テクノロジーの世界では、変化を避けることはできない 。しかし、変化というものはイノベーションや競争優位性を促進する一方で、疲労をもたらすこともある。調査会社ガートナーによれば、そうした疲労が2023年、CIOたちに大きな影響を与えたという。

同社のレポート によると、CIOたちの変化に対する疲れがIT支出に影響を及ぼす要因になったという。2023年のIT支出全体の成長率は3.3％で、2022年からわずか0.3％の増加にとどまった。とはいえ、同社の最新のIT支出予測によれば、2024年の状況は上向きだ。2024年の全世界のIT支出は5兆ドルに達し、2023年から6.8％増加すると予測されている。

調査結果の中でも衝撃的だったのは生成AIについてだ。同社の著名なVP兼アナリスト、John-David Lovelock（ジョン・デヴィッド・ラブロック）氏によると、2023年に大きな話題となり、利益を上げた生成AIは、IT支出の増加に大きな影響を与えないという。

「生成AIはすべてを変える一方で、IT支出に大きな影響を与えることはないでしょう」と氏。その点はIoTやブロックチェーンなど、他の大きな技術トレンドでも同様のものがあるとした。また、2024年は組織が生成AIの使用方法の計画に投資するだろうと付け加えた。「とはいえ、IT支出をけん引するのは収益性や労力など、より慣習的な要素によって推進される一方で、変化疲れの波が抑制要因になるでしょう」

ITサービスが先導するが、疲労は続く

同社は、ITサービスは2024年も成長を続け通信サービスを始めて上回り、IT支出の最大のセグメントになると予測している。ITサービス（コンサルティング、アプリケーションの実装・管理サービス、インフラの構築・管理サービス、サービスとしてのインフラストラクチャ（IaaS）、ハードウェアの保守サポートなど）への支出は、企業が組織効率と最適化プロジェクトに投資するため、2024年は8.7％成長し、1兆5,000億ドルに達すると予想している。

「通信サービスは10年以上前に成長が頭打ちになっています。（中略）ソフトウェアやサービスに追い越されるのは避けられなかった」と氏は言う。通信サービスには、固定データ通信、固定電話、モバイルネットワークデバイス、ユニファイドコミュニケーションが含まれる。

「企業はテクノロジーのさらなる用途を模索し続けています。ITはバックオフィスからフロントオフィスへと広がり、今では収益を生み出しています。テクノロジーを自社のどこで、どのように活用できるかという取り組みが一段落するまでは、企業のIT支出が頭打ちになることはないでしょう」と氏は言う。

2024年は2023年よりも期待できそうだが、同社は、変化への疲れがIT支出の妨げになる状況が続くと予測している。また、この変化への疲れが変化への抵抗につながる可能性もあり、世のCIOが新規契約や長期的な取り組み、新たな技術パートナーとの提携に消極的になる可能性があるのだという。そして、承諾する際には、よりハイレベルなリスク軽減と確実な成果を求めるようになるだろう。

世界全体のIT支出予測（単位：百万米ドル）

データセンターAIと今後のAIについて

ガートナーのウェビナー『IT支出予測2023年4Q：2024年以降に予想されること』で、氏は将来のIT支出におけるAIの役割を詳しく説明した。データセンターへの支出、特にAIサーバーへの支出について次のように述べた。「AIサーバーへの支出が占める割合は、2021年にはほとんどなかったものが、2027年には全体的な支出が39.7%になります。要因として大きいのは、何よりもサーバーの価格です。ユニット数は比較的少ないですが、AIサーバーは低価格のサーバー、特にハイパースケールデータセンターで使用されているサーバーと比較して非常に高価なのです」

AI支出全体について、Lovelock氏とガートナーは、2023年から2027年の間に3兆ドルに達すると予測している。「これは、企業がAIに投じる現金の総額です。巨額の資金が動くことで、ソフトウェアやサービスの提供方法が変わってきます。AIは参入しようとする市場ではなく、避けられない市場なのです。なぜなら、あらゆるテクノロジーがAIのチャネルになるからです」

IT spending to reach $5 trillion in 2024, despite CIO fatigue