5G
文:Dan Meyer

米ベライゾン、プライベート5G事業でノキア製品の認証を進める

米ベライゾン、プライベート5G事業でノキア製品の認証を進める

米ベライゾン・ビジネスがノキアのプライベートネットワークシステム「Digital Automation Cloud」(NDAC)の認証を進めている。ベライゾンの免許周波数帯を使用したプライベート5Gソリューションで利用できるシステムの一覧に加わる予定だ。

ベライゾン・ビジネスはNDACに対し、プライベート5Gソリューションで使用可能であると認証する作業の第1段階を完了した。ベライゾンが保有する広範な周波数帯を利用可能であるという、重要な内容が含まれている。

完全な認証を取得すれば、ベライゾンの商用ラインナップに追加され、ベライゾンがイノベーション・ラボで提供しているエンタープライズ顧客のトライアルに使用できるようになる。

ノキアのNDACは、製造、物流、港湾、空港、公益事業、鉱業、農業などの産業分野で求められているプライベート無線接続やOT技術を提供するソリューションだ。ノキアは昨年、Lab as a Serviceで提供するインフラに同プラットフォームを追加、デバイスメーカーや企業がNDACや「Nokia Modular Private Wireless」のネットワーク上で相互接続性テストを実施できるようになった。

ノキアのエンタープライズ・キャンパス・エッジ事業担当バイスプレジデント、David de Lancellotti(ダヴィッド・デ・ランチェロッティ)氏の説明によると、ベライゾンによるNDACの利用はこれまで、主に「欧州と米国の、専用周波数帯や免許不要帯を利用するケース」に限られていたという。CBRS(市民ブロードバンド無線サービス)のPAL(優先アクセス・ライセンス)の帯域を使用する場合もある。

「このたび提携を拡大し、プライベート無線とデジタル化を実現する当社のNDACソリューションを北米の免許周波数帯を使用する実装にもご活用いただくことで、5Gの普及とインダストリー4.0への移行を促進できることを嬉しく思います」と氏。「この分野はノキアにとって戦略的な成長分野です。ベライゾンのようなGTMパートナーを得られたことは、当社が成功を目指すうえで極めて重要です」

ベライゾンはプライベート5Gの成長に期待

ベライゾンにとっても、プライベートネットワークのプランにノキアという新たな選択肢が加わることになる。これまではノキアの競合、エリクソンの機器やサービスに大きく依存していた。つい先日に獲得した契約でも、エリクソンがプライベートネットワークを提供することになっている。ニューヨーク州レイクウッドにあるカミンズのエンジン工場に、ニュートラルホストネットワークとプライベート5Gネットワークを提供するというものだ。

この案件は、ベライゾンが新たに提供を開始した製品「Verizon Neutral Host Network」の最初の利用事例となる。オンプレミスの集中ホストとして機能し、ベライゾンやその他の事業者のセルラー接続を支えるものだ。また、ビジネスクリティカルな用途向けに、同社の免許帯を使用したプライベート5Gネットワークを導入する。例えば、自律移動ロボット(AMR)、拡張現実(AR)や仮想現実(VR)を利用した研修やトラブルシューティング、センサーモニタリング、オンサイトの独自アプリケーションで使用する。

提供するネットワークは敷地内の工業用スペース100万平方フィート(約9.3万平方メートル)と屋外スペース100万平方フィートをカバーし、1日あたり約500台の大型トラックエンジンを生産する1,500人の現場従業員を支える予定となっている。

ベライゾン・ビジネスの幹部は、広大なプライベートネットワーク市場で同社が差別化を図るには、保有している周波数資産が鍵になると繰り返し述べている。

「CBRSから免許帯に移行されるお客様が増えているのではないかと思います。この点に関しては、まさに当社独自の、他社にはない体験を提供できる分野だと考えています。国境の向こう側や、お客様が事業を展開されているエリアの外側にあるマクロなネットワーク、さらにその先へと、データを運ぶことができるためです」
グローバルソリューション担当シニアバイスプレジデントのScott Lawrence(スコット・ローレンス)氏がSDxCentralの取材で語った。「そこにSAコアやスライシングといった技術を重ね、エッジコンピューティングやスライシングを利用した独自のユースケースをさらに推し進めていくことも可能です。CBRSを使用すると、ベライゾンが提供できる価値を実現するうえで、一定の制約がかかります。当社の免許帯を使用してこそ真の価値を提供できるのです」

ベライゾンは(市場での普及には課題を抱えているものの)、同分野の進展状況や、他のユースケースの成長にもつながる点について、引き続きアピールを続けている。

「5Gのユースケースに関しては、プライベートネットワークのお話をする機会が増えています。件数は多いものの、売上としてはまだかなり小規模です」
直近の決算説明会でHans Vestberg(ハンス・ベストベリ)CEOが投資家に話している。「企業様のプライベートネットワークや周波数管理の基盤を構築できれば、いずれは営業部隊がこれを大いに活用し、モバイルエッジコンピューティングの提供につなげることもできるでしょう」

コンシューマー部門CEOのSowmyanarayan Sampath(ソウミャナラーヤン・サンパス)氏は3月、ドイツ銀行の第32回メディア・インターネット・テレコム・カンファレンスに登壇、ベライゾンでは5Gネットワークの更新を進めていることから、プライベートネットワークソリューションへの関心が実際に高まっていると語った。

「以前の契約数は月に1、2件でした」と氏。「今では毎月の契約数が大幅に増えており、一部の契約は市場で大きな注目を集めています。プライベート無線分野は成長が続いています」

ノキア、プライベートネットワーク基盤を拡大

今回の認証はノキアにとっても大きな意味がある。同社はプライベートネットワーク分野の主要な機器・サービスプロバイダーと目されており、プライベート無線事業では北米で167社、世界で730社を超える顧客を抱えている。直近の決算説明会では、Pekka Lundmark(ペッカ・ルンドマルク)CEOが投資家に対し、同事業は「2桁成長を続けている」と語った。

近年では、NDACの追加ソリューションとしてエンタープライズ接続に特化したプラットフォーム「MX Industrial Edge」(MXIE)をリリース、同事業をさらに推進した。MXIEはコンピューティング、ストレージ、ネットワーク機能、アプリケーション管理機能を備えており、基本的にプライベートネットワークを含めたOTサービスを管理するオンプレミスのエッジプラットフォームとして機能する。

「当社が目指しているのは、キャンパス内に複数のエッジを持つのではなく、1つのエッジにまとめて各種の新しいユースケースを推進することです」
ノキアのクラウド&ネットワークサービス部門プレジデント、Raghav Sahgal(ラガブ・セーガル)氏が最近、MXIEについてのSDxCentralのインタビューで話している。「では、その先のファーエッジのデバイスに実際にどうアクセスするかですが――ファーエッジとエッジでそれぞれ実行できる処理があります――そのようなアーキテクチャをどう確立するかですが、当社では「MX Grid」という製品を使って行います」

米調査会社Dell’Oro Group(デローログループ)の最新レポートでは、プライベートRAN市場の主要プレイヤーにノキアを挙げている。同市場の向こう5年間のCAGR(年平均成長率)予測は21%、2028年の市場規模は20億ドルに達するとしている。

Verizon boosts private 5G business with Nokia certification

Dan Meyer
Dan Meyer Executive Editor

電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
X(旧Twitter):@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime

Dan Meyer
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