クラウド
文:Emma-Chervek

IBM、排出量計算ツールをリリース=AI搭載でクラウドワークロードを最適化

IBM、排出量計算ツールをリリース=AI搭載でクラウドワークロードを最適化

IBMが先月27日、「IBM Cloud Carbon Calculator」をリリースした。AI搭載ダッシュボードでIBM Cloudやさまざまなサービスのワークロードによるエネルギー使用量・排出量を計算、最適化を支援する。顧客のクラウドコンピューティングによる温室効果ガス(GHG)排出量の削減を目指す。

クラウド排出量の計算ツールはこれまでにもAmazon Web Services(AWS)、Google、Microsoftなどの大手ハイパースケール・クラウドサービスプロバイダーが提供している。米調査会社ガートナーのアナリスト、Ed Anderson(エド・アンダーソン)氏によると、IBM Cloud Carbon Calculatorは機械学習(ML)や線形回帰などの高度なアルゴリズムを使用、排出量のホットスポットを特定し、パターンや傾向を基に異常を発見できる点が優れているという。

こうしたAIによって「ワークロードの配置が持続可能性に与える影響が明らかになる可能性」もある。米SDxCentralの取材でAnderson氏が語った。IBMのデータセンターが稼働している各グリッドのエネルギー源を把握すれば、法人顧客がワークロードをどこで実行するかについて、持続可能性を重視した決定を下すことが可能になる。

IBM Cloud製品・設計担当バイスプレジデント、Briana Frank(ブリアナ・フランク)氏はSDxCentralの取材で次のように話している。「定期的に排出活動を見直し、目標に向けて歩みを進めることで、排出量の正確なホットスポットが明らかになり、確実にエネルギー消費量・排出量を抑制するための先を見越した戦略変更が可能になります」。同ツールはクラシック・サービスやクラウド・ネイティブ・インフラストラクチャー・サービス向けに提供を開始、四半期ごとに対象とするクラウドサービスを増やしていく予定だという。

IBM Cloud Carbon Calculatorはデータに基づいた知見を提供、排出削減に関する適切な意思決定を支援することで持続可能な活動を促進するツールだ。月別、四半期別、年度別のエネルギー消費量やGHG排出量を分析、「現在の(IBM Cloudによる)正確な排出量と目標に対する進捗状況を把握する」ことも可能となっている。

「年間の排出量目標に向けて取り組む際には、いつでも排出量を効果的に測定・評価できることが重要です」と氏。

また、IBM Envizi ESGのライセンスを持っていれば排出量データを統合、詳細な分析や報告書作成に利用することも可能となっている。

 

インテルとの提携=持続可能性とパフォーマンスのために

Frank氏は同ツールの立ち上げについて、Intelとの提携が大きな推進力になったと話す。「両ブランドは持続可能性とパフォーマンスを深く追求する取り組みを続けてきました。本ツールはその集大成です」

両社は少し以前にもIntelの「第4世代Xeonスケーラブル・プロセッサー」導入で合意している。Frank氏は「Intel製品で最も持続可能性に優れたデータセンター用プロセッサー」だと指摘した。IBM Cloudのユーザーが利用することで「持続可能なコンピューティングへの取り組みを加速、排出量を削減する」ことが可能だという。

この点、両社の提携は個々の企業の課題を解決し、クラウドパフォーマンスを向上させるとともに、環境責任を優先することを目的としたものになっていると語った。

 

グリーンウォッシュにご用心

排出量計算ツールは本来、クラウドの利用状況を把握し、持続可能性を高める最適化を図るためのものだ。一方で、グリーンウォッシュを起こしてしまう可能性もある。

「正当なクラウド排出量計算ツールであれば、」Anderson氏は言う。「クラウドの利用によるプラスの影響とマイナスの影響、両方を明らかにすべきです。仮にプラスの面が強調され、マイナス面がわかりにくくなっているとすれば、それはグリーンウォッシュになります」

このようなケースを防止できるのは、計算ツールのソフトウェアを開発・運用し、収集データの正確性を監視している企業に限られる。一方で、IBMはコンプライアンスや規制の遵守、その他のいかなる目的においても同ツールの出力の正確性を確認する責任はIBM Cloudのユーザー側にあると述べている。

IBM carbon calculator uses AI to optimize cloud workloads

Emma-Chervek
Emma-Chervek Reporter

SDxCentral のレポーター。
データセンターのテクノロジーとビジネス ケース、環境の持続可能性、クラウドネイティブ エコシステムを担当。
エマは愛犬コビーとデンバーに住み、世界一の散歩を一緒に楽しんでいる。
連絡先:echervek@sdxcentral.com X:@emmachervek

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