5G
文:Dan Meyer

サムスン、5G RAN事業を本格化

サムスン、5G RAN事業を本格化

サムスンネットワークスはMWCバルセロナに出展、盛況のうちに終了した。目玉となったのは5G特化型のvRAN・オープンRAN製品ポートフォリオのアップデート、高成長市場での通信事業者との提携強化だ。

イベントではvRANプラットフォームの最新アップデートに加え、新たにクラウドオーケストレーションをサポート、欧州の通信大手ボーダフォンとオープンRANでの提携を強化すると発表。少し前には米通信事業者ディッシュ・ネットワークに対し、初期供給として24,000台のオープンRAN対応無線機、5G vRANソフトウェアシステムを提供している。

アナリスト企業はvRAN分野でのサムスンの歩みを評価している。米デローログループ(Dell’Oro Group)のバイスプレジデント、Stefan Pongratz(ステファン・ポングラッツ)氏が最近のレポートで述べたところによると、サムスンは米ベライゾンのネットワークで稼働している自社のvRAN製品について、専用機器と比較した性能確認を実施したという。

サムスンネットワークスでマーケティング・5G事業開発責任者を務めるDerek Johnston(デレク・ジョンストン)氏は、米SDxCentralの取材で「当社はvRAN分野の主な競合他社と比べ、商業的に大きくリードしていると考えています」と話している。また、vRAN市場はまだ「生まれたばかり」ではあるが、「vRAN製品については非常に自信を持っています。今後は徐々に本格始動して、さまざまな機能を提供できると考えています」と付け加えた。

Johnston氏が「生まれたばかり」とコメントしているのは、vRAN、特にオープンRANの商用展開のペースが気がかりの種になっていることが関係している。これについて、出展した通信事業者各社は商用ネットワークへのvRAN展開、オープンRANの試験運用が堅調に進んでおり、自信を深めているとして、双方について慎重かつ楽観的な見方を示した。

 

サムスン、欧州のvRAN・オープンRAN市場にビジネスチャンス

これに関し、サムスンはボーダフォンとの提携を強化、英国、ドイツ、スペインにオープンRAN製品の展開を拡大する。

一方、ボーダフォンは欧州を拠点とする通信事業者グループの一角でもあるが、同グループではオープンRANに関する課題について取り上げている。

「欧州でTier1通信事業者のブラウンフィールド(既存)ネットワークへのオープンRAN導入が遅れている主な要因は、従来のネットワークソリューションに関連する既存の契約上の義務に加え、通信事業者やサービスプロバイダー各社が目下苦しんでいる厳しい財務状況が挙げられます」。同グループのホワイトペーパーにはある。「通信事業者がネットワーク更改を進める際に後者の要因が追加投資の妨げになる可能性があり、オープンRANの大規模展開が遅れる原因となっています。次なるモダナイゼーションのために新しく契約が結ばれれば、2020年代後半には欧州でオープンRANが広く導入されることになるでしょう」

ボーダフォンとの提携によってサムスンのビジネスチャンスは拡大、ますます収益性が上がっていくと考えられる欧州市場に深く食い込んでいくことになりそうだ。

デローログループの最近の調査報告では、欧州のオープンRAN市場は発展が遅れているものの、2027年までに市場売上高は10億ドル(約1,300億円)を突破すると予測している。

「こういった事には市場や通信事業者様自身、期待するほど早くは動かないロングテール期があるものです。欧州市場は当社がもっと早期に成功できると考えていた主要市場の1つですが、ついに実を結び始めたというところです」。Johnston氏は言う。「当社としては今後の展望にわくわくしている地域です。オープンRANを選択肢として検討されている多くの通信事業者様に製品をお届けしたいですし、旅路のお供として当社を選んでいただきたいですね」

サムスンはネットワーク事業について、「海外事業を中心に新たな市場機会に積極的に対応し、5G向けコアチップや(vRAN)技術での優位性を高め、増収を維持する」と直近の決算発表で述べている。

