ONFのプラットフォーム「Aether」、3000万ドルの米5G国防研究プロジェクトの一角に
業界団体ONF(Open Networking Foundation)のプラットフォーム「Aether(イーサー)」は5Gエッジクラウド機能を提供するべく作られたものだが、このほど米国防高等研究計画局(DARPA)が3000万ドル(約31億円)を資金提供する新プロジェクトのソフトウェア層に採用された。
ONFでマーケティング担当VPを務めるTimon Sloane氏によると、DARPAの「Pronto」プロジェクトはセキュアな5Gネットワークインフラの研究を支援するものだが、ONFがマネージドサービスとしてのAetherネットワークを展開・運用する活動にも同プロジェクトから資金提供がされているという。
「これはモデルの一部となっています。単に未成熟なオープンソースプラットフォームを作るだけでなく、実際にネットワークを構築・運用するためのものです」と氏は言う。
ONFが3月にリリースしたこのKubernetesベースのオープンソースプロジェクトは、エッジクラウド、モバイルエッジコンピューティング、オープン無線アクセスネットワーク(RAN)機器など複数のサービスを組み合わせ、エンタープライズ向けのプライベートエッジクラウドサービスとして5GおよびLTEを提供している。Sloane氏によると、Aetherは初のオープンソースエッジクラウドプラットフォームであり、CaaS(connectivity as a service、サービスとしての接続)をサポートする初のオープンプラットフォームでもあるという。
DARPAのProntoプロジェクトの資金は、コーネル大学、プリンストン大学、スタンフォード大学によるネットワーク検証と閉ループ制御の研究を支援するためのにも使われる。Aetherの民間パートナーには、AT&T社、Ciena社、Intel社、Google社、NTT、Telefonica社などがある。
「Prontoが焦点にしているのは、エンドツーエンドでプログラム可能なネットワークを構築することです。サーバからNICまで、スイッチやミドルボックスまで、エンドツーエンドパス全体で真にプログラム可能にすることです」とSloane氏は言う。
そのレベルでプログラム可能になれば、ITプロフェッショナルたちは「ネットワークのあらゆるフローを通る全てのパケットを監視することができる」ようになるという。「今日のネットワーク、従来のネットワークは、まるきりブラックボックスのようなものです。パケットを送り、あちら側に出てくることを期待するわけですが、そうならなかった場合、何が起こったのかを知るすべはありません」と氏は言う。
ONF、安全でないハードウェア上に安全なネットワークを構築することを目指す
「AetherとProntoによって、またこのアプローチを取ることで、ターゲットにした全てのパケットとフローを実際に追跡できるようになります。また、全ての転送ルールを決定できるようになります。初めから終わりまで、全てに手を出すことができるのです。つまり、外皮を剥ぐようなもので、中が見えるようになり、ネットワークがどのような振る舞いをしているのかを本当に理解することができるようになります」と氏は補足した。
ONFはすでに、米国の周波数共用方式CBRS(Citizens Broadband Radio Service:市民ブロードバンド無線サービス)とGoogle Cloudで動作する共用コアネットワークでの4G LTE無線アクセスをサポートしたAetherのベータ版本番環境を走らせている。ONFによると、このネットワークは、Prontoの研究を進め、ユースケースの可能性をさぐるために、各大学のキャンパスまで拡張される予定だという。
「ここでの真の目的や思想は、安全でないホワイトボックスのハードウェア上にセキュアなネットワークを構築するという、セキュアな5Gインフラが実現した未来に向かってAetherが私たちを連れて行ってくれるようにというものです」とSloane氏は話す。「ネットワークの振る舞いを決めるのはハードウェアではありません。どう振舞うべきか決めているのは、プログラムとオペレータによるソフトウェア定義です。そうした未来では、ネットワークの安全性は大幅に向上すると私たちは思っていますし、最近よく議論されているセキュリティ問題の多くがある程度緩和されるのではないかと期待しています。これが私たちの希望であり、野心です」
さらに、AetherはクラウドネイティブなKubernetes環境を提供しており、パブリッククラウドやIoTプロバイダーによる各エッジサイトからのサービスなど、複数のKubernetesベースのサービスを同時に支えることができると氏は言う。
ONFはさまざまな別プロジェクトを展開しているが、Aetherは複数の機能を組み合わせ、エンタープライズ向けのプライベートエッジクラウド運用をシンプル化しようという試みだ。
SDxCentralのシニアエディター。5Gネットワークオペレータ、無線アクセスネットワークサプライヤ、通信事業者ソフトウェアベンダー、クラウドを担当している。彼はiPhoneの夜明け前からテクノロジーについて書いており、ソーシャルになる前からメディアをカバーしている。
連絡先: mkapko@sdxcentral.com または @mattkapko
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