Dent OS=ネットワークインフラのオープンソースイノベーション
オープンソースのネットワークOS「Dent」が進歩している。Linux Foundation(LF)傘下のDentプロジェクトは、エッジ展開やエンタープライズ展開の効率向上に役立つ様々な機能を追加し続けている。
10日から開催された「Open Source Summit North America」のとあるセッションで、Amazonの技術プログラム担当プリンシパルマネージャー、Michael Lane(マイケル・レイン)氏がDentプロジェクトの進捗と現在向かっている方向について概説した。Amazonは同プロジェクトの主立ったコントリビューターであり、2019年の立ち上げから協力している。Dentは主にエッジ展開をターゲットとしており、Amazonなどの大手企業が実際にエッジで使用しているという。
Lane氏によると、Dentは現在「Amazon Go」「Amazonフレッシュ」「Amazon Style」といったAmazonの実店舗に配備されており、Amazon倉庫でも導入され始めているという。
「Dentは単なるOSではなく、ソフトウェアやハードウェアを含めたエコシステム全体を指す言葉です。多数のメーカーが関わっていますし、半導体企業も必要です」と氏。「現在当社が活用しているテスト手法もDentエコシステムで提供されているものです」
ハードウェアに関しては、ルーターやスイッチに関係してくるだけでなく、カメラやセンサーといったエッジデバイスでもDentを有効活用できる可能性があるという。
「実店舗では、台座や入退場ゲートでもDentを使っているものがあります」と語った。
01Dent=オープンソースの発展形
DentのベースになっているのはオープンソースのLinux OSだ。
「ユーザー目線ではLinuxデバイスのように見えますし、使用感も同様です。ソースコードへのアクセスも自由です」とLane氏。「障壁はありません。ご存じのように、Webサイトから直接バイナリをダウンロードしてインストールすることが可能です」
Linuxは土台ではあるが、Dentの構成要素のひとつに過ぎない。Dentがリリースされた当初、Lane氏としてはAmazonの小売事業に必要なネットワークを支えることが第1の目標だったという。
2022年にはDent 2.0がリリースされ、プロジェクトは大きく拡大した。Amazonだけでなく、拡大していくコミュニティのユーザー企業各社のニーズを満たせるようになったという。この時のアップデートは拡張PoE(Power over Ethernet)に対応したことが大きな特徴だった。
「PoEはエンタープライズ領域では極めて重要なものです」と氏。「当社の入退場ゲートはすべてPoEで給電しています」
ハードウェアを問わないPoE給電に対応するというのはひとつの挑戦だったが、Dentはこれを成し遂げたとLane氏は確信している。
Dent 2.0ではポート分離機能も加わった。米国防総省(United States Department of Defense、DOD)の要件によるもので、同省はネットワークの一部にDentを使用したいと考えている。
02新しい抽象化機能
Dentの最新リリースはVersion 3.0で、4月20日に一般公開されている。
大きな改善点のひとつはIEEE 802.1xに対応したことだ。アクセス制御・認証のプロトコルを定めた規格となっている。Lane氏によると、Amazonの倉庫では802.1xを使用しており、Dentにも同機能が必要だったという。
Dent 3.0では他にも、新しくQoS(サービス品質)管理機能が加わった。エッジ展開で重要度が増している機能だ。Lane氏によると、Amazonの各店舗には高価なWANリンクがあるためQoSが必要になるという。あらゆる種類のカメラや店舗資産でAIを多用しているが、推論作業のほとんどはクラウド上で実行しているため、エッジからクラウドにデータを取り込めるよう、帯域幅を適切に最適化できなくてはならない。
Dent 3.0最大の変更点は、おそらくSAI(Switch Abstraction Interface、スイッチ抽象化インターフェイス)をサポートしたことだろう。SAIの目的はOSをこれまでよりも簡単に様々な種類のハードウェア上で実行できるようにすることだ。SAIはもともと「Open Compute Project」(OCP)のオープンソースプロジェクトとして誕生した。開発には多くの面でMicrosoft主導のオープンソースネットワークOS「Sonic」が関わっている。
03オープンソースのネットワークOS対決=Dent対Sonic
DentとSonicは現在どちらもLF傘下のオープンソースネットワークOSプロジェクトで、両者ともSAIに依拠することとなった。
Lane氏はSonicを競合とは認識しておらず、2つのプロジェクトは異なるユーザーの異なるニーズに応えるものだと考えている。氏の見方では、Sonicはデータセンターに重点を置いており、そこからエンタープライズ領域に向けて取り組みを進めているという。これに対し、Dentが注力しているのはエッジで、そこからエンタープライズ領域に手を伸ばしている。いずれ多少のオーバーラップが発生することはあるかもしれない。
「その頃には、お客様に対してDentとSonicどちらのOSを使いたいかという選択肢を提供できるでしょう」と氏。「この2つは必ずしも競合するものではありません。今は2つのプロジェクトが協力し合ういい機会なのではないかと考えています。どちらもLinux Foundationの傘下に入りましたから、じっさい中立的な場で協力する手立てがあると思うのです」と語った。
How Dent brings open source innovation to networking infrastructure
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