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文:Tobias Mann

インテルの欧州進出、EUの資金提供次第

インテルの欧州進出、EUの資金提供次第

米半導体大手インテルのCEO、Pat Gelsinger(パット・ゲルシンガー)氏が掲げる企業刷新のビジョンは、3月半ばにやや拡大してさらに遠大なものになった。ドイツに186億ドル(約2兆2,840億円)規模の「メガサイト」(巨大製造工場)を建設、アイルランドに132億ドル(約1兆6,210億円)規模の工場拡張を行うと発表している。

インテルは今後数年間で欧州に約361億ドル(約4兆4,330億円)を投資する計画だ。

「世界のデジタル化が進む中で、半導体チップはかつてないほど重要なものになっています」。氏は3月半ばの記者会見で述べている。「半導体の需要が拡大している一方で、世界的にサプライチェーンが混乱したことで供給は減少しています」

こうした課題があることを利用して、Gelsinger氏は以前から有力なファウンドリ企業としてのインテルの地位を固めようと動いている。今回の計画についてはEU諸国からの経済面・規制面での支援を待っているところだが、支援が実現すれば今年発表したオハイオ州での巨大工場建設と同様に現在の規模からさらに急速に膨れ上がる可能性がある。

「今後10年間でEU圏に最大876億ドル(約10兆7,570億円)を投資することを想定しています。対象は研究開発から設計、先進的な半導体パッケージング、製造、ファウンドリサービスに至るまで、半導体のバリューチェーン全体にわたります」と氏は述べている。

とはいえ、こうした投資は政府の補助金に大きく依存したものになるという。同じ週の記者会見でGelsinger氏が明言した。

オハイオ州のメガサイト計画とは異なり(200億ドル(約2兆4,560億円)を投じてコロンバス郊外に最先端の製造工場を2つ建設する計画だ)、欧州での製造工場拡大は確定事項ではない。Gelsinger氏は「プロジェクトの競争力を高める」ために必要な許可や財政支援をまだ得られていないと認めている。

Bloomberg(ブルームバーグ)の報道によると、ドイツ政府は同製造工場プロジェクトの推定費用186億ドル(約2兆2,840億円)の約30%に相当する約55億ドル(約6,750億円)の補助金を投じると約束しているが、この資金は事業を開始する前に欧州委員会の承認を得る必要があるという。

「目標としては、2023年の前半に着工し、2027年にリーダーシップ製品の生産を始めることを目指しています」とGelsinger氏は言う。

 

インテル、欧州での資金調達を検討

Gelsinger氏にとって幸いなことに、インテルは政府からの補助金が給付されるまで長く待つ必要はないかもしれない。EUは2月に米CHIPS法のEU版とも言える欧州半導体法を発表した。域内の半導体製造・パッケージングプロジェクトをさせる目的におよそ472億ドル(約5兆7,950億円)の資金を割り当てる。

「私たちの目標は2030年までに世界のマイクロチップ生産の20%を欧州で行うことです。これは現在の2倍の数字であり、半導体市場自体も今後10年間で2倍に成長すると予想されています」。欧州委員長のウルズラ・フォン・デア・ライエン氏はインテルの記者会見で述べている。

氏の目標は単に半導体製造企業を誘致することではない。今回の資金提供は難局を乗り越え欧州をハイテク技術革新の中心地として人々を引き付ける場所にする機会であると捉えている。

「これは挑戦であり、これに取り組むということは単にEUのいくつかの国に大きな工場を建設するというだけの問題ではないのです」。Von der Leyen氏は言う。「基礎研究から製品応用に至るまで、全ての面で欧州が持つ最高の力を結集する必要があります。製造・パッケージング設備の試作や試験、先進的な開発を行っている大陸中の研究機関のネットワークが必要です」

また、Gelsinger氏によると、今回の資金援助によって半導体製造施設の分布のバランスを調整する機会も生まれるという。

「現在、半導体チップの80%はアジアで生産されています」。氏はTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company:台湾積体電路製造)とサムスン電子を指して述べた。「欧州全域を対象とした今回の画期的な投資は、よりバランスのとれた回復力のあるサプライチェーンを求める世界的なニーズを解決するものです」

 

インテルの欧州進出

インテルの欧州展開はドイツのマクデブルクに推定費用186億ドル(約2兆2,840億円)で最先端の製造工場を2つ建設することから始まる予定だ。

「この国には製造業のイノベーターとしての誇り高い伝統があります。先進的なチップ製造の新しい中心地となるのに申し分ない場所です」。Gelsinger氏は言う。「新工場からインテルの最先端のトランジスタ技術を使ったチップを供給し、ハイテク分野の研究におけるドイツのリーダーシップを強化する計画です」

同プロジェクトによって建設期間中は7,000人分の建設関連の雇用が創出され、2027年の生産開始時にはインテルで3,000人分のハイテク関連の正規雇用が創出されると見込まれている。

両工場は「オングストローム時代」のプロセス技術によってインテルの製品スタックと設立間もないIFS(インテルファウンドリサービス)事業部に貢献する。

インテルは新工場建設に加え、アイルランドのキルデアにある既存の工場を132億ドル(約1兆6,210億円)かけて改修する旨も発表した。長らく開発が遅れていた7 nmプロセス「Intel 4」を利用したチップを生産する。

インテルは以前、半導体不足の影響を受けた欧州の自動車メーカーを支援するために生産能力を割いていた。

同社はイタリア、フランス、ポーランドでもプレゼンスを拡大する計画だ。すでに約50億ドル(約6,140億円)をかけてイタリアにバックエンド工場を建設する交渉を進めている。これによって同地域で約1,500人のハイテク関連雇用が創出されるとしている。

フランスではサクレー高原の近くに主力研究開発施設を建設する計画だ。2024年の稼働時には約450人を雇用し、いずれは1,000人に増やすという。

また、欧州に主力となる製造工場設計センターを設立し、欧州および世界の業界パートナーに設計サービスや付随サービスを提供する計画だ。

ポーランドでは研究施設を50%拡張し、ディープニューラルネットワーク、音声、画像処理、データセンター、クラウドコンピューティングといった技術の開発を支援する予定だ。

https://www.sdxcentral.com/articles/news/intels-european-expansion-depends-on-eu-funding/2022/03/

Tobias Mann
Tobias Mann Editor

Tobias Mann is an editor at SDxCentral covering the SD-WAN, SASE, and semiconductor industries. He can be reached at tmann@sdxcentral.com

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Tobias Mann is an editor at SDxCentral covering the SD-WAN, SASE, and semiconductor industries. He can be reached at tmann@sdxcentral.com

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