欧州では安全保障上の懸念が続いていることから国内の通信事業者に対し中国ベンダー製機器の調達を制限する国が増えており、サムスンの市場機会が拡大する可能性もある。

「個人的には、サムスンは常にベンダーがどうやってRANインフラ/ソフトウェア市場に切り込んでいくかを示すひな形になっていると思います。企業は忍耐強く、十分な資金がなくてはなりません。市場シェアの獲得には時間がかかるものです」。IDCで「Worldwide Telecommunications(世界の通信業界)」担当プログラム・バイスプレジデントを務めるDaryl Schoolar(ダリル・スクーラー)氏がSDxCentralのメール取材で述べている。「今回、欧州市場ではまず仮想クラウドRANを活用、いずれ大きな契約を結ぶための入口としているようです」

 

サムスンの規模

サムスンの課題の1つは、市場機会の大きさに合わせて規模を拡大することかもしれない。同社は数十年にわたってモバイル通信インフラ市場で活動しているが、従来型のRAN市場では、エリクソン、ノキア、ファーウェイ、ZTEなどの有力企業には今も遠く及ばない。

サムスンが成功しているのは遥かに規模の小さいvRAN/オープンRAN市場で、生まれたばかりの同分野を早い段階からリードしている。

Johnston氏によると、サムスンはこれまでそうした大手RANベンダーと正面から対抗しようとはしておらず、代わりに次世代ネットワーク技術の取り組みを始めようとしている通信事業者との協業に関心を見せているという。

デローログループのPongratz氏は、そうした先駆的な通信事業者ではネットワーク設備投資がひと段落したところであり、サムスンの計画は短期的には難しくなるかもしれないと述べている。

「全体として見た時に、サムスンは4Gの初期には1桁台前半だったRAN市場のシェアを(中国を除けば)2桁台というところまでゆっくりと、しかし確実に伸ばしてきました。自国以外の市場でも多くの先進的な通信事業者と協力して前進してきたことが表れていると思います」。Pongratz氏はSDxCentralのメール取材で述べている。「少数の先進的な重要市場に集中するという計画的な戦略が成長に寄与している一方で、そうした通信事業者の中には投資を縮小しているところもあることから短期的にはいくらか課題を抱える可能性もあると言えるでしょう。つまり、現在は北米市場がサムスンの事業の非常に大きな部分を占めていますから、先進的な通信事業者が規模を縮小していく中でも成長を維持するという課題が1つ出てくるということです。オープンRANとvRANでリードしているサムスンが世界での地位を向上させた時、2023年か2024年にはRAN事業の地域構成を多様化できているかどうかは興味深いですね」

Johnston氏によると、サムスンは市場の課題を認識しつつも、市場シェアを拡大し続けることは可能だと自信を持っているという。

「当社はかなり強気でいますし、今後もそうです。市場がどうであるとか、そういった事についてネガティブな話は聞かれますが、今後もそれは変わらないでしょう」「業績全体、RAN分野全体、今後の見通し等はとても良いと思っていますよ」と語った。

Samsung 5G RAN Efforts Set to Run

Dan Meyer
Dan Meyer Executive Editor

Dan Meyer is Executive Editor at SDxCentral, with a focus on telecom, 5G, radio access networks (RAN), and edge networking. Dan has been covering the telecommunications space for more than 20 years. Prior to SDxCentral, Dan was Editor-In-Chief at RCR Wireless News. You can contact Dan directly at: dmeyer@sdxcentral.com, on Twitter at: @meyer_dan, or on LinkedIn at: dmeyertime.

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Dan Meyer is Executive Editor at SDxCentral, with a focus on telecom, 5G, radio access networks (RAN), and edge networking. Dan has been covering the telecommunications space for more than 20 years. Prior to SDxCentral, Dan was Editor-In-Chief at RCR Wireless News. You can contact Dan directly at: dmeyer@sdxcentral.com, on Twitter at: @meyer_dan, or on LinkedIn at: dmeyertime.

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