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文:Nancy Liu

IDCがSD-WANを評価 =Cisco、Fortinet、Aruba、Palo Alto Networks、VMwareが「リーダー」である理由

IDCがSD-WANを評価 =Cisco、Fortinet、Aruba、Palo Alto Networks、VMwareが「リーダー」である理由

米調査会社IDCはSD-WAN市場の主要ベンダー12社を評価し、Cisco、Fortinet、HPE Aruba、Palo Alto Networks、VMwareを「リーダー」に挙げている。これらのトップベンダーはすべて、SD-WANをセキュリティ機能や AI(人工知能)の統合を積極的に進めている、とIDCのエンタープライズネットワーク担当リサーチマネージャーであるBrandon Butler 氏は指摘する。

IDCのベンダー評価ツール「 MarketScape」 の「Worldwide SD-WAN Infrastructure 2023 Vendor Assessment」(世界のSD-WANインフラ部門評価2023)によると、SD-WANインフラ市場は2022年に25%急増しており、2027年まで年平均10.1%で成長、同年には75億ドルに達すると予測されている。

「SD-WAN の成長は様々な要因によってもたらされています、その中にはこの技術開発の最初のきっかけとなった要因、つまり、WAN のパフォーマンスを最適化し、コストを削減しながら管理できるという点が含まれています」と Butler 氏は SDxCentralのメール取材で語った。

IDCの「2022 Global SD-WAN Survey」(2022年SD-WAN国際調査)によると、回答者の3分の1近く(31.8%)が、SD-WAN導入によりWANのコストを20%以上削減できると期待していることが明らかになった。

Butler 氏によると、こうした導入急増のその他の要因として、WANのSD-WAN への変換を促進するクラウド導入の加速、SD-WAN を必要とする SASE(Secure Access Service Edge)アーキテクチャ、高度に分散した WAN集中管理を簡単に行えるようになったことなどが挙げられるという。

IDCの評価によるSD-WAN 市場のトップベンダー

IDC は 12 社の SD-WAN ベンダーを「戦略(Strategies)」 と「能力(Capabilities)」に関する 20 の採点基準カテゴリにわたって評価した。

同社は、Cisco、Fortinet、HPE Aruba、Palo Alto Networks、VMwareを「リーダー」として、Aryaka、Barracuda Networks、H3C、Huawei、Juniper Networks、Nokia、Versa Networksを「主要プレイヤー 」または「競争者」として挙げている。また、調査対象基準に満たなかったものの、Ericsson傘下のCradlepoint、Extreme Networks、Netskopeを「注目すべきベンダー」に挙げている。

Butler氏は、次のようにトップベンダー各社の強みと課題を明らかにした。

・Ciscoは、エンタープライズルーティング とエンタープライズネットワーキング における強固な実績をベースに、圧倒的な SD-WAN 市場シェアを獲得している。
Ciscoは2つのSD-WANソリューションを提供している。 Catalyst と Meraki SD-WAN である。この2つのソリューションは、Cisco のセキュリティ機能と完全に統合した、顧客の幅広いユースケースと要件を満たす包括的な SD-WAN ソリューションを提供するというものだ。しかし、2つのソリューションを提供することで、どちらのプラットフォームがどのユースケースに最適かについて、市場や顧客の混乱を招いている。

・Fortinetは、物理/仮想アプライアンス「FortiGate」と、SD-Branch(ソフトウェア定義ブランチ) アーキテクチャ向けLAN/WLAN製品を通じて、SD-WAN とセキュリティ統合機能を提供している。しかし、Fortinetは主としてセキュリティベンダーであり、顧客によってはネットワークに特化した実績を持つSD-WANベンダーを優先するかもしれない。また、FortinetのSD-WANをサードパーティのセキュリティツールと統合するには制限があるかもしれない。

・HPE Aruba Networkingは、主に2つのSD-WANソリューションを提供している。「EdgeConnect SD-WAN」(旧Silver Peak)と、Arubaのエンタープライズネットワーキング製品のラインナップ全体を統合する「EdgeConnect SD-Branch」である。最近、同社はSASEのためにSSE (Security Service Edge)ベンダーであるAxis Securityを買収している。

・Palo Alto Networksは、「Prisma SD-WAN」とクラウドベースのセキュリティスイート「Prisma Acces s」を組み合わせて、統一されたSASEを提供している。しかし、セキュリティ会社としての主要なアイデンティティは、ルーティングの実績を持つSD-WANベンダーを求める企業からは敬遠されるかもしれない。また、同社はWLANやLANのようなキャンパスネットワーキング技術に関する優れた製品やサービスを提供していない。

・VMware SD-WANは、ネットワーキングの実績が豊富な傘下のVeloClou dが持つ技術をベースとしている。同社はクラウドベースのセキュリティツールのポートフォリオを拡大、SD-WANゲートウェイから提供しようとしている。しかし、VMwareは独自のWLAN/LANソリューションを提供しておらず、今後のBroadcomによる買収の可能性が顧客の間に懸念をもたらしている。

SD-WAN市場の主要なトレンド

IDCによると、主要なベンダーはSD-WANのトレンドに乗っており、その中にはSD-WANとセキュリティの統合、SASE、SD-Branch(SD-WAN + LAN/WLAN)、および高度な分析と自動化のためのAI/機械学習(ML)の統合が含まれている。

Butler氏は、FortinetとPalo Alto NetworksがSD-WANとセキュリティを高度に統合していると指摘した。一方、Cisco Meraki、HPE Aruba Networking、およびJuniper Networksは、強固なLAN/WLANソリューションを擁し、魅力的なSD-Branchアーキテクチャのアプローチを取っている。そして、各社はいずれも様々な方法でAI/MLを使用し始めた。氏はCiscoの「Predictive Path Recommendations」(PPR)機能を例として挙げている。これは「ThousandEyes WAN Insights 」のデータを使用し、過去のネットワーク性能とアプリケーションのトラフィックフローパターンを監視して、ネットワークパスの品質を予測し、トラフィックを最適化するためのパスの推奨を行うものである。

「ネットワークの性能やユーザー体験に関する洞察を持ち、そのデータを高度なAIを活用した自動化システムにリンクすることは、世界各地でSD-WANを導入している企業にとって強力なツールとなる」とButler氏は述べた。

IDC makes SD-WAN picks: Why Cisco, Fortinet, Aruba, Palo Alto Networks and VMware lead the pack

Nancy Liu
Nancy Liu Editor

SDxCentralの編集者。
サイバーセキュリティ、量子コンピューティング、ネットワーキング、およびクラウドネイティブ技術を担当している。
バイリンガルのコミュニケーション専門家兼ジャーナリストで、光情報科学技術の工学学士号と応用コミュニケーションの理学修士号を取得している。
10年近くにわたり、紙媒体やオンライン媒体での取材、調査、編成、編集に携わる。
連絡先:nliu@sdxcentral.com

Nancy Liu
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サイバーセキュリティ、量子コンピューティング、ネットワーキング、およびクラウドネイティブ技術を担当している。
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