通信会社はコアネットワークに集中すべし=ハイパースケーラーに対する優位性
英調査会社オムディア(Omdia)の通信事業者に向けた助言によると、多額のネットワーク投資から利益を得ようと強く望むなら、ネットワークの制御・管理という中核的な強みに集中し、ハイパースケーラーやSIerが支持する多様なアーキテクチャを追い求めない方が良いという。
デジタルエンタープライズサービス担当シニアアナリストのAndreas Olah(アンドレアス・オラー)氏は、通信事業者が新たな機会を追求する際には範囲を限定する必要があると述べている。「(そうしなければ)多数のさまざまなシナリオを抱え、いずれも特定の専門知識が必要で、どれも収益化が難しい、といった状況に陥ることが大いにありうる」ためだとした。
多様なシナリオへの対応に力を入れてきたハイパースケーラーやSIerとの競争もあり、こうしたことはいっそう難しくなっている。それよりもネットワーク事業者としての責任ある地位を主軸として新しい機会に向かうのが良く、さらに提携相手については慎重に選択する必要があると忠告した。
「通信会社が長期的にネットワークサービスの枠を超えた成功を収めていくには堅牢なパートナーエコシステムの構築が不可欠ですが、何らかの市場開拓にハイパースケーラーなどのパートナーと共同で取り組む際には慎重な選択をすべきです」と述べている。
通信事業者によるディスアグリゲーションの効果
かねてからこの姿勢を肝に銘じている通信事業者もある。
米通信大手AT&TのEVP、Chris Sambar(クリス・サンバー)氏は昨年の「Brooklyn 6G Summit」で基調講演に登壇し、同社が10年にわたって「Domain 2.0」への取り組みを続け、強力なプラットフォームを築いたことに触れた。
「私としては、実際、次なるキラーアプリはネットワーク自体だと主張したいのです」と氏。同社ではネットワークリソースのディスアグリゲーションと、ネットワーク投資の収益化を進めているとアピールした。
「ワイヤレス業界ではこれまで――もちろん通信業界でもそうですが――通信ネットワークというものは、素晴らしい働きをするシステムを提携先が提供してくれるもので、中身についてはまったくのブラックボックスでした。ハードウェア、ソフトウェア、アプリケーションがすべて統合されており、援助を求めたい場合には提携先に電話しなくてはならないのが普通でした。『どうもシスコさん、どうもノキアさん、エリクソンさん、お聞きしたいのですが』という具合です」と氏。「当社はこれを分解して、オープンなディスアグリゲーション型ネットワークにしようと取り組んでいるのです」
AT&Tは2020年、ネットワーク機能の75%をSDNで仮想化するという目標を数年がかりで達成した。最近ではコアネットワークのディスアグリゲーションに関する目標を達成している。
これによってAT&TのネットワークはSambar氏の言う「キラーアプリ」となった。ネットワークAPIが公開され、革新的な新しい用途の基盤を担うことが可能になっている。氏が特に言及したのは、AT&Tのネットワーク上に瞬時にセキュリティファイアウォールを立ち上げられるようになったことだ。ぜひとも必要な収益化がこれによって進む可能性もある。
オムディアのOlah氏は、通信事業者が長期的なロードマップを計画する際にはこうしたネットワーク制御を念頭に置く必要があると述べている。たとえば資産の売却をめぐる意思決定だ。短期的な利益を確保できる代わりに、長期的には機会損失になる可能性がある。
「通信会社はコアネットワークで持っている優位性を失わないように用心する必要があります。ハイパースケーラーなどのプレイヤーに対する主要な差別化要因だからです」と氏。一方で、そうした売却による収益をAIやIoT、専門コンサルティングファームなど、今後の布石となる資産に充てることも可能だと述べている。通信事業者が法人顧客重視の姿勢を強めるなか、こうしたことが重要になる可能性はある。
「エッジコンピューティングとIoTもエンタープライズワークロードが増える可能性のある要素です。通信会社はネットワークやクラウド管理と統合できるマネージドソリューションを提供し、この機を逃すまいとしています」と述べている。
Telecom operators need to focus on core network advantage over hyperscalers
電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
X(旧Twitter):@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime
電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
X(旧Twitter):@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime
JOIN NEWSME ニュースレター購読
KCMEの革新的な技術情報を随時発信
5G・IoT・クラウド・セキュリティ・AIなどの注目領域のコンテンツをお届けします。
KCME注目の技術領域に関するテックブログを配信しています。
KCME注目の技術領域に関するテックブログを配信しています。
RELATED ARTICLE 関連記事
-
IT Dan Meyer2024.09.17
Broadcomは「脅迫者」=米AT&Tが酷評
米Broadcomによる買収を受けて、VMwareの…
-
5G Dan Meyer2024.09.09
5G時代へ=中小の通信事業者は備えができているのか
最新の5G機器や、vRAN/オープンRANのようなア…
-
クラウド Dan Meyer2024.08.27
AWS、Azure、Google Cloudのマーケットプレイスが急成長へ
Amazon Web Services(AWS)、M…
-
データセンター Dan Meyer2024.08.22
世界のデータセンター事情=ハイパースケーラーに容量が集中していくのはなぜか
Amazon Web Services(AWS)、M…
HOT TAG 注目タグ
RANKING 閲覧ランキング
-
セキュリティ Nancy Liu
デル、データ侵害を確認=ハッカーが4900万件の顧客データ販売を主張
-
IT Dan Meyer
BroadcomによるVMware製品の価格/ライセンスの変更がどうなったか
-
IT Dan Meyer
Dell、HPE、LenovoはBroadcomがVMwareの顧客の懸念を和らげるのに役立つか?
-
IT Dan Meyer
BroadcomがVMwareパートナープログラムの詳細を発表
-
ネットワーク Sean Michael Kerner
2024年における10のネットワーキング技術予測
-
セキュリティ Tobias Mann
米CitrixはMcAfee社、FireEye社と同じ運命を辿るのか=買収合併の後に
-
セキュリティ Nancy Liu
SASE市場が急成長=第1四半期、首位はZscaler
-
スイッチング技術 Tobias Mann
コパッケージドオプティクスの実用化は何年も先=専門家談
-
IT Dan Meyer
米キーサイトがVIAVIのスパイレント買収に「待った」=15億ドルを提示
-
ネットワーク Sean Michael Kerner
2023年 ITネットワークのトレンドTOP10 現時点