5G
文:Dan Meyer

5Gの経済効果

5Gの経済効果

5Gに向けての前進は、1980年代初頭にさかのぼるセルラー技術の革新という自然な歩みを続けたものだ。しかしながら、5Gが成功すれば経済的影響が大きいために、この進化は非常に重要なものとなっている。

実際の5G展開が始まって1年余りが経過したところだが、これまでのところ、そうしたネットワークは大幅な進展を見せている。業界団体のGSMAは最近、5Gネットワークは24カ国で稼働していると発表した。事業者の中には「全国的な」5Gカバレッジがあるとしているところもある。「全国的な」とは何を意味するのか、国の広さはどの程度なのかを考えなければ素晴らしいことだ。

業界団体「5G Americas」は、5G接続数は昨年末で1770万件以上あり、2019年の最後の3ヶ月間には329%の急増があったとするOmdia社のレポートを引用している。Omdia社はまた、2020年末までに5G接続は9100万件になると予測している。

5Gエコシステムは、まだ初期の段階であるにもかかわらず、すでに経済的な力を持っている。GSMAの同じ報告では、5G技術によって今後15年間で世界経済に2.2兆ドルがプラスされると予測している。また、通信事業者は2020年から2025年の間に1兆ドル以上のモバイル設備投資を行い、そのうちの80%が5Gネットワークに向けられると予想されている。

過去のテクノロジーの進化が主に消費者市場を対象としていた一方で、5Gへの支出や5Gからの収益獲得は、より広範なエンタープライズ領域に広く焦点を当てて行われている。これには、従来の企業ワーカーとそれぞれのモバイル・デバイスを繋ぐだけでなく、すべての電子デバイスを接続することも含まれる。このためには、数十億台になると予想されるコネクテッドデバイス・IoTデバイスに対応できるよう、エッジ展開を広く推進する必要もある。

「5Gとローカルエッジコンピューティングを組み合わせれば、4Gネットワークを凌ぐ信頼性とデータ速度の向上がもたらされ、新たなビジネス価値への道が開かれます」 とABI Research社は最近のレポートで述べ、アジリティとプロセスの最適化、より高レベルでより効率的な品質保証、生産性の向上などから得られる恩恵について言及している。同レポートでは、製造業における5Gセルラー接続の市場が2030年までに110億ドル近くに達する可能性があると予測している。

Juniper Research社は、通信事業者の料金収益のうち、5G IoT接続分が今年の5億2500万ドルから2024年には80億ドルに急増すると予測している。同社は、今後5年間の5G導入の主な成長ドライバーとして、自動車部門とスマートシティ部門を挙げている。

「5G接続のうちIoTが占めるのはわずか5%と予想していますが、これらは新しく有効になる接続ですから、通信事業者はこれを5G投資のリターンを確保するために不可欠なものと考えることでしょう」と、研究著者のAndrew Knighton氏は説明する。

こうした展開のためにハードウェアの大部分を供給するベンダーにもこの機会は恩恵となるが、真に利益を得るのは、5Gの真の能力を活用できるようにプラットフォームを変化させることもできるベンダーだろう。

「Ericsson社、Huawei社、Nokia社、ZTE社といったソリューションプロバイダーにとっての影響は、垂直的な業界の知識や機能(販売、マーケティング、経理など)に関する新しい専門知識のようなビジネスの専門知識、ニッチなユースケースに合わせたソリューション設計とコンサルティング技能などで自社の深い技術的専門知識を補完することにより、自社の「付加価値」を強化しなくてはならないということです」と、ANI Research社のシニアアナリストであるDon Alusha氏は話す。

 

セルを増やす=機会が増える

これらのベンダーは、5G ネットワークを提供するためにはセルサイトの数を大幅に増やす必要があることからも恩恵を受けることになるだろう。これには、従来の屋外ネットワークの強化と、企業が自社のキャンパス環境内で5Gサービスを展開したいという動きが増えていることの両方を支える必要がある、ということがある。

調査会社のOmdia社は、世界の5G無線アクセスネットワーク(RAN)は昨年の40億ドルから2024年には210億ドルへと5倍以上に増加すると予測している。また、企業ベースの5G接続は、昨年の50万件から2024年には1億7500万件に急増すると予測している。

