楽天モバイル、野心的な5G計画で楽天に赤字を出す
楽天モバイルは完全仮想化クラウドネイティブネットワークアーキテクチャを使用して4G LTEサービスと5Gサービスを稼働させ、高度な浸透市場である日本の通信市場に参入したことで、親会社の事業全体に対して財務上大きな打撃を与えている。とはいえ、同モバイル部門は長期的な通信事業計画を強化するためにさらに資金を費やすようだ。
楽天は、モバイル部門が2020年第1四半期に3億6,640万ドルの収益を上げたと報告しており、前年同期比で55%近い増加となっている。この数字は今後大きく伸びると見られている。第一四半期が終了するまではモバイルサービスを正式に開始していなかったためだ。また、楽天のモバイル事業は、2019年第1四半期には同社の総収益の11%強を占めていたのに対し、今期の第一四半期には8%強となっている。
モバイルセグメントの損失は前年同期比4倍以上の2億9730万ドルとなり、第一四半期の親会社全体の損失の大半を占め、立ち上げ前にサービスを展開するコストの大きさを強調する結果となった。
同社は、第4四半期末時点で4,700以上のセルサイトが稼働しており、これは想定を40%近く上回っていること、さらに4,555サイトで契約を締結したことを述べている。また、2021年第1四半期末までに日本の人口の70%をカバーすることを目標としている。
こうした展開計画は、すでに一部の都市地域で5Gサービスを開始しており、今後2年間でほぼ全国的なカバーを計画している既存の通信事業者勢に対抗するものだ。
楽天モバイルはネットワークへの投資と顧客基盤の拡大を続けているため、同社の財務状況は当面のあいだ赤字が続くと予想される。楽天モバイルは、顧客を惹きつけるために設計したサービス初期の攻めの価格設定によって「当期の収益は限定的なものになるだろう」と述べ、継続的な展開に伴い「減価償却費を含む営業費用の増加が予想される」としている。
COVID-19の影響
同社は、現在進行中のCOVID-19パンデミックが日本経済に与えている影響について、悲惨な絵を描いている。
同社は「当第1四半期における世界経済は、新型コロナウイルス感染症の影響により、急速に悪化しており、極めて厳しい状況にあります」と決算発表の中で述べている。「日本経済においても、同影響による経済活動の低下を受け、企業収益においても急速な減少がみられる等、感染症が内外経済をさらに下振れさせるリスクに十分注意する必要があります」
楽天モバイルのグループEVP兼チーフアーキテクチャーオフィサーであるTariq Amin氏は、先日SDxCentralに対し、COVID-19のパンデミックによる重大な影響は見られず、来月の5Gサービス開始に向けて航路を維持していると述べた。
「全体的に見て、今回の流行で副作用は起きていません」とAmin氏は楽天の5G展開計画について語っている。「当社の5G構築にも影響はないと考えています。建設できる基地局の数でペースが遅くなるかもしれませんが、大きな影響はないと考えます」
Amin氏によれば、ソフトウェアでは最大2週間の遅延が発生する可能性があるが、ハードウェアは構築済みであり、展開の準備ができているという。5GハードウェアはNECとインテル(日本法人)との提携で設計・製造したもので、サブ6GHz帯とミリ波(mmWave)スペクトル用の無線機などがある。
Innoeye社の買収
楽天はまた、4G LTE・5Gネットワーク用のコンバージドOSS(オペレーティングサポートシステム)プラットフォームを通信事業者に提供してきた、バージニア州に拠点を置くInnoeye社の買収を計画していることを発表した。Amin氏は以前、ネットワークアーキテクチャにOSSやBSS(ビジネスサポートシステム)を導入する際に、予想以上の課題を抱えていると述べていた。
今回の取引の金銭的条件は発表されていないものの、昨年、オープンRAN(無線アクセスネットワーク)のサプライヤであるAltiostar社の企業支配権を獲得した際と同様の動きだといえる。
Innoeye社のプラットフォームも楽天のCommunications Platformに統合される。このプラットフォームは各種プラットフォームの一種のプリパッケージセットとして楽天がまとめたもので、他の通信事業者が完全仮想化クラウドネイティブネットワークアーキテクチャを導入する際に使用できるものだ。
このプラットフォームには次のものが含まれる予定だ。エッジ・集中コンピューティングハードウェアを対象とした「クラスタ」コンポーネント、クラウドネイティブ環境で動作する5G vRAN機能やコアネットワーク機能を提供する「機能」コンポーネント、Innoeye社が参加してネットワークや顧客のライフサイクル管理を提供するOSS/BSS部分の「オートマター」コンポーネント、バックエンドサービスを扱う「コンシェルジュ」コンポーネント、複数のベンダーのサービスにアクセス・更新するためのアプリストアとして機能する「マーケットプレイス」だ。
「私たちは、最初に楽天モバイルの立ち上げを構想した2年前から、将来自分たちの専門知識と技術スタックを独自のサービスにして市場に投入し、もって世界中の通信事業者が完全にクラウドネイティブな通信ネットワークを導入できるようにしたいということも計画してきました」とAmin氏は、Innoeye社の買収に関連したコメントの中で話している。「Innoeye社の買収を計画したことで、『クリック、購入、展開』というくらいシンプルに利用できる、キャリア向けクラウド製品を市場に投入するという完成形に一歩近づきました」
Dan Meyer is Executive Editor at SDxCentral, with a focus on telecom, 5G, radio access networks (RAN), and edge networking. Dan has been covering the telecommunications space for more than 20 years. Prior to SDxCentral, Dan was Editor-In-Chief at RCR Wireless News. You can contact Dan directly at: dmeyer@sdxcentral.com, on Twitter at: @meyer_dan, or on LinkedIn at: dmeyertime.
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