OPEN-RAN
文:Matt Kapko

楽天の米リーダー、オープンRANプラットフォームを擁護

楽天の米リーダー、オープンRANプラットフォームを擁護

Azita Arvani氏は、オープンな無線アクセスネットワーク (RAN) を正しく稼働させることがいかに難しいかわかっているが、そうした課題はこの(オープンRANという)ビジョンを十分に受け入れている人々によって克服できると考えている。

Rakuten Mobile Americas社のGMである同氏は、楽天が日本でモバイルネットワーク事業者になると決め、2020年4月に立ち上げた4G LTEネットワークの構築の際にNokia社と協業し、自社の各種のリモート無線ヘッドとAltiostar社やその他のベンダーが提供するサービスを統合したころ、Nokia社で働いていた。

氏はSDxCentralの最近の電話インタビューで、「それ(オープンRAN)が未来であることは誰もが知っています。問題は、その方向にどこまで進んでいくか、というようなことです」と語っている。2018年以降に楽天が開発してきた知的財産と技術知識は、現在はカスタマイズ可能なプラットフォーム「Rakuten Communications Platform(RCP)」として販売されており、他の通信事業者はオープンなRANを計画、展開、管理する際の要件を満たすためにこれを利用することができる。

南北アメリカでRCPの取り組みを率いるArvani氏によると、同社は3種類の見込み顧客(モバイル事業者、プライベートネットワークに関心のある企業、政府機関)をターゲットとしているが、これまでのところ顧客を獲得できていないという。

 

米Dish社は楽天を模倣するのか、手を結ぶのか

米国で衛生放送サービスを提供し、2019年に携帯キャリア事業に参入したDish Network社は、新しくグリーンフィールドのオープンRAN事業者となる意志を固めており、米国でRCPを広めようとする楽天にとって最も明らかなビジネスチャンスとなっている。しかしDish社は広く採用をかけ、5Gネットワークの構築に当たっては独自にベンダー各社を利用している。RCPがその枠組みのどこに、どのようにフィットするのかは不明だ。Dish社はグリーンフィールドであることからパートナーとして自然であり、両社は上層部による対話を複数回行ってきているが、「現時点では何も発表できることはありません」とArvani氏は言う。

とはいえArvani氏は、「RCPはゼロから始める人のためだけのものではありません」と補足している。同プラットフォームのサブセットは、ブラウンフィールドの通信事業者が自社のペースでオープンRANを採用するのを支援することもできる、と氏は言う。

Arvani氏の論によると、RCPは(使い古された言い方ではあるが)「最先端の」「将来にわたって使える」プラットフォームであるという。なぜならネットワークアーキテクチャを小さな部分に分割し、より多くのベンダーが大きく貢献することを可能にしており、オープンなインターフェースやレイヤーを使用してイノベーションや繁栄を実現できるレベルの柔軟性を保っているからだ。

「要件の変化に応じて、他のものを取り入れることもできます」と氏は言う。氏は日本での楽天モバイルのネットワークについて触れ、「当社ではユースケースに応じて、自社の、あるいは他社から提供された10種類近くの異なる無線機を使用しています。こうした柔軟性は、オープンRANでなければ達成できなかったでしょう」と話した。

「あらゆるオペレータがこうした統合を自力で行えるわけではありません。そのため、プラットフォームを使ったこの方法で統合作業を減らし、皆が車輪の再発明をする必要がないように、と私たちは考えているのです」とArvani氏は言う。

 

楽天はどのようにオープンRANの研究開発を続けているか

また、楽天はRCPとオープンRANそのものに関する研究開発を促進するために、3つの異なるアプローチを取っている。Arvani氏によると、楽天は同プラットフォームの改善や、さらなる検証をできる新しいパートナーを常に探しており、戦略的と思われる企業を買収したり、投資したりしている。また、同社にはクラウドネイティブ技術や通信に関する幅広いスキルを持つ約1,500人のエンジニアがいるという。

ほとんどの業界リーダーはオープンアーキテクチャとクラウドネイティブの原則に傾倒しているが、多くの通信事業者はオープンRANに対してそれ以上取り組むことをためらっており、その理由は単純に現状を維持する方が簡単だからだと氏は言う。楽天は、同プラットフォームによってこうした懸念の多くを最小限に抑え、通信事業者がそれらを克服できるよう支援できると期待している。

楽天はアラカルトのネットワークサービスのプラットフォームを販売しようとしている通信事業者でもあることから、このフレームワークが変わったものであることをArvani氏は認めている。「私たちは、これは珍しい、ユニークなものではあるが、うまくいけばモバイル事業者にとって非常に有用なものになると考えています」と氏は言う。

楽天は8月からRCPプラットフォームの説明を始め、モバイル事業者の設備投資費を40%、営業費用を30%削減できるとしている。楽天の三木谷浩史CEOはその際、RCPのようなプラットフォームの世界市場の規模は、モバイル事業者の従来のネットワークコストを含めると、年間で最大3750億ドル(約39兆円)に達すると述べている。

 

楽天コミュニケーションズのプラットフォームは順調(仮)

楽天の利益と、オープンRANのためのより統合されたプラットフォームを楽天がどのように構築したのかに対する関心から、特に楽天の動機を疑ったり、別の形の垂直統合プラットフォームの類になるのではないかと考えたりする企業の間では、いくらか懐疑的な見方が出ている。Arvani氏は、このような懸念があることを認識しており、なぜそうした懸念があるのかも理解しているという。しかしまた、氏はRCPとオープンRAN全体に対する楽天のビジョンに沿って、そうした懸念を否定してもいる。

「私たちは、現在のベンダーを仮想クラウドネイティブ版にしたような存在にはなりたくありません」と氏は言う。「私たちは常にオープンアーキテクチャにコミットしてきましたし、当社の提供するRCPはマルチベンダーソリューションです」

Arvani氏の説明によると、RCPの顧客になる企業は承認済みのベンダーをどれでも選ぶことができ、楽天は舞台裏でハードウェア・ソフトウェアベンダー各社の製品を搭載するよう努め、ポイントソリューションを繋ぎ合わせたものではなく、より全体観を持った製品の一部にできるよう図らっているという。「もし、ハードウェアコンポーネント・ソフトウェアコンポーネントのモザイクのような集合体を想像したり、どこでコストを削れるか、プラットフォームのアジリティを高めることができるかと考え続けているのであれば、それが私たちのしたことです」と氏は言う。

「当社の目的は、基盤となる接続レイヤーを可能な限り利用しやすく、手頃な価格にし、アジャイルにすることです。そして、他のサービスをその上に乗せることができるようにすることです」とArvani氏は言う。「接続できることがすべての人にとっての目的なのではありません。私たちにとっては、目的のための手段です」

Rakuten’s US Leader Defends Open RAN Platform

Matt Kapko
Matt Kapko Senior Editor

Matt Kapko, senior editor at SDxCentral, covers 5G network operators, radio access network suppliers, telco software vendors, and the cloud. He has been writing about technology since before the dawn of the iPhone, and covering media well before it was social. Matt can be reached at mkapko@sdxcentral.com or @mattkapko.

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