたグローバル展開によってエネルギーデータと時間単位のマッチングを可能にするツールやシステムの開発が進むとともに、T-EACの普及を促進する技術標準を策定できるようになるという。
今後の見通し
T-EACがエネルギー消費をより効果的に追跡する方法として主流になっていっていることで、Texier氏は時間単位でのエネルギー相殺がもたらすであろう市場の変革と電力網レベルでの脱炭素化に大きな期待を寄せている。
「各種クリーンエネルギープロジェクトで電力網レベルでの炭素排出の影響をよりよく把握できるように、カーボン会計の仕組みをアップデートしようという取り組みが進んでいますから、このツールによって最も影響の大きいクリーンエネルギープロジェクトに資本を再分配しようという動きが広く進むでしょう。政策立案者にとってはエネルギー消費者に24時間クリーン電力を購入するよう奨励できる新しいツールとなります」。Texier氏は説明する。
Googleは2030年までに24時間炭素排出ゼロのエネルギー消費を実現するため、提携相手と協力して自社の製品ポートフォリオ全体に時間単位での証書の利用を拡大する計画だ。
https://www.sdxcentral.com/articles/news/google-green-efforts-gain-hourly-granularity/2022/03/
Emma Chervek is a reporter at SDxCentral covering environmental sustainability and cloud-native ecosystems. Emma lives in Denver with her dog Koby, and they go on the best walks in the world together. Emma can be reached at echervek@sdxcentral.com or @emmachervek on Twitter.
Emma Chervek is a reporter at SDxCentral covering environmental sustainability and cloud-native ecosystems. Emma lives in Denver with her dog Koby, and they go on the best walks in the world together. Emma can be reached at echervek@sdxcentral.com or @emmachervek on Twitter.
JOIN NEWSME ニュースレター購読
KCMEの革新的な技術情報を随時発信
5G・IoT・クラウド・セキュリティ・AIなどの注目領域のコンテンツをお届けします。
KCME注目の技術領域に関するテックブログを配信しています。
KCME注目の技術領域に関するテックブログを配信しています。
RELATED ARTICLE 関連記事
-
データセンター Dan Meyer2024.09.04
データセンターブームはいつまで続くか=AWS, Microsoft, Googleがけん引
AI需要を背景としたデータセンターブームが本格化して…
-
IT Dan Meyer2024.08.30
シスコさらなる人員削減へ、ネットワーク部門を統合へ
シスコは新たな企業再編計画を推進しており、これにより…
-
エッジコンピューティング Dan Meyer2024.08.28
AWS、Microsoft、Googleがエッジも侵食するのか
データセンターやクラウド、通信の分野で、エッジという…
-
クラウド Dan Meyer2024.07.26
Google Cloud、Azureより低価格とアピール=VMware on Cloudサービスで
VMwareの顧客をめぐってパブリッククラウド企業の…
HOT TAG 注目タグ
RANKING 閲覧ランキング
-
セキュリティ Nancy Liu
デル、データ侵害を確認=ハッカーが4900万件の顧客データ販売を主張
-
IT Dan Meyer
BroadcomによるVMware製品の価格/ライセンスの変更がどうなったか
-
IT Dan Meyer
Dell、HPE、LenovoはBroadcomがVMwareの顧客の懸念を和らげるのに役立つか?
-
IT Dan Meyer
BroadcomがVMwareパートナープログラムの詳細を発表
-
ネットワーク Sean Michael Kerner
2024年における10のネットワーキング技術予測
-
セキュリティ Tobias Mann
米CitrixはMcAfee社、FireEye社と同じ運命を辿るのか=買収合併の後に
-
セキュリティ Nancy Liu
SASE市場が急成長=第1四半期、首位はZscaler
-
スイッチング技術 Tobias Mann
コパッケージドオプティクスの実用化は何年も先=専門家談
-
IT Dan Meyer
米キーサイトがVIAVIのスパイレント買収に「待った」=15億ドルを提示
-
ネットワーク Sean Michael Kerner
2023年 ITネットワークのトレンドTOP10 現時点