米HPEのジュニパー買収、EU当局が承認=ジュニパーの財務は悪化
ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)によるジュニパーネットワークス買収計画が欧州委員会(EC)の承認を得た。買収額は140億ドルで、手続き完了までには1年ほどを予定している。ジュニパーネットワークスの事業は低迷が続いているが、それまで乗り切るための好材料となった。
ECが無条件で買収を承認した。「欧州経済領域(EEA)における競争上の懸念は生じない」とわずか1か月余りで結論している。WLAN(無線LAN)機器や無線アクセスポイント、キャンパスイーサネットスイッチ、データセンタースイッチの供給に与える影響などが調査された。
他の地域についてはまだ承認待ちとなっている。特に重要なのが英国、米国の規制当局による承認だ。
英国の競争・市場庁(CMA)は6月19日に買収に関する調査を開始、現在の予定では8月14日を期限に最初の判断を下すとしている。
米国司法省(DoJ)も調査を進めていると報じられており、HPEとジュニパーの株主はすでに買収を承認している。
HPEのAntonio Neri(アントニオ・ネリ)CEOは、中国での事業規模は限定的なもので、規制当局の承認は必要ないと考えている、とも述べている。
各国の規制当局の承認が下りるかどうかは、ジュニパーにとって重要な意味がある。同社は有線・無線LANの製品・サービスで世界的に存在感があるというのがアナリストの目するところだ。
「ジュニパーの顧客基盤は世界中に広がり、さまざまな分野にわたっています。特に力を入れている市場が、一般企業であり、小売、教育、行政、医療・介護です」。米調査会社ガートナーが市場レポートで述べている。同レポートでは、ジュニパーを市場の「リーダー」企業に分類した。「ネットワーク運用へのAI・機械学習の活用、クラウドベースのセキュリティにも投資を続けています。ガートナーが予測しているのは、自然言語処理インターフェースを強化するために、生成AIの活用にも投資するのではないかということです」
HPEは今年1月にジュニパー買収を発表した。Neri氏はその際、HPEが力を入れているネットワーク領域を強化するとともに、as a serviceモデルで提供している「HPE GreenLake」にも活かすと語った。最大手シスコのいっそう手強いライバルになることを目指すとしている。
ジュニパーの財務状況は悪化の一途
今回承認が下りたのは、ジュニパーの苦戦が続くなかでのことだった。
第2四半期の決算では、売上高が前年同期比で17%減少している。減少した分はすべて機器売上高で、サービス売上高は前年比で増加した。
経費削減と過去の投資が功を奏し、四半期純利益は40%近く増加した一方で、上半期の売上高および純利益は2023年の上半期から大幅に減少している。
ジュニパーのRami Rahim(ラミ・ラヒム)CEOは、こうした結果を肯定的なものとして説明している。AIを搭載した製品に継続的な需要があると指摘した。
「6月四半期は予想を上回る需要があり、受注は前期比、前年比ともに2桁の伸びを示しています」と氏。「特にクラウドサービスの顧客からの受注が好調です。多くは過去に購入したサービスをすでに十分に活用し、AIに投資しようという顧客です。エンタープライズ顧客からの需要も予想を上回るものでした。Mistシリーズがキャンパス/ブランチネットワーク事業をけん引し、勢いが継続しています。企業データセンター向け製品の需要も旺盛でした」
Rahim氏は以前、第1四半期の決算について、Mist事業は順調に成長しているものの、マクロ経済と顧客の購買に関する逆風によって相殺されていると述べていた。
「顧客の多くがマクロ経済の逆風による影響を受け、すでに発注した機器・サービスの活用に専念されています。一方で、クラウドサービスの顧客による需要が回復し始めており、Mist事業では今四半期も2桁の受注増を記録しました」と氏。「長期的な成長見通しについては楽観してよいと考えています。なんといっても、ネットワーク運用でもデータセンターのユースケースでも、当社のAI製品が採用されているためです」
HPEによる買収が来年早期には完了する見込みのため、ジュニパーはすでに四半期決算に関する説明会の開催を取りやめている。
HPEの経営陣は特に懸念を示しておらず、以前の決算説明会では、Neri氏が投資家に対して次のように話している。「私が指摘できる範囲では、(パイプラインの)遅延や顧客による先送り、ジュニパーの買収を発表したことなどが原因で失った取引は1件もありません」
電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
X(旧Twitter):@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime
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