クラウド市場の業績傾向は変わらず=AIがマンネリを打破するか
クラウドサービス市場はITエコシステムに本質的な変化をもたらす「戦略的にきわめて重要な」分野だが、だからといって、市場の業績がいつもと大差のない「やや退屈」な傾向になるのを避けられるものでもない。米調査会社Synergy Research Group(SRG)のアナリスト、John Dinsdale(ジョン・ディンズデール)氏が米SDxCentralの取材で語った。
SRGの市場分析レポートによると、同市場は3四半期連続で前年同期比100億ドル(約1兆4,600億円)の成長を達成した。安定成長が続く一方、大数の法則が働くとともに、市場成長率は落ちている。「市場規模が100億ドルずつ拡大していけば、前年比成長率は必然的に低下することになります。2022年第4四半期に20%だったものが、2023年第1四半期は19%、2023年第2四半期には18%になりました」
とはいえ、追い風もいくらか吹いており、この傾向が変わる可能性はあるという。中国のクラウド市場が「平常に近い状態」に戻る可能性があることや、マクロ経済環境が緩やかに回復していること、「多くの企業が以前のクラウド利用を見直し、最適化したうえで、生成AIを含む新たなワークロードの作成を再び始めようとしている」こと等だ。
AWS、クラウド事業の2桁成長をアピール
Amazonの第2四半期決算説明会で、Andy Jassy(アンディ・ジャシー)CEOが述べたところによると、Amazon Web Services(AWS)の顧客動向としては、引き続きクラウド利用の最適化によるコスト削減が進められているほか、大きな傾向として「イノベーションを推進し、クラウドに新たなワークロードを導入する」ことが重視されているという。
「その結果、第2四半期のAWSは(前年同期比12%という)安定した売上高成長率を見せました」「2桁成長というのは、新規のお客様や新たなワークロードを多数獲得しなければ達成できるものではありません」と指摘した。
SRGによれば、AWSは第2四半期、クラウド市場で32~34%のシェアを維持している。競合するGoogle Cloud、Microsoftの市場シェアはそれぞれ22%、11%となった、3社で世界市場全体の65%を占めている。
Amazonの経営陣は市場首位を維持できた理由として「多様なストレージ、データベース、アナリティクス、データ管理サービス」を挙げている。AIワークロード獲得への自信をアピールする中でのことだった。「思い出してください。AIの活用においても中心となるのはデータです」とJassy氏は話している。「人々が望むのはデータに対して生成AIモデルを適用することであって、その逆ではありません」
とはいえ、AIの導入がピークを迎える日はまだ遠い。「生成AIが爆発的に普及する可能性について人々が語るとき――当社を含め、だれもがわくわくする内容ですが――現在はごく初期の段階にあるという思いを抱きます」とJassy氏。「マラソンで言えば、初めの数歩を踏み出したというところです。…(中略)…大きな変革になるでしょうし、私たちが見たことのある顧客体験はほとんど根こそぎ変貌してしまうものと考えていますが、段階としてはまだ本当に早期だと思います」と忠告した。
ハイパースケーラーがAIに寄せる大きな期待
GoogleとMicrosoftは第2四半期、いずれも引き続きクラウド事業を成長させている。Google Cloudの売上高は前年同期比28%増、Microsoft Azureおよびラウドサービスの売上高は26%増となった。
MicrosoftのAmy Hood(エイミー・フッド)CFOによると、売上高の伸びのうち、1%がAIサービスによるものだという。また、ハイパフォーマンス・コンピューティングの需要が高まる中で、「現在最も注意を払うべきは、需要曲線に積極果敢に対応し、今後の変化や成長にフォーカスすること」だと投資家に語った。この点について、Microsoftはインフラおよび関連AIの容量を増強しつつ、「商用クラウド全体の需要」に対応していく計画だ。
GoogleのSundar Pichai(サンダー・ピチャイ)CEOも、自社のクラウド事業のパイプラインに関してMicrosoftと似た見解を述べている。「お客様のAIへの関心は間違いなく高い」として、「クラウド分野全体でエキサイティングな時期」が来ていると話した。
AIは今後、Googleの既存のクラウドサービスと並ぶ収益ドライバーになっていくとPichai氏は予測している。「長期的な視点で考えると、AIというビジネスチャンスによって当社のTAM(total addressable market:獲得可能な最大市場規模)は拡大し、新たな顧客を獲得することも可能になると考えています」と語った。
SDxCentral のレポーター。
データセンターのテクノロジーとビジネスケース、環境持続可能性、クラウドネイティブのエコシステムを担当している。
愛犬コビーとデンバーに住んでおり、一緒に世界一の散歩をする。
連絡先: echervek@sdxcentral.com
Twitter: @emmachervek
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