オープンソースのネットワーク技術=2023年の傾向3つ
オープンソースのネットワーク技術は今や、企業、クラウド事業者、通信事業者の先に立って道を誘導するような存在になっているようだ。
オープンソースという指針を示したのは、Linux Foundation(LF)傘下の「LF Networking Fund」(LFN:ネットワーク関連のオープンソース ソフトウェア開発プロジェクトをまとめた運営体)だ。今月バンクーバーで開催された「Open Source Summit」の一部としてミニサミットを開催、業界に呼びかけを行った。LFNに所属するオープンソース ネットワーク関連プロジェクトの数は増え続けており、SDNやクラウド関連、通信事業者による取り組みなどがある。貢献企業はネットワーク業界大手を含む248社に及び、例としてはAT&T、ファーウェイ、シスコ、ベライゾンなどがある。
「LFNには市場の方向性を変えたいと考えている最大手が集まっています」。LFでネットワーク・IoT・エッジ分野担当ゼネラルマネージャーを務めるArpit Joshipura(アルピット・ジョシプラ)氏がミニサミットで語った。
自身の基調講演ではオープンソース ネットワーク技術の動向を概説し、市場としてどこへ向かっているかについての見解をいくつか示している。
オープンソース ネットワーク技術の主な動向について見てみよう。
01ディスアグリゲーション後のリアグリゲーション
氏の説明によると、SDNによるディスアグリゲーションが始まったのはほんの10年ほど前のことだという。ネットワークスタック内のハードウェアとソフトウェアを分離するアプローチだ。ディスアグリゲーションの対象はエッジやアクセスネットワークにまで及んだ。
「どうなったと思いますか? 誰かが全てをまとめなければならなくなりました」と氏。
現在の課題は、企業やクラウド事業者、通信サービス事業者に対して完全なエンドツーエンドのスタックを提供するためには、かつてディスアグリゲーションした様々なネットワーク コンポーネントを今度は全て1つにまとめなければならないと分かってきたことだ。
5Gとオープンソースに関してはLFNがリアグリゲーション計画を考案、「5G Super Blueprints」と名付けたという。同ブループリントでは各プロジェクトのリファレンス スタックを提供、組み合わせて利用することで完全なソリューションを作成可能だとした。
02垂直産業でのオープンソース ネットワークの動向
オープンソースの各領域から生まれつつある完全なソリューション スタックは5G Super Blueprintsだけではない。
氏によると、企業ネットワーク、クラウドネットワーク、アクセスネットワークの複数のユースケースにおいて、ある共通した傾向が強まっているという。特定の垂直産業、特定のユースケースのニーズを満たすスタックを開発しようという傾向だ。現在のところ活発な動きが見られるのは、エネルギー業、商業、製造業などだ。
「私たちがしているのは、市場ごとの重要なユースケースに焦点を絞ることです」
03バラバラだった市場セグメントが統合へ
他に見られるのが市場統合の動きだ。
企業、クラウド事業者、通信事業者はもはや単独で仕事をするという状況にはないとJoshipura氏は述べている。通信事業者は今ではクラウド事業者と連携するのが一般的だ。企業はネットワークに関して通信事業者・クラウド事業者両方と連携しており、企業のニーズに応えるソリューションは双方を1つに統合したタイプのものが増えている。
氏によると、三者はいずれもオープンソースプロジェクトに協力しており、ネットワークのコアからエッジまでをカバーできるサービスの開発に取り組んでいるという。NaaS(ネットワーク・アズ・ア・サービス)のようなサービスもその1つだ。統合が進んだのには様々な理由があるが、1つにはオープンソースのコンテナ オーケストレーション システム「Kubernetes」の存在がある。Kubernetesは企業、クラウド事業者、通信事業者のいずれの環境でもワークロードの実行に使われている。
「現在ではKubernetesという共通の水平レイヤーがあるわけです」と氏。「こうした市場が1つに集まってきた理由の1つです」
04LFNとオープンソース ネットワークの今後
新しいプロジェクトの中でもJoshipura氏が特に注目しているのが、クラウドネイティブ ネットワークの自動化を提供する「Nephio」プロジェクトだ。同プロジェクトはGoogleが開始、ネットワークの完全なサービス オーケストレーション レイヤー構築に寄与する複数のLFNプロジェクトと統合されて現在の形となった。
Joshipura氏はオープンソースに関する動向は正しい方向に向かっているとして、LFNの今後について非常に楽観的な見方を示している。
「大まかな傾向を見ると、2022年が転換点となりました。オープンソースの導入は増えています」と語った。
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