楽天シンフォニー、モバイル5Gの未来をオーケストレーション
楽天シンフォニーのプラットフォームは昨年末までの期間中、一貫して好調な成長を見せた。楽天モバイルの5G増築を支えることにもなりそうだ。
楽天は2021年末に楽天シンフォニー事業の分社化を決めた。世界中のネットワークにオープンRANを広めていくことが目的だ。
当初は「Rakuten Communications Platform」(RCP)とさまざまなオープンRAN技術資産/サービスを扱っていたが、後に米Robin.ioを買収しブランド名を「Symworld」に変更している。
楽天シンフォニーの昨年の売上高は4億7,600万ドル(約640億円)。AT&T、シスコ、ノキア、クアルコムなど14件のグローバル契約に支えられた形となった。件数としては前四半期の報告から増えていないが、さらに8件の契約が「締結に向けた最終段階」にあるという。直近の決算説明会で楽天モバイルと楽天シンフォニーのCEO、Tareq Amin(タレック・アミン)氏が語った。
また、2022年末時点の販売パイプラインは売上高にして40億ドル(約5,400億円)を超えたという。2022年第3四半期末の31億ドル(約4,180億円)を大きく上回る数字だ。
楽天シンフォニー、5Gのコスト削減に貢献
楽天モバイルも楽天シンフォニーのプラットフォームを活用する予定だ。設備投資の削減と規模の拡大を狙う。同社は国内での基地局拡大の最終段階にあり、現在競合他社に支払っているローミング費用の削減を見込んでいる。
楽天の代表取締役会長兼社長、三木谷浩史氏によると、今年は約22億ドル(約3,000億円)の設備投資を行う予定だという。ここ数年間ネットワーク構築に費やしてきたのと近い額だが、2024年には半額程度に削減、2025年以降はさらに20%削減する計画だ。
Amin氏の補足では、これが可能になるのは同社が持つクラウドネイティブアーキテクチャによるもので、「他社との比較で80%少ない支出」を実現できるという。
「コアネットワークの導入にかかる追加費用はゼロです」と氏。また、同社のネットワークは2,000万人のユーザーに対応できる規模になったと付け加えた。こうしたネットワーク資産は楽天のクラウド上で仮想化/コンテナ化ソフトウェアとして稼働しており、これによって「設備投資に影響を与えることなく」拡張が可能になるという。
さらに、ネットワーク拡張費用を下げるために新しい周波数帯も利用する。経営陣は900 MHz帯の「プラチナバンド」と呼ばれる帯域を利用し、サービスエリアを拡大する計画を何度も訴えてきた。同周波数は移行の最中で、展開開始は2024年初頭の計画だと話している。
同社は昨年、防衛省が保有していた1.7 GHz帯の20 MHz幅の割り当てを受けた。また、3.7 GHz帯、4.5 GHz帯、28 GHz帯も保有している。
こうしたコスト削減は楽天の今後の財務面で重要な意味を持っている。昨年は2021年と比較して総売上高は小幅増となったものの、総損失は3倍近くに膨らんだ。
前四半期には「スリムで収益性の高い」体質を目指し、人員異動の計画を発表した。Amin氏は人員削減という表現を避けつつ、広範な楽天関連事業の他部門への人事異動があるだろうと説明している。
「楽天モバイルでは大規模構築の終わりが近づいており、レイオフを実施するということではありませんが、今後は事業のスリム化に力を入れようとしています」。第3四半期の決算説明会で挙がったレイオフを実施するかという質問に対し、Amin氏はこう答えている。「構築を進めるためには人員と資金が必要でしたが、(増設する)基地局数が少なくなれば、当然そうした人員はグループ内の他の機能部門に異動していただくことになります」
電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
Twitter:@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime
電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
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