静かなMWCラスベガス=話題の中心はプライベート5G、オープンRAN
【ラスベガス】砂漠の雷雨は印象的なもので、ハイブリッドイベントとして開催された「MWCラスベガス2022」の火付け役になったかのようだった。話題となったテーマとしては、プライベート5GネットワークとオープンRANに関するニュースが中心となっている。
開会基調講演の直前、早朝のラスベガス・バレーを雷雨が通過したことで、イベントの始まり方はショッキングなものとなった。とはいえ、火花と雲が去ると、残っていたのは驚くほど小さな基調講演会場の風景だ。
私が過度の期待をしていたのかもしれない。イベント主催者GSMアソシエーションの見積りでオンサイトの参加者数が最大1万人だった時にはじっさい驚いた。しかしそれでも基調講演会場の小ささには驚愕させられた。
基調講演のステージ―MWCラスベガス2022(出典: SDxCentral)
大した指標ではないが、私はイベント全体の規模と成功度合いの一端をうかがうために基調講演の会場とステージのサイズを見るようにしている。コロナ禍以前のイベントと比較することはフェアではないだろうが、今年は期待の持てそうなイベントをいくつか見てきた。
MWCラスベガスはその1つにはならなさそうだ。
GSMアソシエーションの参加者数の見積りはよい判断だった。会場に現れた聴衆に対してちょうどよい数の椅子だけが用意されているようだった。大きな会場で半分が埋まらないよりも良いことだ。しかし、開会基調講演の途中から聴衆はぽつぽつと減り始め、すぐに半分席が空いているという困った状況になってしまった。
ポジティブな部分について触れると、ラスベガス・コンベンションセンターの比較的新しい西ホールが持つ大きなメリットが活かされていた。古いスペースは大きな窓と高い天井で開放感のあるつくりとなっているが、西ホールは違う。
また、展示会場じたいには驚くほど多くのブースが並んでおり、出席者はまばらであるにしても、少なくともベンダー各社はイベントへの参加を望んだことがうかがえた。GSMアソシエーションによると、出展企業は300社を超えたという。一見して成功と言えるだろう。
会場で会った他の人たちも参加者の少なさを指摘していたが、参加者の質については見解が一致していた。私自身、会場では素晴らしい出会いがあったし、大手数社の代表が上級管理職であったことに驚いたのも事実だ。これは良い兆候で、同イベントには引き続き業界の支持があるだろう。
プライベート5Gと周波数競争
参加者については良い面と悪い面があった一方で、発表の数は十分だった。
会場や会場に向かう途中で交わした議論はほとんどすべてがプライベートネットワークかオープンRANに関する何らかの話題を中心としたものだった。
シスコ、デル、フェデレーテッドワイヤレス、NTTといったベンダー各社はいずれもプライベートネットワークに関する何らかの発表あるいはアップデートを披露した。5G技術でプライベートネットワークを強化することが中心だ。キャリア各社の動きも同じで、TモバイルUSは既に発表したプライベート5Gネットワーク計画に加えてマネージドサービスを構築すると発表していた。
これに関して面白いのは、プライベート5G分野の周波数帯に序列がもたらされたことだ。
米CBRS(市民ブロードバンド無線サービス)の擁護派は完全に免許不要の周波数帯(Wi-Fi)がいかに役に立たないかについて無遠慮なコメントをするのが大好きだ。一方、全面的に要免許の周波数帯を支持する人々もCBRSを同じように非難する。全ては具体的な活用事例などに依存することを私は知っているが、私の中の周波数オタクはこうしたつつき合いがいつまでも終わらなければいいと願っている。
プライベートネットワークが持つビジネスチャンスについては長いこと議論が展開されたが、これほど各社が注力しているのも驚くことではない。収益性の高いエンタープライズ市場に関係した投資モデルに回帰する動きがはっきりとあるようなのだ。とはいえ、市場にこれほど選択肢があふれ、マクロ経済の不透明感が広がっていれば、主流でないプレイヤーはすぐに一掃されてしまう可能性がありそうだ。
オープンRANの現実が明らかに
オープンRANについても同じことが言えるかもしれない。広く通信事業者の世界にじわじわと入ってきている分野だ。最近ベライゾンのような通信事業者が出した広告などは市場の勢いが続いていることを示す確かな証拠となっている。それに加えていくつかの国では政府の取り組みが後押しとなりそうだ。
9月末にはNEC、富士通、米マベニア、楽天などオープンRANを推進する企業がいずれも新製品や提携を発表、同分野をさらに強化している。また、MWCラスベガスで交わされた会話からはオープンRANの成熟度に対する関心の高さがうかがえた。
とはいえ、こうしたオープンRANコンポーネントで複雑かつレガシーな通信ネットワークを支えるのに必要となる最後のピース、統合作業に関する懸念は残る。各種プラットフォームがまだ市場にあふれていないのは恐らくこのためだ。米ディッシュ・ネットワーク(Dish Network)が統合で課題を抱えたことで大規模展開に関しては何らかの共通基盤が必要であることが浮き彫りになった一方、市場はまだ奪い合いの様相を呈しており、そうした詳細については各社が大急ぎで一斉に取り組んでいる状況のようだ。
オープンRANエコシステムは通信分野に新しいイノベーションをもたらす多大な可能性を秘めているが、そうした潜在能力を発揮するには安定したエンドツーエンドのプロジェクトとなる必要がある。
MWCバルセロナは見本市、プライベート5Gネットワーク、オープンRANの未来を占うイベントとなるかもしれない。願わくば3つすべてについて確かな回答を得たいものだ。
Dan Meyer is Executive Editor at SDxCentral, with a focus on Telecom, 5G, radio access networks (RAN), and edge networking. Dan has been covering the telecommunications space for more than 20 years. Prior to SDxCentral, Dan was Editor-In-Chief at RCR Wireless News. You can contact Dan directly at: dmeyer@sdxcentral.com, on Twitter at: @meyer_dan, or on LinkedIn at: dmeyertime.
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