AIはデータセンターのエコシステムにどう影響するのか
AI対応によるデータセンターの強化が進みそうだ。向こう数年間でデータセンターへの設備投資が急増し、1兆ドルを突破する可能性がある。ロケーション間の相互接続網にも波及するという。
米調査会社デローログループ(Dell’Oro Group)の予測によると、設備投資額は2028年まで年平均成長率(CAGR)24%で急増するという。「AI関連のデータセンターインフラ需要が急増する」ためで、市場規模は今後数年間で13桁ドルに達する可能性があるとした。
「AI関連では、クラウド型データセンター、企業データセンターへの設備投資が、今後5年間で1兆ドルを超える可能性があります」。シニアリサーチディレクターのBaron Fung(バロン・ファン)氏が述べている。「AI対応インフラはきわめて資本集約的で、GPUやカスタムアクセラレーターを搭載したサーバー、AIネットワーキング、ストレージ、施設などを必要とします。業界はまだAI関連の投資で予想される利益を見極めようとしているところですが、その間にも、エコシステムでは、長期的に持続可能な形で設備投資を拡大できるように大きな努力が払われています」
デローログループによると、投資の大半は、アマゾン、グーグル、メタ、マイクロソフトといった米国拠点のハイパースケーラーがけん引することになるという。早くも2026年には、この4社だけで世界のデータセンター設備投資額の半分を占めるという予測を述べている。
ハイパースケーラーではこのところ、AI関連の投資を増やす必要があることを示唆する発言が増えている。
マイクロソフトの直近の決算説明会では、Amy Hood(エイミー・フッド)CFO(最高財務責任者)が次のように語った。「当社では――このことについては、数四半期にわたってお伝えしてきましたが――AI需要に対して容量が十分には足りていません。(中略)AI向けに提供できる容量が追い付いていないため、サードパーティと契約して支援を頂いています。Azureプラットフォームを拡張して需要に応えるのを喜んで支援していただけるパートナーです。また、もっとバランスの取れた状態に戻せるように、先ほどお話ししたように、かなりの投資をして構築を進めています」
一方で、各社とも、どのように資金を活用するかについては意識的だ。
アマゾンの第2四半期決算説明会では、Andy Jassy(アンディ・ジャシー)CEOが説明に立った。AIによってデータセンターのトラフィックが増加するなか、十分な容量を確保することが重要だと認めつつも、「容量を増やしすぎてしまうと、経済性が悲惨なことになります。望ましい営業利益は出ないでしょう」と語った。
「今の状況としては、AIやインフラにすでに多額の投資をしているけれども、今以上に容量を増やしたい、という要望がみられます」と氏。「大きな需要が寄せられています。当社としても、非常に大きなビジネスになると考えています」
米ABIリサーチのレポートによると、AI需要で火が付いた設備投資ラッシュは「大規模/超大規模コロケーションデータセンター」の建設にも向かうという。現在は世界のデータセンターの28%がいずれかの規模に該当するが、この数字が「2030年には43%に増加する」としている。「AI/生成AIのワークロード処理など、大量のデータを消費する用途に対応できる、大規模データセンターの建設が進むため」だとした。
こうしたAI需要の増加はどこから来ているのだろうか。
調査会社ISGの新しいレポートによると、一般的な大手企業が使用するAI対応アプリケーションの数は、今年末までに2倍近くに増える見込みだという。2023年末には平均250個が使用されていたのが、2024年末には488個に増加するとしている。
データセンターの増設と、相互接続
現在の投資ラッシュを受けて、新たにデータセンター間接続の需要も増えると見込まれている。
ルーメン・テクノロジーズ(Lumen Technologies)のCTO(最高技術責任者)、Dave Ward(デイヴ・ウォード)氏がSDxCentralの取材で説明したところによると、データセンターの使用量が急増する場合、ネットワークアーキテクチャの強化が必要になるという。
「AIの構築に関しては、容量の面でいろいろな制約があります。電力の確保ですとか――文字通り電力網からの供給電力ですが、そのほかにも、データセンターをどこに作るのか、GPUを確保できるのか、といった制約です」と氏。「ネットワーク容量というのはとても希少なリソースです。データセンターやAIデータセンターを建設している場所に供給する場合などは、特にそうです」
たとえば、米調査会社ライトカウンティング(LightCounting)の予測では、AIの利用が拡大していることから、2024年はAIクラスターで使用するイーサネット光トランシーバーの売上高が倍増するとしている。
Ward氏はこうした取り組みについて、次のように話している。「ルーメンは接続を提供するパートナーですから、当社としては、こうしたロケーションや大きなデータセンター、つまり、適切な電力やサイズ、規模を備えていて、GPUを使ってAIワークロードをホストしているような施設ですが、その間を相互に接続するAIファブリックの完全な構築プランを用意して、この目的に特化した接続ファブリックを作ることになります」「光ファイバーも無線帯域も大量に必要です。経済性の面では、クラウドに関する他の領域とはまったく事情が異なります。他の領域では、依頼を受けて、単純に経済性要件に合わせて構築すればよいのですが、この領域ではそういうわけにはいきません」
電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
X(旧Twitter):@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime
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