オープンRAN、2030年までに2850億ドルを世界経済に供給
英調査会社Analysys Masonの新しいレポートによると、オープンRAN(無線アクセスネットワーク)技術とネットワークインフラのディスアグリゲーションを推進することによって、向こう10年が終わるまでに世界のGDP(国内総生産)が少なくとも2,850億ドル(約31兆2,200億円)増える可能性があるという。
さらに、Telecom Infra Project(TIP)の委託で作成された同レポートによれば、2030年以降、世界のGDPがオープンRANによって年間910億ドル(約9兆9,660億円)ずつ増えていく可能性があるという。TIPやO-RAN Allianceをはじめ、通信事業者、ベンダー、その他の関係者による複数の業界団体は、無線ネットワークアーキテクチャの劇的な変化を促進するべく異なるネットワークコンポーネント間で使える標準インターフェースを開発している。
Analysys Mason社のパートナー、David Abecassis氏はレポートの中で次のように述べている。「ネットワークをオープンにし、ディスアグリゲーションすることは、通信事業者のサプライチェーンを根本的に変革する絶好の機会となります。ハードウェアとソフトウェアの急速な革新によって通信事業者の要件を満たしていけば、業界ではユニットエコノミクスを改善し、カバーするのが困難な地域に新たな投資機会を開き、最終的には通信事業者のサプライチェーンのレジリエンスを向上させられるようになることが期待できます」
「業界全体でこうした技術が支持され、非常に勢いがあるのを目の当たりにしているため、私たちはこうした利益は達成できるし、さらに伸びていくこともあるだろうと楽観視しているのです」と氏は付け加えた。
RANのディスアグリゲーションを加速させ、そこから期待される経済効果を生み出すために業界が注力すべき3つの分野を同社は紹介している。
Analysys Mason社によれば、オープンRANに必要なのは、通信事業者、ベンダー、システムインテグレータ間のテストおよび統合を可能にする広範なプラットフォーム、完全に相互運用可能な標準および実装を業界全体で厳格に遵守しバラバラになっていくのを避けること、国際的な整合性とオープンインターフェースの採用を促進するための各国の政策立案者による資金提供など、広範囲にわたる支援、の3つだという。
「オープン標準の採用や、相互運用性のない実装につながるバラバラ化といった重要な問題に関する調整が不足した場合には、オープンなディスアグリゲーションされた機器が想定された効果を生み出す可能性が低くなります」と同社は書いている。
世界のGDPを最大で7250億ドル増加
Analysys Mason社が予測したベースラインのGDP増加額は、中程度の導入率、中程度の効果だった場合とされている。オープンRANが急速に普及し、高い効果を発揮した場合の最大予測値では世界のGDP増加額は7,250億ドル(約79兆3,190億円)に達する。
より保守的な2,850億ドル(約31兆1,810億円)という予測では、そのうち約63%がデータ使用量の増加によって生み出され、残りはモバイルインターネットのさらなる普及によってもたらされるという。
オープンRANの成長ペースについては業界アナリストの間でも意見が分かれている。Analysys Mason社の予測では、2028年頃にオープンネットワーク機器がプロプライエタリなRANベンダーの機器を追い抜くとしている。
米調査会社Dell’Oroグループでは、2025年までにオープンRANがRAN市場全体の10%近くを占めるようになると予測している。同社によれば、オープンRANのベースバンド機器や無線機器の2020年の販売額は、ソフトウェアやファームウェアを含めてもRAN市場全体の1%未満にとどまったという。
しかし成長の勢いは急速だ。Dell’Oroグループによると、ベースバンドハードウェア・ソフトウェアによるオープンRANの売上は2021年の第1四半期に5倍に増加したという。前年比でのこの成長ペースから確信を得て、同社は短期見通しを上方修正した。現在、今年のオープンRANによる売上は2倍近くになると予測している。
Analysys Mason社によれば、ネットワーク機器市場の競争が激化することで、専門性の高い製品を提供する新しい企業が参入し、現在は必要な機器をすべて輸入しなければならない地域の市場で存在感を示すことができるようになるという。「既存ベンダーは通信事業者のロードマップを以前ほど思い通りにはできなくなるでしょうが、エコシステムの中で競争力を維持する新しい方法を見つけるかもしれません」と付け加えている。
同社およびTIPによれば、現在オープンRANを試験運用または本番展開しているのは、ブラジル、インド、インドネシア、アイルランド、日本、マレーシア、ペルー、トルコ、アラブ首長国連邦、米国、英国だという。
TIPのエグゼクティブディレクター、Attilio Zani氏は、「ディスアグリゲーション型ネットワークこそ未来です。現在急速に構築されていっています。その価値は明らかであり、今投資額を倍にすれば、将来的には利益を生むでしょう」と述べている。
Matt Kapko, senior editor at SDxCentral, covers 5G network operators, radio access network suppliers, telco software vendors, and the cloud. He has been writing about technology since before the dawn of the iPhone, and covering media well before it was social. Matt can be reached at mkapko@sdxcentral.com or @mattkapko.
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