2025年以降、オープンRAN市場は活性化するのか=米通信業界の事例
米衛星通信のエコースター(EchoStar)と米通信大手のAT&T、ベライゾンが最近、オープンRANに関する動きを見せている。ことによると、停滞するオープンRAN市場が活気づくことになるかもしれない。
エコースターとAT&Tは非常に大きな決定をした。苦闘が続いている衛星テレビ事業をプライベートエクイティ(PE)ファームのTPGに売却する。承認されれば、AT&T傘下のDirecTV事業がエコースター傘下のディッシュ・ネットワークの衛星テレビサービス事業を1ドルで買収し、100億ドルの負債を引き受け、合併後の事業体をTPGに純額76億ドルで売却することになる。
エコースターはTPGとの間で他に複数のリファイナンス契約を締結した。70億ドルの債務を削減し、新たに55億ドルの融資を受ける。CEOのHamid Akhavan(ハミド・アカヴァン)氏は、「モバイル事業に投資して、全米の5GオープンRANの構築・強化を続ける」とした。同社では財政に時限爆弾を抱え、期限が迫っていることが最大の懸念事項となっていたが、今回の契約で解消した。
ネットワーク投資という発言に関連した動きとして、同社は連邦通信委員会(FCC)に対して周波数ライセンスとカバレッジ要件に関する変更を申請しており、最近になって承認が下りている。保有している周波数ライセンスの一部について、カバレッジ要件を満たすのに有利な条件を確保した。
エコースターの革新的なオープンRAN構築には、これまでに数十億ドルの資金が使われている。以前には、構築完了までに最大で100億ドルがかかるとCharlie Ergen(チャーリー・アーゲン)会長が述べている。とはいえ、このところは希少な資本を温存するために支出計画を削減していた。
今回は新たに融資を確保し、一部をネットワーク投資に充てると経営幹部が発言している。オープンRANへの投資を拡大する態勢だ。同社のネットワークコンポーネントはAWSやサムスン、シスコ、デル・テクノロジーズ、ノキア、VMware、マベニア、オラクルなど数十社が提供しており、こうしたベンダーが恩恵を受ける可能性もある。
AT&TにもDirecTV事業を手放せるという利点がある。
DirecTVはAT&Tが2015年に670億ドル(負債を含む)で買収した事業だが、その後は価値を下げ続け、同社の財務に大きな打撃となっていた。AT&Tは2021年早期に事業の再集中を実施しており、この時に同事業の少数株主持分をTPGに売却している。
AT&Tは現在、固定/無線ネットワーク事業に集中し、光回線への投資、オープンRANの導入に向けた大規模な投資を進めている。直近の決算説明会では、CFO(最高財務責任者)のPascal Desroches(パスカル・デロッシュ)氏が通年の設備投資予測について説明し、最大220億ドルに達する見込みだと述べている。「今年後半は無線ネットワークのモダナイゼーションを加速させることから、支出が増大します」と語った。
最近では、テキサス州ダラス南部にある商用5Gネットワークの拠点で、エリクソンが提供するクラウドRANの導入を開始した。保有するCバンドの周波数帯の1つをクラウドRANで使用するための移行を実施し、現在商用トラフィックを支えている。
AT&Tとエリクソンは商用クラウドRANの通話試験を完了しており、「サードパーティのベンダーが将来、オープンRANでこの構成を使用できるようになります」とも述べている。AT&Tは、2026年末までに無線ネットワークトラフィックの70%をオープンRANで運ぶという目標を掲げている。
ベライゾンでオープンRAN推進派のCTOが誕生
ベライゾンの動きはエコースターやAT&Tと比べると目立たないが、影響は両社より大きいものになる可能性もある。
同社はCTO兼戦略・テクノロジーイネーブルメント担当シニアバイスプレジデントにSantiago Tenorio(サンティアゴ・テノリオ)氏を任命した。28日付で就任する。ポジションとしては、エグゼクティブバイスプレジデント兼グローバルネットワーク&テクノロジー担当プレジデントのJoe Russo(ジョー・ルッソ)氏の直属に当たる。
Tenorio氏は欧州の通信大手ボーダフォンに25年間勤め、最近ではオープンRANやクラウドネットワーキング、ネットワークAPIといった野心的な取り組みを指揮していた。オープン技術、クラウド技術を基盤とするこうした構想を長年支持してきたエグゼクティブだ。
氏の意見が加わることで、ベライゾンのオープンRANに関する取り組みも加速する可能性がある。
ベライゾンはこれまでのところ、オープンRAN機器の展開についてはAT&Tよりも慎重な姿勢を保っている。Russo氏は昨年、SDxCentralの取材に応じ、オープンRANのエコシステムがもっと成熟するのを待っているところだと話していた。
「今の時点では――いつも同じようにお話ししているのですが――当社は多くの試験をしていますし、どういう風になるかについてはとても関心を持っています。ですが、今のところ、大規模な検討はしていません」と氏。「どこかの時点でそうならないということではないのですが、この分野に関してはまだ長い道のりがあると思いますし、どのように進展していくのかを見ていこうと思っています」
また、オープンRANについては、相互運用性やソフトウェア、拡張性とパフォーマンスの確保などに相変わらず大きな課題が残っていると語った。
「ベライゾンのネットワークでは高い性能基準を設定しています。音声やデータの通信品質、ネットワークへの接続や接続の維持、必要な機能を問題なく実行できるかについても、それぞれに高い基準があるのです。ベライゾンのネットワークで新しく何かを機能させようとすると、たいていの場合、これが高いハードルになります」と氏。「こうした水準を満たすのは簡単なことではありません。(中略)まだ早いのです。関心がないということではなく、どうなっていくのかはもちろん見ていきます」
二の足を踏む一方で、同社は2月にはO-RANアライアンスの仕様に準拠したオープンRAN「対応」無線機を13万台以上導入したと発表している。Massive MIMOアンテナを搭載した無線機だ。
「ベライゾンはO-RAN技術を全面的に支持し、十全な運用を可能とするO-RANアーキテクチャの商用化に注力しています」。テクノロジープランニング担当シニアバイスプレジデントのAdam Koeppe(アダム・ケッペ)氏が述べている。「O-RAN標準の開発や、同標準に準拠した機器を実際にRANに導入する取り組みを進めています。業界の前進に貢献し、ベライゾンに最先端の技術を期待されているお客様に対して、さまざまな確かなメリットをもたらすことができるでしょう」
オープンRAN市場では現在、こうした動きが起きている。同市場は何年ものあいだ停滞が続いた後に、勢いを増し始めようかというところだ。
米調査会社デローログループは最近、2028年までに世界のRAN市場の25%超をオープンRAN機器市場が占めるようになると予測している。すでに早期から導入が進んでいた中国を除いた場合の予測は40%にもなる。北米市場が成長を主導するとした。
英調査会社アナリシスメイソンの長期予測はさらに堅調だ。2030年までにベンダー収益の70%をオープンRANとvRANが占めるようになると述べている。
Verizon, AT&T, EchoStar moves could propel open RAN into 2025 and beyond
電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
X(旧Twitter):@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime
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