米キーサイトがVIAVIのスパイレント買収に「待った」=15億ドルを提示
![米キーサイトがVIAVIのスパイレント買収に「待った」=15億ドルを提示](https://www.newsme.jp/wp-content/uploads/2024/04/Keysight-trumps-Viavis-Spirent-bid.jpg)
米キーサイト・テクノロジーは、競合の米VIAVIソリューションズによる英スパイレント・コミュニケーションズの買収に対し、評価額を2億ドル引き上げて待ったをかけた。大金を投じた駆け引きが繰り広げられているのは、ネットワーク機器テスト自動化市場だ。
カリフォルニア州を拠点とするキーサイトは、ロンドンに本社を置くスパイレントに対し、約15億ドルでの買収を提案している。最近の(1か月も経っていない)スパイレントの市場株価に85%の買収プレミアムを上乗せした金額で、3月初めにVIAVIが提示した額を15%(総額約2億ドル)上回る。
キーサイトの提案はスパイレントの取締役会から支持を得た。同取締役会は以前、VIAVIの提案についても同じように支持を表明していた。
スパイレント、VIAVIの買収提案支持を撤回
「スパイレントの取締役は、VIAVIから受けた提案と比較して、本買収提案がスパイレントの株主にとって有利な内容であると考えます」とスパイレントとキーサイトの提出書類にはある。「したがって、スパイレントの取締役会は全会一致でVIAVIによる提案への賛成推奨を撤回しました。また、VIAVIの買収提案に関する臨時株主総会を中止する予定です」
キーサイトは買収提案書の中で、スパイレントが高性能テスト、保証、自動化に関するソリューションプラットフォームを提供していること、統合後には航空宇宙、防衛、自動車、通信の分野で強力な存在感を発揮できることを強調している。スパイレント側も、セルラーネットワーク、SD-WAN、クラウド、自動運転向け測位システムのためのテスト・保証・自動化システムを注力分野としている。
「キーサイトは、スパイレント・グループの製品によって最大15億ドルのSAM(Serviceable Available Market)を新たに獲得できると考えています」と提案書にはある。
アリゾナ州に拠点を置くVIAVIは3月5日、スパイレントに買収を提案した。スパイレントが直近の決算を発表した日のことで、同社はこの日、前年比22%近くの売上減を報告している。市場が厳しさを増しているためだとして、特に通信分野について言及していた。
VIAVIによる提案は当時、スパイレントの経営陣にとって十分なものだった。「スパイレントの株主にとって魅力的な提案です。潜在的な価値創造が加速するとともに、リスク軽減にもなり、実勢株価を大幅に上回るプレミアムが提示されていることから、即時かつ確実な現金化による投資の回収も可能になります」と述べている。
VIAVIはキーサイトが自社を上回る評価額を提示した件について、自社の提案の方が事業面で優れていることに変わりはなく、エンドユーザーの利益にもなるとしている。
「VIAVIとしては、当社による買収には確かな価値があり、キーサイトと比較しても、スパイレントの事業と重複する部分が少ないということを申し上げたいと思います。キーサイトとスパイレントの統合案は、多くの製品分野でキーサイトが築いている主導的地位をさらに強固なものにし、顧客の選択肢を狭めるものであると考えます」
スパイレントの価値
この競り合いからは、通信業界でオープンRANの展開に大きな注目が集まる中、顧客の業種を問わず、テストや測定といった領域が全体として重要性を増していることがうかがえる。
キーサイトとVIAVIは、通信業界のさまざまなコンソーシアムに、主要なテスト自動化プロバイダーとして一緒に参加することも多い。
最近設立されたACCoRD(Acceleration of Compatibility and Commercialization for Open RAN Deployments)プロジェクトもその1つだ。米国商務省電気通信情報局(National Telecommunications and Information Administration、NTIA)による助成金「Public Wireless Supply Chain Innovation Fund」を獲得、AT&Tやベライゾンといった米国大手通信企業が主導するプロジェクトで、ネットワークパフォーマンス、相互運用性、セキュリティに関するテストプロトコルの確立、新しいオープンRANテスト手法の研究に重点を置くとしている。
「異なる製品同士の統合性を評価することは、業界の多くの人や政府が思い描いている、多様なベンダーのエコシステムを促進していく上で、きわめて重要な要素です」。AT&TのRAN技術担当バイスプレジデント、Robert Soni(ロバート・ソニ)氏が同プロジェクトに関するブログ記事に書いている。
「通信事業者としては、異なるベンダーの製品を自社のネットワークに追加する前に、そうした製品が大規模に連携して動作するという確信が持てなくてはなりません。(中略)業界全体のさまざまな製品の統合性を評価する最善の方法は、大規模に取り組むことです――AT&Tとベライゾンが協力して、Jioやドコモなどの大手ネットワーク事業者だけでなく、さまざまなベンダーが参加する大きなコンソーシアムを結成したのはそのためです」
スパイレントのソリューションは、業界団体のTIP(Telecom Infra Project)が提供するプライベート5Gのブループリント、MEF(Metro Ethernet Forum)のSD-WAN認証プロセスでも使用されている。
![Dan Meyer](https://www.newsme.jp/wp-content/uploads/2022/06/Meyer-2.jpg)
電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
X(旧Twitter):@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime
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