米通信事業者各社、プライベートネットワーク分野で地位低下
プライベートセルラーネットワークは一大分野であり、企業に対するネットワーク事業者の役割を様変わりさせるほどの豊かな可能性を秘めているが、米調査会社ABI Researchによると、5Gが普及するなかで好機は失われつつあるという。
この結論はモバイルネットワーク事業者にとって非常に厄介なものだ。多くのモバイルネットワーク事業者はプライベートネットワークをほとんど手つかずの成長源と捉えており、5Gへの巨額の投資を相殺する助けとなる新たな収益源として期待しているからだ。
ABI Research社によると、通信事業者各社は5Gをプライベートネットワーク普及の起爆剤として積極的に宣伝している一方で、具体的にどんなビジネスの成果があったかについてはあまり強調してこなかったという。さらに、5Gマーケティングの誇大宣伝では現実より何年も先の未来が語られ続けている状態で、多くの企業は3年以上前から約束されていた5Gの能力が実際に提供されるのを今もまだ待っている。
「こうした企業では、URLLC(高信頼・低遅延通信)やTSN(タイムセンシティブネットワーキング)が完全にサポートされるまでにはまだ何年もかかることを認識しており、だんだん待ちきれなくなってきて、代替技術を検討し始めています」。ABI Research社のエンタープライズ接続部門でプライベートネットワーク関連のシニアアナリストを務めるLeo Gergs氏は新しいレポートに書いている。
「企業向け5Gの価値提案は、技術そのものではなく、それによって実現されるアプリケーションにあることを通信業界は認識しなければなりません。結局のところ、自社の問題点を解決できさえすれば、自社内に4Gと5Gのどちらを導入するかを気にする企業はありません」と氏は説明する。
また、ABI Research社によると既存のプライベートネットワーク展開は世界で290件以上が公開されており、多くは5G能力の披露やソリューションのテスト、システムインテグレータやFAベンダーとのサービス統合を主な目的としている、とGergs氏は指摘する。このような販売目的の活動は特にドイツで多く見られるという。
無線通信事業者の好機が終了
こうした状況が商用展開の普及曲線を押し下げ、5Gエンタープライズ全体の好機を限られたものにしているとGergs氏は言う。
業界団体「Global mobile Suppliers Association」(GSA) は先月、世界で少なくとも370社がプライベートモバイルネットワークへの投資を行っている・またはこれまでに行ったと発表した。大半が依然としてLTEだと指摘している。
多くのアナリストや業界団体は企業向けのプライベート5Gネットワーク分野に引き続き高い期待を寄せているが、これまでの導入ペースは比較的緩やかであり、いくらかの課題や懸念があると言える。
課題の1つは、企業にはそれぞれ違いがあり、「万能のソリューションはない」ことだ、と業界団体「5G Americas」の長を務めるChris Pearson氏は最近のブログ記事に書いている。「プライベート無線ネットワーク事業者になろうとするならば理解すべき重要な項目が1つあります。タスクのすさまじい複雑さと大きさです」と氏は説明する。ID管理、認証、オンボーディング、権限、ポリシーの定義と実施、セキュリティのすべてを考慮しなければならないという。
とはいえ、Pearson氏はプライベート5Gネットワークの見通しについては楽観的な見方を維持している。プライベート5Gネットワーク市場の規模は2028年までに139億2,000万ドル(約1兆5,370億円)に達し、年平均成長率は約41%になると予測した調査会社Polaris Market Researchによる最近のレポートを引いて強調した。
プライベートネットワークに通信事業者の関与は不要
米Celonaのようなプライベートネットワークベンダー各社は、プライベート周波数オプションが利用可能である以上、ネットワーク事業者の関与は必要ないと主張している。多くのRANベンダーも同じことを述べ、従来のネットワーク事業者を必要としないプライベートネットワークの展開を呼び物にしているが、公にこの点をプライベートネットワークベンダーほど強くは強調していない。
Celona社のマーケティング担当VP、Özer Dondurmacıoğlu氏はSDxCentralの電話インタビューに対し、無線通信事業者はプライベート5Gにおいて、以前マネージドWiFiサービスで直面したのと同じ障害に遭遇していると語った。
「彼らは既存の無線ベンダーと一緒にやろうとしたり、モバイルコアソフトウェアやプロビジョニングサービスで断片的にやろうとしたり、マネージドサービスポータルを作成してモデルを稼働させようとして時間と多大な労力をかけたりしました」と氏。
プライベートネットワークは有線LANやSDNのような既存のエンタープライズ環境と統合するべきであり、その点でCelona社のフレームワークはプライベート4G LTE・5G向けのクラウドネットワーキングに似ている、とDondurmacıoğlu氏は言う。
「(通信事業者は)過剰な約束をしすぎたと思います。企業の考え方はもっと現実的です」と氏。「通信事業者は、世の中は素晴らしいものになる、遅延は1ミリ秒になる、すべてうまくいくと語りますが、それが3年も続いています。企業側はもう待てなくなっています」
Matt Kapko, senior editor at SDxCentral, covers 5G network operators, radio access network suppliers, telco software vendors, and the cloud. He has been writing about technology since before the dawn of the iPhone, and covering media well before it was social. Matt can be reached at mkapko@sdxcentral.com or @mattkapko.
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