セルサイトを増やす必要性は、5Gの提供に使用される新しい周波数帯によって余儀なくされている。過去の世代のセルラー展開とは異なり、5Gはミリ波(mmWave)周波数帯に大きく依存することになる。これは一般的に 6 GHzを超える周波数資源であり、従来、経済的に商用サービスを支えるには高すぎる周波数だと考えられてきた。伝搬特性が悪く、セルサイトからの信号の到達範囲や、信号が障害物を透過する能力が限定的なためだ。

一方で、このような特性があるために、これらの帯域の周波数の多くが使用されずに残っている。5G技術は他のすべての要素が同じであっても4G LTEと比較してネットワーク速度をわずかに向上させることができるが、5Gの真の利点は多数の無線周波数をサポートできることにある。そして、このような多数の周波数が高速化につながる。とは言え、このような高速化を実現するためには、通信事業者や企業はカバレッジを提供するためにセルサイトとアンテナをより多く配備する必要がある。

 

COVID-19による5G経済への影響

当然ながら、現在進行中のCOVID-19ウイルスの大流行によって、5G経済の予測や計画の多くに大きな影響が出る可能性がある。ウイルスが働く人に社会的影響を及ぼしており、グローバルサプライチェーンは中断され、機器の利用が遅れることになるだろう。

451 Research社が最近実施した調査によると、79%の組織がウイルスの流行によって業務全体に悪影響があると回答している。「組織のサプライチェーン、ITリソース、人的資本、戦略的計画などにおける業務に大きな混乱が生じたことが、報告された悪影響の原因となっています」と同社は述べている。

また、Juniper Research社は、COVID-19ウイルスによって今後9ヶ月間でスマートデバイスベンダーに420億ドルの収益ギャップが発生する可能性があると予測している。

ベンダーや通信事業者はこれまでのところ、ウイルスによる予想される影響についてわずかなコメントを出している。ベンダーや通信事業者のほとんどはまだ状況を「常にチェック」しているところだが、状況が進展していくにつれ何かが分かってくるだろうとの見方をし始めている。

「COVID-19の流行は、サービス業界だけでなく、5Gインフラストラクチャベンダーを含む製造企業にも重大な影響を及ぼしました」と、ABI Research社のCRO(最高研究責任者)であるStuart Carlaw氏は、COVID-19による技術的な損害についての新しいレポートで書いている。「特に、5G無線ユニットとアクティブアンテナのほとんどは中国で製造されているため、サプライチェーンの5G New Radioの部分がとりわけ影響を受けています」

業界標準化グループである3GPPは、メンバーによる会議の実施方法を変更したことで、5G仕様の重要な2件のリリースの採択を延期している。これらのリリースはより高度な5G機能に関連したもので、現在進行中の初期ロールアウトには影響しないものの、企業の計画に影響を与える可能性がある。

「自動化したロボットベースの製造などを支えることができる(超高信頼・低遅延通信の)能力に関心がある人にとっては、商業利用までが遅くなってしまうでしょう」と、IDC社のネットワークインフラストラクチャグループのシニアリサーチアナリストであるPatrick Filkins氏は最近SDxCentralに語っている。

とは言えFilkins氏は、少なくとも次の5G技術アップデート(リリース16)の遅れが5Gの企業導入に大きな影響を与えるとは考えていない。「5Gカバレッジは、多くの地域では広がり始めたところです。そのため、リリース16が遅れなかったとしても、キャリアと協力して5Gトライアルや商用化前の展開を始めたいと考えている多くの企業はカバレッジが開始されるのを待つ必要がありました」と氏は話している。

The 5G Economic Impact

Dan Meyer
Dan Meyer Executive Editor

Dan Meyer is Executive Editor at SDxCentral, with a focus on telecom, 5G, radio access networks (RAN), and edge networking. Dan has been covering the telecommunications space for more than 20 years. Prior to SDxCentral, Dan was Editor-In-Chief at RCR Wireless News. You can contact Dan directly at: dmeyer@sdxcentral.com, on Twitter at: @meyer_dan, or on LinkedIn at: dmeyertime.

Dan Meyer
Dan Meyer Executive Editor

Dan Meyer is Executive Editor at SDxCentral, with a focus on telecom, 5G, radio access networks (RAN), and edge networking. Dan has been covering the telecommunications space for more than 20 years. Prior to SDxCentral, Dan was Editor-In-Chief at RCR Wireless News. You can contact Dan directly at: dmeyer@sdxcentral.com, on Twitter at: @meyer_dan, or on LinkedIn at: dmeyertime.

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