NTTリミテッドとクアルコム、エッジからプライベート5G採用の加速を目指す
プライベート5Gには多くのメリットがある。ネットワーク速度の向上、より広い帯域幅、より信頼性の高い接続とセキュリティ、低遅延、より広いカバーエリアと多数のデバイスを利用できることなどだ。
そうしたメリットがありながらも、デバイスが足りないことが同技術の普及を妨げている、と一部の専門家は言う。要求の厳しい5Gやエッジのユースケースを効果的に支えられる高品質なデバイスが不足しているというのだ。
このため、プライベート5Gの普及促進を目的とし、グローバルでITインフラ事業を展開するNTTリミテッドは米クアルコムと新たなパートナーシップを締結した。
複数年にわたる取り組みとして、両社は5G対応デバイスの開発に優先的に取り組み、エッジにおけるAI(人工知能)処理能力の向上を目指す。さらに、NTTリミテッドは、EaaS(Edge as a Serviceの提供を通じてサービスの一環として、新しくサブスクリプション型のDaaS(Device as a Service)の提供を発表した。
NTTリミテッドの新規事業およびイノベーショングループ担当エグゼクティブ・バイスプレジデントを務めるShahid Ahmed氏の言葉を借りれば、次のようになる。
デバイスはプライベートネットワークの「最小公倍数」である。
「デバイスがなければユースケースもなく、ユースケースがなければビジネスケースもなく、ビジネスケースがなければプライベートネットワークの導入もないでしょう」と氏は述べる。
次世代の5Gエッジデバイスの構築
IDCによると、世界のプライベートLTE/5Gワイヤレスインフラ市場の売上高は2026年までに83億ドルに達し、2021年の17億ドルから大幅に増加することが予想される。
とはいえ、Ahmed氏が指摘したように、そこにたどり着くことが課題となっている。
顧客からの要望に対応すべく実現した今回の提携は、クアルコムが持つ技術/パートナー企業の「巨大なエコシステム」を基盤として、プライベートネットワークやプライベート5Gをネイティブにサポートするデバイスを構築することを目指したものだと氏は述べている。
NTTリミテッドとクアルコムは、クアルコムの5Gチップセットと内蔵AIモデルを搭載した5G対応デバイスを提供する予定である。これにより、エッジでのAIが強化され、プッシュ・ツー・トーク(PTT)デバイス、AR(拡張現実)ヘッドセット、コンピュータービジョン用のカメラやセンサーなど、インダストリー4.0のユースケースをサポートすることができるようになる。
特に、リアルタイム、或いは準リアルタイムの機能やローカルデータ処理が重要な産業環境におけるエッジAIのユースケースにおいて、デバイスの可用性、多様性、相互運用性が最大の問題となってきた、と同氏。簡単に言えば、エッジAIが成功するためには、「デバイスはあらゆるものと連携しなければならない」と言う。
同様に、5Gでエッジ環境をサポートするために必要な相互運用性とコネクティビティは、多くの場合十分ではない。オープンRAN 環境でさえ、アクセスポイント間の相互運用性が「不十分」であることが多いと氏は指摘した。
「カバレッジは平凡なものです」と氏。特に製造施設は可動部分が多く、Wi-Fiでは十分とは言えない。大規模な工場では「大量のWi-Fiアクセスポイント」と、イーサネットや低電圧ケーブルによるバックホールの構築が必要になると氏は述べた。プライベート5Gを使えば、組織ははるかに少ない物理リソースで、より優れたコネクティビティとパフォーマンスを実現できる。
「カバレッジという点では桁違いです」と氏。「カバレッジは、登場し始めている最大のユースケースなのです」
エッジAIの促進
クアルコムの戦略・分析担当バイスプレジデントであるAtul Suri氏は「エッジAIはデバイスに組み込まれた計算能力とAI、クアルコムの場合はSnapdragonチップセットシリーズを使用して、エッジでの推論・判断を加速させるものです」と説明する。
「これにより、クラウド上で行わなければならないデータや処理の量が減り、より経済的なビジネス・ソリューションが実現します」と氏は述べた。
Ahmed氏は、従来の製造環境では、「移行や引き継ぎでさまざまな課題が発生する」と指摘した。
しかし、エッジAIを活用すれば、すべてがローカルで行われるため、「大変革のチャンス」が生まれると氏は言う。
両社は、今回の提携によって新たなユースケースが生まれると期待している。例えば、Ahmed氏は、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)、つまりプログラム命令やその他の様々な機能を格納するプログラマブルメモリを搭載した産業用マイクロプロセッサ・ベースのツールを仮想化できるようになると考えている。これにより、ローカルコンピュータ環境内でシミュレーションを行い、What-ifシナリオ分析を実行し、新しい命令をPLCにロールアウトして即座に有効にすることができる。
あるいは、高度な画像認識によって、リアルタイムの物品数のカウントや、作業員が個人用防護具(PPE)を着用しているか(適切に使用されているか)の確認も可能になる。
より大きなスケールで見れば、「クアルコム・テクノロジーズと協力することで、世界の産業界全体でプライベート5Gの需要をさらに加速させることができるでしょう」とAhmed氏は述べた。
プライベート5GとDaaS
同日、NTTリミテッドが提供するEaaS(Edge as a Service)に、DaaS(Device as a Service)を追加することも併せて発表された。その目的は、5Gエッジデバイスへのアクセスを拡大し、企業のIT保守の労力とコストを削減することだとAhmed氏は説明した。
顧客は今後、大規模な初期投資をすることなく、従量制の月額料金モデルで5Gやエッジデバイスを利用、アップグレードすることができるようになる。このようなデバイスを使おうとしている中小企業にとっては、「経済性はまだ十分ではない」と氏は言う。
NTTリミテッドによれば、クアルコムを通じて提供されるデバイスには、スキャナー、ビデオカメラ、IoTテーブル、ゲートウェイ等のIoT製品がある。サブスクリプションモデルの契約には、定期的なアップグレード、保守、サポートが含まれる予定である。
プレスリリースで、NTTリミテッドの顧客である仏シュナイダーエレクトリックの商業・産業部門およびチャネル担当プレジデントであるMark Bidinger氏は、「5G対応デバイスの普及は、よりデジタルで持続可能な未来を形成する上での重要な要素です」と述べた。「それは、効果的な資源管理とエネルギーの節約を通じて効率と持続可能性を向上させる多くの技術進歩の根幹であり、さまざまな産業での革新にとって極めて重要です」
さらに、NTTリミテッドとクアルコムのパートナーシップは、「プライベート5G導入を推進し、IoTや機械学習の固有の需要に対応するための重要な一歩だ」と付け加えた。
NTT and Qualcomm look to accelerate private 5G adoption at the edge
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