ノキアがデータセンター向け事業で描く夢=マイクロソフトが後押し
マイクロソフトがノキアとの契約を5年間延長した。クラウドインフラを支えるデータセンター機器の供給契約だ。ノキアでは目下、従来の通信業界向けではない事業が好調となっている。
今回延長となったのは、もともと2022年早期に締結していた契約で、マイクロソフトが開発した「SONiC」を使用したデータセンタースイッチなどが供給されている。今後も「Nokia 7250 IXR」シリーズの製品が提供され、マイクロソフトのデータセンター内でマルチテラビット級の接続を担う予定だ。
ノキアは2020年中頃に同ルーターアーキテクチャをリリースした。形態としてはトップオブラックスイッチ、スパインスイッチ、スーパースパインスイッチ、モジュラーシャーシスパインスイッチがある。ポート速度は最大400Gとなっており、800Gにも対応する予定だという。
マイクロソフトとの契約が延長されたことで、2月には同シリーズの最新機器の導入が始まる。30か国以上に供給され、新しいデータセンターの構築や既存施設の400Gへの移行で使用されることになる。
ノキアがデータセンターに注力
ノキアはこのところ、従来の通信業界向け事業で苦戦が続き、他分野での取り組みを進めている。今回の契約延長で、いっそうデータセンター領域に進出することになる。
ノキアの通信関連のTAM(獲得可能な最大市場規模)は850億ドルを超える。直近の決算説明会でPekka Lundmark(ペッカ・ルンドマルク)CEOが説明した。データセンター領域のTAMと比較すると4倍以上の大きさだが、ノキアにとって大きな成長機会があるのは後者の方だという。
「来年は通信事業者のTAMがいくらか回復するとされていますが、当社としては現実的にならなくてはなりません」と氏。「今後、通信事業者のTAMが大きく成長することはないでしょう。通信向けの売上高を伸ばすにはシェアを奪うしかありません。原価企画を行う分野であって、成長市場ではないのです。(中略)当社が向こう数年のあいだ最も大きな成長目標を掲げるのは、データセンター向け事業です。他の分野でも成長を目指しますが、最大のターゲットはデータセンターです」
ノキアが新しいプラットフォーム製品を発表してデータセンター分野に進出したのは、そうした目標があってのことだ。こうした方針を取ることで、さまざまな市場にチャンスが開かれるのだという。
「Tモバイルのような通信事業者でさえ、投資家向けの説明会では、本業に加えてGPU as a Serviceの提供を検討する好機ではないかと話しています」と氏。「また、もちろんハイパースケーラー関連でも大きな機会がありますし、規模で及ばないデータセンターについても同様です」
TモバイルUSの話というのは、Mike Sievert(マイク・シーベルト)CEOが投資家に対して語った内容で、基地局にエッジデータセンターやクラウド接続ポイントの機能を持たせることを検討するかもしれないというものだ。AIワークロードの処理が向上するとしている。
「この種のAIワークロードについては、デバイス上で処理を行うことがますます要求されるようになるでしょう。そうした例も出てきていますが、限界があることは明らかです。デバイスの近くにあるクラウドで処理するという選択肢もあり、こちらについては今後のビジネスチャンスになると見ています」
ノキアは光通信機器の米インフィネラ(Infinera)の買収も進めている。23億ドルを投じたこの買収が完了すれば、「ハイパースケーラー関連の大きな機会」を追求する取り組みも勢いを増す可能性がある。
Lundmark氏は「(買収によって)北米での事業規模と、ウェブスケール事業者に接する機会が大幅に拡大する」と述べている。「今後の成長に向けて、特に、AIがもたらしたデータセンター関連の機会を追求するうえで、非常に有利な立ち位置に」立つことになると語った。
データセンター市場でシスコやアリスタに対抗できるのか
ノキアは最近、イベント駆動型の自動化プラットフォーム「Nokia EDA」も発表している。Kubernetesのエコシステム上に構築して抽象化レイヤーを提供し、異なる提供元の機器を使用したデータセンターネットワークの管理を支援するものだ。管理支援に生成AIを使用し、ヒューマンエラーを減らしている。設定ミスの原因として多いのがヒューマンエラーでもある。
データセンター担当バイスプレジデントのMike Bushong(マイク・ブション)氏が取材を受けて説明している。同プラットフォームはインテントベースになっていて、ノキア機器の設定を変換したり、「たとえばシスコやアリスタ、SONiCでも、どんな機器(の設定)にも」変換したりできるという。「つまり、マルチベンダーに対応したインテントベースのプラットフォームということです」
データセンター領域でのノキアの取り組みは実を結びつつあるようだ。
米調査会社デローログループが最近発表したレポートで、ノキアは「ハイエンドルーター」の市場シェアでファーウェイとシスコに次ぐ第3位とされている。また、同分野で第3四半期の売上高が前年より増加したのはノキアだけだと書かれている。
「ルーターのベンダーにとっては市場の縮小が続いています。もう5四半期連続となりました」。バイスプレジデントのJimmy Yu(ジミー・ユウ)氏が述べている。「市場が安定し、顧客の在庫水準が正常化していけば、ベンダーに入る受注も増え、売上高も上がると予想されます。まずノキアが調整局面を脱したとみられ、ハイエンドルーターの売上高を10%近く伸ばしました」
ノキアが大きな展望を描く一方で、同社の今後については疑問の声も高まっている。ノキアは通信機器事業からの撤退を検討している、取締役会がLundmark氏の後任を探しているといった報道がなされていた。
Bushong氏としては、データセンターネットワーキングに関する取り組みへの認知が高まるよう、引き続き注力するという。
「当社には優れた蓄積がありますが、率直に言えば、それを外に見せること、当社がどんな考え方を支持していて、どのようにそれを実現してきたのかを人々に理解してもらうこと、そういったことが課題になっています。GTM戦略の課題です」と氏。ノキアが昔からエンジニアリングに注力してきたことと、最近では合併や買収によって名称変更が相次いだことで、この部分がわかりにくくなっているのだという。「当社がしなくてはならないのは、そういったことを乗り越えて、次に何をすべきかというテーマに実際に取り組んでいる人を相手に、真剣に話をすることです。そうした対話をすれば、相手も本音で話してくれると思います。彼らは他とは違うもの、ありていに言えば、既存の企業が提供していないものを求めているからです」
電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
X(旧Twitter):@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime
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