Linux Foundationが見る、通信業界に足りないもの=オープンネットワークについて

通信事業者は、すでに展開済みの高価な資産をもっとうまく、クラウド事業者のように管理したいと考えている。模倣すべきクラウド業界との間をつなぐ、重要なコネクターの役割を自任しているのが、オープンソースコミュニティだ。橋渡しは重要な段階に進みつつある。
英調査会社アナリシス・メイソン(Analysys Mason)は最近発表したレポートで、通信事業者が実装についての課題を抱えていることに光を当てた。5Gに莫大な投資をしていながら、もっと大きな収益を上げることができていない要因になっている可能性があるという。Tier1通信事業者50社を対象に行った調査の結果、回答企業のほぼ全てが事業の存続にオープンネットワークが不可欠だと考えていることがわかった一方で、オープンネットワーク戦略をすでに策定しているという回答は10分の2にとどまった。
「当社の見るところでは、5G、あるいは6Gネットワークに関して、さらにディスアグリゲーションが進んだ、さらにオープンなインターフェイスと、さらに水平型のクラウドを構築するということに関しては、通信事業者の関心は非常に高いものがあります。関心は高く、理解もされています」。リサーチディレクターのGorkem Yigit(ギョルケム・イート)氏が、あるインタビューで話している。「ですが、今回の調査でわかったのは、こうした目標を実現するのには、まだ苦戦されているということでした」
なかでも要点をついたレポート内容の1つが、通信事業者は従来の通信エコシステムの枠に収まらない業界団体や企業等とも、もっと積極的に連携していく必要があるという点だ。
「主に、3GPPやTMForumといった伝統的な取り組みや、伝統的な通信の考え方を扱う場には、高いレベルで関与しています」と氏。「ですが、もっとオープンなネットワークですとか、オープンなクラウドだとか、そういったものに焦点を当てた取り組みとなると、状況は非常に異なるようです」
Linux Foundationが通信事業者と協力―「オープンソースネットワーキング」実現へ
こうした課題の克服を手助けしようとしている団体はいくつかあるが、その中の1つがLinux Foundationだ。ネットワーキングに関する造詣や、オープンソースコミュニティとの関係が深いことを生かそうとしている。
同団体でネットワーキング/IoT/エッジ担当ゼネラルマネージャーを務めるArpit Joshipura(アルピット・ジョシプラ)氏は、オープンネットワークのエコシステムを促進していくうえで、通信事業者が非伝統的な通信関連団体にもっと積極的に参加していくことが必要だとする同レポートの見方と同じ見解を述べている。
「オープン化への取り組みについて、私たちがお伝えしたいのは、次の段階では、これまでに取り組んできたことだけでなく、一致団結してオープンソースと協力できるかが大事になるということです」と氏。「つまり、協力して技術革新を進め、展開をいっそうスピードアップできるかということです。というのも、私はコードを見られますし、共同開発もしているわけですが、こうしたソフトウェアはいずれも差別化要素のないのもので、ネットワークのどの部分をとっても、こうしたコードがどうやら60%程度使われているようなのです」
つまり、ある機器がどのベンダーのものかを気にしなくてよいのだという。「エリクソンか、シスコか、ジュニパーか。誰も気にしないということです」
最近では、オープンAPIに関する構想が進められており、こうした前進の一端を見ることができる。Linux Foundationが業界団体GSMAと共同で立ち上げた、「Camaraプロジェクト」を基にした取り組みだ。Joshipura氏の説明によると、同プロジェクトは次の段階に向けて進捗している。氏が言うところの「オープンソースネットワーキング」の段階だ。
この方面については、一部の先進的な通信事業者が主導している。クラウドエコシステムで実現されているような展開スピードと柔軟性を得ることが目的だ。
「彼らはオープンソースの正しい使い方を明確にしようと取り組んでおり、ベンダーを通じて、あるいは別の形で貢献されています。完全に、あるいは部分的にオープンにしたい箇所があるわけですが、そういった部分が焦点です。私たちは導入はなされると考えていますが、そうした自信をさらに深めてくれる取り組みだと思います」
通信AIのオープン化はあるのか
Joshipura氏はさらに、もっと通信領域に特化した、AIアーキテクチャを開発する必要があると指摘している。現在の大規模言語モデル(LLM)のアーキテクチャを、多様な通信環境で機能するように拡張するというものだ。
「あらゆるLLMは、実行も学習もAI実装も、企業であれ個人であれ、クラウドで行うものという風になっています。中央のデータセンターに送られるということです。エッジ用途やIoTにはそのままでは適用できません」と氏。「通信領域には適していないということになるのですが、この分野には、低遅延を実現するとか、AIや(機械)学習を活用できる機会がもちろんあるわけです。そうしたアーキテクチャ、そうした取り組みはおそらく、私たちが現在注目している最大のテーマだといえるでしょう」
Joshipura氏は、こうした取り組みの例として、「プライバシーを犠牲にすることなく」ネットワークの訓練に使用できる、通信データセットの開発を挙げている。例えば、一部のデータを非表示にしながらも、モデルの学習を可能にするというプロジェクトがある。
「するとどうでしょう、これを活用すれば、領域特化型のデータセットを取得して、誰もが学習に使えるソリューションとして提供していただくことが可能になります。というのも、競争上の差別化要因になるようなものではないからです」
氏によると、Linux Foundationでは他にも、「Paragliderプロジェクト」でマルチクラウド環境のネットワークの複雑さを軽減する取り組みを、「Cloud Native Telecom Initiative」(CNTI)でクラウドネイティブへの移行を支援する取り組みをそれぞれ進めているという。
「私たちには、ベンダーの展開を加速させたり、通信サービスプロバイダーのソリューションを促進したりするために、できることがあると考えています」と語った。
https://www.sdxcentral.com/articles/interview/where-does-the-linux-foundation-see-telecom-open-network-gaps/2024/07/

気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
Twitter:@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime

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