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文:Emma Chervek

IBMの2023年決算=セキュリティ事業よりもAI・コンサルティングを重視

IBMの2023年決算=セキュリティ事業よりもAI・コンサルティングを重視

米IBMが2023年第4四半期の決算を発表した。通期売上高が620億ドル、四半期売上高が174億ドルとなっている。SVP兼CFOのJim Kavanaugh(ジム・カバノー)氏は同四半期について、ソフトウェア、インフラ、コンサルティングなどのセグメントが成長した一方で、サイバーセキュリティ製品/サービスについてはもっと良い業績を出すことが可能だったという認識を述べている。

「セキュリティ部門については――たしかに、計画と遂行状況に乖離がありました」と決算説明会で投資家に語った。

ソフトウェアセグメント全体では75億ドルの四半期売上高を計上したが、その中のセキュリティ部門は前年比5%の減少となった。とはいえ、Kavanaugh氏はこれを「(コップに水が)半分も入っている」という見方で捉えている。「2024年には修正のチャンスがあります」と語った。

コンサルティングの価値で勝負

エンタープライズ顧客の優先事項がクラウドの最新化やAI、クラウドアプリケーション開発であることから、IBMも現在こうした分野に注力している。

CEOのArvind Krishna(アービンド・クリシュナ)氏によると、同社は2023年を通じてDX(デジタルトランスフォーメーション)とAIに注力、契約数を8%伸ばしたという。

これについてはIBMが提供する統合的な価値、人材やパートナーシップへの投資、遂行重視の姿勢が差別化要因になったとした。

また、最近実施したポートフォリオ再編を取り上げ、顧客の優先事項への対応を意図したものだと語った。新技術のコンサルティングサポートの提供もその1つだ。「ハイブリッドクラウドとAIプラットフォームを中核とする企業様にコンサルティングを提供すれば、真の相乗効果を生み出すことができます」

IBMは同分野で優位にあるとKrishna氏は自負している。「コンサルティング事業を大規模に展開している唯一のテック企業」であり、「他社には真似できない統合的な価値提案を提供し、顧客のデジタルトランスフォーメーションや生成AIソリューションの実装を支援します」と強調した。

一方で、「コンサルティングの力はパートナー企業との協業でさらに高まる」とも述べている。コンサルティングセグメントの売上高は40%が戦略的パートナーシップによるもので、2023年の契約数および売上高の2桁成長に寄与したという。

具体的には、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azureのコンサルティンググループの売上高がいずれも50%以上増加したとした。

セキュリティ部門は計画未達となったものの、同四半期の業績は「堅調」で、IBMの遂行重視の姿勢を示すものだったと氏は述べている。「コンサルティングセグメントの3つの事業ラインに目を向けると、常に堅調な売上を上げています」

「顧客に代わって行う早期の仕事はデータアーキテクチャ、セキュリティ、ガバナンスに関するもので、きわめて重要かつ大変な仕事です。この部分についてはコンサルティングによる専門的知見が不可欠になると考えています。ハイブリッドクラウドの時に当社が速やかにRed Hatを軸とした有意義なプラクティスを展開したように、生成AIについても同様の道筋で取り組みを進めています。当社の顧客に対する価値提案では、コンサルティングが中核的なドライバーになっているのです」

Red Hatが引き続きIBMの成長源に

傘下のRed Hatについては、四半期売上高が前年比8%増となった。年間契約数も17%増加、2024年のIBMに利益をもたらすと見込まれる。Kavanaugh氏は同セグメントの成長について、2つの主要製品が鍵になったと強調した。「Red Hat Enterprise Linux(RHEL)」と「Red Hat OpenShift」だ。

前四半期の契約数が14%増を記録したのに続き、年間契約数も17%増となったことから「加速が起きている」ことがわかる、と氏は言う。「顧客との会話からも、これらがいずれもRed Hatの成長につながると確信しています」と投資家に語った。

「(現状に)適していないオープンソース」の市場では「シェアの変動」が起きており、そのことがRed Hatのサービスへの需要を大きく押し上げているという。例えば、RHELのユーザー企業はパッチの適用やセキュリティ、悪意のある攻撃者からインフラを守ることに関して懸念を強めており、ISV(独立系ソフトウェアベンダー)各社もそうした現実を受け入れ始めているとした。

もう1つの主要な成長ドライバーであるOpenShiftは「基盤の一部を担う要素」だと強調。「顧客のほとんどは、自社の環境が実情としてハイブリッド環境になっていることを認識しています。(中略)OpenShiftはそうした環境における主要なプラットフォームであり、導入すれば(パブリッククラウド/プライベートクラウドなど複数の環境間で)アプリケーションを移動、実行できる柔軟性が得られます」

この点、IBMの経営陣は「Red Hatが成長し、ソフトウェアセグメント全体の売上高に2~2.5ポイントのプラスをもたらす」という確信を持っている、と氏は語った。

IBM favored AI and consulting over its security business in 2023

Emma Chervek
Emma Chervek Reporter

SDxCentral のレポーター。
データセンターのテクノロジーとビジネス ケース、環境の持続可能性、クラウドネイティブ エコシステムを担当。
エマは愛犬コビーとデンバーに住み、世界一の散歩を一緒に楽しんでいる。
連絡先:echervek@sdxcentral.com
X:@emmachervek

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