5G
文:Dan Meyer

企業のIT部門とOT部門は、プライベート5Gについて語る時期がきたのではないか?

企業のIT部門とOT部門は、プライベート5Gについて語る時期がきたのではないか?

プライベート5G市場は、採用というよりもチャンスに後押しされて順調に成長を続けている。しかし初期導入は実用面で具体的な利益や効果をもたらしており、この流れに乗る可能性を検討している企業内チーム間でより深い議論が行われるようになるはずだ。

英調査会社オムディア(Omdia)のプライベートネットワーク担当プリンシパルアナリスト、Pablo Tomasi(パブロ・トマシ)氏は、「市場は成長しており、今後も成長し続けるでしょうが、一部の人々が期待するような急激な成長(ホッケースティック型の急上昇)は見られないでしょう」と述べた。

トマシ氏は、成長が鈍化している原因の一つとして、プライベートネットワークをサポートするために各国が異なる周波数帯の割り当てを行っていることに起因するものだと説明した。特にドイツや米国などでは、プライベートネットワークを支援するために特定の準ライセンス周波数帯を割り当てているため、その成長がより顕著に表れているのだという。

もう一つの課題は市場の多様性だ。氏によれば、すべての潜在的な市場分野が同じ速度で成熟するわけではないという。

「多くの通信業界の人々は、すべての業界が5Gのスピードに合わせて動くと期待していました」と氏。「もし5Gが数年で開発され、その機能すべてが実現すれば、その速度で市場に展開されるだろうと考えていました。しかし実際には、プライベート5Gは各業界の成長速度に合わせる必要があります」

トマシ氏は、その例として製造業などの産業企業分野を挙げ、「インフラの変更には少なくとも10年は必要でしょう」と語った。

「プライベート5Gだからといって、1か月ですべてをかえるつもりはないでしょう」と氏。「ソリューションのテストを開始し、それがどのように機能し、どのようにあらゆるものと統合されるかを把握するでしょう。そして、仮にインフラ更新時期が10年であるなら、そのタイミングでプライベート5Gを採用することになるでしょう」

また、特定の業界における期待の設定にも課題がある。5Gテクノロジーは、Wi-Fiや従来の4G LTEテクノロジーと比較して、全体的なデータ速度の高速化と低遅延を実現できるが、その性能上の優位性を必要とするユースケースを見つけることには依然として課題がある。

「プライベート4G LTEがうまく機能しているなら、すぐにプライベート5Gに変更する必要はありません」と氏。「これがうまく機能しているのだから、今後もうまくいくようにするのでしょう」

また氏は、現在のプライベートネットワークのエコシステムは多様性に富んでいるため、理解するのが難しいことを認めている。これは特に、システム全体の導入と管理を任されている企業のITチームにとって当てはまる。

「正直なところ、簡単な仕事だとは思いません。特に、その技術を知らなかったり、それに慣れていない場合、誰かが「これが我々の進むべき道だ」と言ってきたらとても複雑なことになるでしょう」と氏は述べた。

プライベート5Gには明確なユースケースが必要

プライベートネットワーク分野の主要企業とされるノキアは最近、調査会社GlobalData社が実施した企業調査の結果を発表した。それによると、導入されたプライベートワイヤレスネットワークの拡大と利用が好調であることが示されている。

この結果には、プライベートネットワークを導入した組織の45%が当初の予想以上に多くのユースケースをサポートしていることが含まれていた。また調査対象となったすべての初期導入企業がほかの場所でもそのネットワークの範囲を拡大しており、78%が最初の6ヶ月間で投資収益率(ROI)がプラスになったと報告している。

恐らくこの最後の点が最も重要なのだろう。企業のITチームは、財務的成功への道筋を示すようより強いプレッシャーにさらされているからだ。
「私たちが進めているすべての取り組み、特にデジタルトランスフォーメーションについては、堅実なビジネスケースが必要です。これは、戦略的な取り組みと統合する必要があります」とHaier Europeのグループ最高デジタル技術責任者であるSimone Pezzoli(シモーネ・ペッツォーリ)氏は、同社のデジタルトランスフォーメーションの取り組みについて最近のインタビューでSDxCentralに語った。「そのため、これらは5年間計画としっかり一致しており、5年間計画の内容に沿ったものでなければなりません」

トマシ氏は、導入を決定する前に企業が自社のプライベートネットワークのニーズを理解することが重要だと付け加えた。これには、現在と将来の潜在的なユースケースを考慮し、それを基に技術の導入を決定することが含まれる。

もう一つの重要な課題は、ITチームがOTチームとしっかり連携することである。

「最低でも、ユースケースを検討する際にはITチームとOTチームが話し合う必要があります。というのも、利益の多くはOTチームにかかわるものだからです。IT予算で導入を進める場合でも、OTの同意を得る必要があります」と 同氏。「良好な関係を築けなければ、OTチームが望まないものを押し付けることになりうまくいかないでしょう」

プライベート5G はエッジを強化できるか

ノキアの調査では、プライベートネットワークを早期に導入した企業の39%が、その後オンプレミスのエッジ技術を導入しており、52%がそのような導入を計画していることも分かった。 これは、ユースケースを見つけるのに苦労している、新興のエッジネットワーキング市場にとっては朗報かもしれない。

トマシ氏はプライベート5Gの導入とエッジネットワークシステムへの幅広い取り組みとの間につながりが強まっていると指摘した。同氏は、エッジベースの分析プラットフォームを通じてプライベート5Gネットワークからより多くのインサイトを引き出すという点において、英Vodafoneのような通信事業者、ZTEのようなベンダー、NTTデータのようなシステムインテグレーターによる取り組みを挙げた。

「一度デバイスを安定して接続できるようになると、そのデータを活用し始める必要があります」と氏。「これは自然な流れです。非常に興味深い分野であり、発展途上の分野です」

しかし、エッジの継続的な成長を妨げる根本的かつ基本的な課題が依然として残っていると氏は付け加えた。

「エッジについて常に感じている大きな課題の一つは、その概念が非常に曖昧で定義が難しいため、具体的な市場を創造するのが難しいということです」と氏。「エッジとは何か、エッジがどこにあるかについて5人に話を聞けば、5つの異なる解釈が出てくるため、市場を作り出すために十分な人々の関心を集めるのが難しくなります」
Is it time for enterprise IT and OT to talk about private 5G?

Dan Meyer
Dan Meyer Executive Editor

電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
Twitter:@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime

Dan Meyer
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