Wi-Fiの重要性=小売業者のネットワーク投資は経済的成功とイコール
大手ネットワーク機器ベンダーの米Extreme Networks(エクストリームネットワークス)が発表した最新の調査報告で、小売業各社が消費者の行動や期待値の変化に迅速に応えていくため、店舗Wi-Fiのアップグレードを至急対応すべき事項と位置付けていることが分かった。一方で、小売業者のITチームの中には、店舗内ネットワークを標準レベルに引き上げるだけでもやるべきことが多々あるというところも多い。
「The World is Connected: The Store Must Be Too」(世界はつながっている:店舗もそうでなければならない)と題した同レポートの調査は、米調査会社Retail Systems Research(RSR)へ依頼、世界の主要小売企業を対象に実施した。Wi-Fiが顧客体験の提供や業務で果たしている役割についての質問項目では、114社から回答があった。同調査では、実店舗に堅牢なワイヤレス接続を備えることがきわめて重要であり、その重要性は増し続けていることを示す、重要な傾向がいくつか明らかになっている。
主な調査結果には以下のようなものがある。
・小売業者の92%が、在庫管理や価格設定などの店舗運営で、消費者向けモバイルデバイスの利用を増やしたいと考えている。
・小売業者の75%が、ビジネスニーズに迅速に対応するためには、自社のネットワークへの帯域幅やアクセスポイントの追加を速やかに実行できなくてはならないという回答を選んでいる。
・自社の現在のネットワークを「最先端」とする回答は32%にとどまった。57%は「十分に良好」と評価している。
Wi-Fiが小売業者にとって「勝者の」プランである理由
同レポートではWi-Fiの利用について、店内業務と顧客体験の両面から調査している。顧客向けWi-Fiが顧客体験にどのような影響を与えているか、店舗用Wi-Fiを仮想倉庫や紛失防止、電子棚札、デジタルディスプレイ、温度監視、在庫管理などの業務にどのように利用しているかについて質問した。
Extreme NetworksのCOO(最高執行責任者)、Norman Rice(ノーマン・ライス)氏はSDxCentralの取材に対し、調査結果の中でも驚いたものの1つが、前年比成長率が平均を上回る「勝ち組」と、回答者全体との差異が非常にはっきりしていたことだと話している。尚、業界平均の店舗/チャネル売上高成長率は7%となっている。
「ネットワークを戦略的資産と位置づけ、その活用に努めている企業が、金銭的にも利益を得ていることがよく分かる結果になりました」
たとえば、さまざまな店舗体験について、Wi-Fiの使用による恩恵があるかを尋ねたところ、売上高が平均的または低迷しているグループでは、顧客からの注文の処理や返品処理に効果があるという回答は26%にとどまった。この数字が「勝ち組」では63%に跳ね上がる。
あまり一般的でない項目についても見てみよう。位置情報や行動の追跡について、「勝ち組」の70%が重要だと回答する一方、「勝ち組」以外ではわずか43%となっている。
「こうした結果が明確に物語っていることがあります――強力な販売パターンを持っている小売業者はテクノロジーに対する見方が他とは異なり、成功を促進するためにテクノロジーをより重視しているのです」
「十分に良好」なWi-Fiが実際には十分ではないケース
同調査では、回答者の大半(57%)が自社の既存のWi-Fi環境は「十分に良好」だと回答している。
Rice氏によれば、「十分に良好」とは、要はWi-Fiが必要なときに使えるという意味だという。顧客がスマートフォンで商品の在庫があるかを調べることはおおむね可能だし、店員がWi-Fiに接続して電子棚札を更新する分には恐らく安心して使えると説明した。
「ですが、小売企業としては、それ以外の多くの機能性を見逃しているということでもあるでしょう」と氏。「コネクティビティや帯域幅がもっとあれば、セルフサービスのキオスク端末などを設置できるだけでなく、Wi-Fiアナリティクスを利用して、顧客の移動パターンが通常どうなっているか、店内のどこに最も長く滞在することが多いかなどを確認することもできます」
高速で新しいWi-Fi規格が重要である理由
Rice氏の見解では、小売業者が最高の体験を提供するためには、最新のWi-Fi規格を採用することがきわめて重要だという。
「もし未だにWi-Fi 5のネットワークを使用しているとしたら、iPhone 7を使っているようなものです――ほとんどの場合、まだ使えるでしょうが、今挙げたような体験や機能を手に入れることはできないでしょう」
顧客が店内で商品を検索したり、さっと価格を比較したりといった基本的な用途に関しては、最新のWi-Fi規格を導入しても大きな違いは生まれないかもしれない。とはいえ、店舗の運営となると話は別だ。
氏によると、Wi-Fi 6/6Eや間もなく登場するWi-Fi 7では利用可能な帯域幅やセキュリティが強化されており、資産管理/追跡や売場内デジタルディスプレイの設置、食品・医薬品の腐敗を防ぐための温度監視、セルフレジの導入といった、高性能な接続を必要とする店舗内テクノロジーの活用が可能になるという。
調査回答者の75%は、事業に求められるスピードで帯域幅やアクセスポイントを追加していくことが最大の課題の1つになっていると答えている。Rice氏が言うには、Wi-Fi 6/6Eではめったに見られない問題だ。
Wi-Fiの課題を克服し、小売店のネットワークを改善するには
ネットワークの改善が進まない要因として回答者が挙げたものの上位3つは、「ネットワーク改善の根拠となる具体的なビジネスケースがない」「技術の変化が速すぎる」「そのような規模のプロジェクトを管理するスキルがない/他に優先したい事項が多い」となっている。
小売業者に適したビジネスケースの作成支援について、Extreme Networksでは、大手小売企業と協業、適切なネットワークがあれば運営を多面的に強化できることを示し、各社のビジネスケース作成を支援していると氏は言う。Wi-Fi改善のビジネスケースとしては、自動化/AI/アナリティクスの強化などがある。業務の効率化や間接費の削減、魅力的でパーソナライズされた顧客体験を創出し、収益機会を増やすことが可能だ。
ネットワーク技術の変化については、ソフトウェアの変化が速い一方で、ハードウェアについては、一度柔軟性のある次世代ハードウェアに投資すれば、当分は再びアップグレードする必要がなくなる可能性が高いという。たとえば、6GHz帯を使用する新世代のWi-Fi規格(6E/7)が注目され始め、徐々に顧客による運用が始まっているとした。そうしたアクセスポイントは向こう数年間そのまま使用でき、新しいユースケースにも対応できる。
「スキル不足と優先順位の件については、驚くべき結果ではありません」と氏。「小売業に限らず、自社でネットワーク管理をやりたくなさそうなお客様は増えています」
そこで役立つのがクラウド管理プラットフォームだ。複数の店舗や地域に広がるネットワークの全体を1か所から簡単に管理できる。
「今回の調査で、ネットワークへの投資と経済的な成功の間に実際に関連があることがわかりました」と氏。「実際、消費者は新しい体験を求めており、小売業者としては、それに応え続けていくことが(顧客との)関係を維持するための要件の1つになっていくでしょう」
Wi-Fi matters – network investments equal financial success for retailers
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