AT&Tの5G RedCapローンチがIoTに火をつける?
AT&Tは、将来を見据えたIoTユースケースを想定し、IoT市場の成長を促進すると期待される5G容量削減(RedCap)技術へのアクセスを、同社ネットワークの一部で商用化した。これによりIoT市場の成長が促進されることが見込まれる。
AT&Tのデバイスアーキテクチャ担当AVPであるJason Sikes(ジェイソン・サイクス)氏は、SDxCentralとのインタビューで、5G RedCapネットワークが当初テキサス州のダラスと「西海岸の他のいくつかの地域」で利用可能であり、最終的には全国規模での展開を目指していると説明した。この商業的な推進には、ネットワークやデバイスのエコシステム全体の統合が含まれる。
「私たちが考える方法は、エンドツーエンドで考えることです」と氏。「つまり、デバイス、チップセット、RAN(無線アクセスネットワーク)、コア、プロビジョニングの方法、システムでのセットアップ方法など、あらゆる側面を把握する必要があります。市場に新しい技術を導入する際には、これらすべてのことを考慮しなければなりません」
初期導入はAT&Tの現在のRANインフラストラクチャで実行されており、最終的にはこのサポートを同社の野心的なオープンRANアーキテクチャに移行する計画だ。
この商業化されたサービスの開始にあたっては、RedCapサービスに特化した周波数サポートも必要となった。AT&Tは当初850MHzの周波数分割複信(FDD)周波数帯を使用しサービスを提供、「拡大に伴い必要に応じて追加プランを加えていきます」と氏は述べた。
FDD周波数帯は通常チャネル容量をアップリンクとダウンリンクに均等に分割するのに対し、時分割複信(TDD)技術は、事業者は必要に応じて周波数チャネルのアップリンクとダウンリンクの容量を調整することができる。
5GにおけるRedCapの位置づけ
RedCapの仕様は5G仕様の一部としてリリースされたため、5Gネットワークと相互運用性が可能である。基本的には、4G LTEで使用されるナローバンドIoT(Narrowband Internet Of Things:NB-IOT)やLTE-M仕様の5Gバージョンとして設計された。
RedCapの仕様自体は、サブ6GHz帯では20MHz,ミリ波(mmWave)周波数帯では100 MHzに周波数帯の使用を制限している。これにより、1つの送信機と1つまたは2つの受信機を持つ、よりシンプルで小型のアンテナ設計が可能になる。これはスマートフォンのようなフル機能の5G新無線(NR)デバイスに必要な、より複雑な複数入力・複数出力(MIMO)アンテナ設計とは異なる。このため、RedCapは電力要件を低減でき、電力制約があることの多いエッジ・デバイスにより適用しやすくなる。
AT&TのRedCap技術責任者であるRob Holden(ロブ・ホールデン)氏は、RedCapサービスがキャリアの既存のLTE-Mネットワークを補完し、顧客にとってより高性能なエッジオプションとして機能すると述べた。また、特定のIoTやエッジの分野に対する長期的なロードマップを提供する。
「アラームパネルやセキュリティPOSタイプの低帯域幅を必要とするソリューション、産業用ルーターなどの分野が、RedCapの使用が見込まれる表的な例だと思います」とHolden氏は述べ、さらに、ボディカメラや「IT分野におけるいくつかの新しいソリューション」でも使用例が考えられると付け加えた。
これは、RedCapデバイスを特定のユースケースに統合できるプライベート5Gネットワーク空間にも応用できる可能性がある。
「RedCapはプライベートネットワークでの使用に適しています。セキュリティやルートタイプのアプリケーションなどが挙げられます。これらのアプリケーションはプライベートネットワーク環境で動作する必要があるためです。」と氏。「その観点からは理にかなっています」
アナリスト企業はまた、産業用ワイヤレスセンサー、ウェアラブル、スマートグリッド、固定無線アクセス(FWA)サービスに関連するユースケースを指摘している。
「RedCapはすべてのIoTアプリケーションに対応するわけではありませんが、通信事業者のIoTサービスを拡充し、新たな市場セグメントをサポートする可能性があるため、貴重な機会となります」と、アナリシス・メイソンのリサーチアナリスト、Stephen Burton(スティーブン・バートン)氏は最近発表した報告書で述べた。
5G RedCapはIoTを推進できるか
AT&Tは昨年、RedCapの商用テストを初めて発表した。 このテストには、同社の5Gスタンドアロン(SA)ネットワークコアとノキアのAirScaleプラットフォームを動作させたコアに接続するメディアテックのRedCapプラットフォームが使用され、ラボ環境と現場でのデータ通信が含まれていた。
AT&Tのライバルである米ベライゾンもすぐに追随し、メディアテックとエリクソンと共同で、ベライゾンの5G SAコアでエリクソンのRedCapソフトウェアとメディアテックのRedCapテストプラットフォームを使用したデータセッションと音声通話を実施した。このセッションは、ベライゾンのCバンド(3.7GHzー3.98GHz)の時分割複信(TDD)及び850MHzの周波数分割複信(FDD)の周波数帯を使用し、5GSAコアの本番環境で実行された。
調査会社はRedCapに対する評価を高めており、この技術が薄暗くなりつつあるIoT分野で明るい話題であると指摘している。例えば、米ABIリサーチは最近、IoTモジュールの成長が前年と比べて2023年に5%減少したと報告した。
「5G RedCapは、IoT分野における5Gデバイスの普及を促進する機会を生み出しています」と米ABIリサーチのイネーブリングプラットフォーム担当副社長(VP)、Dan Shey(ダン・シェイ)氏はレポートで述べている。「5Gサプライヤーコミュニティの算定によれば、低遅延、位置情報のきめ細やかさ、将来的なLTE終了への対策などの5G機能が、より多くの顧客にこれらの高収益製品への投資を促すでしょう」
米調査会社Dell’Oro Groupのリサーチディレクター、Dave Bolan(デイブ・ボラン)氏は、今年初めに、RedCap採用の増加は、マルチアクセス・エッジ・コンピューティング(MEC)プラットフォームおよびサービスの利用拡大にもつながると指摘した。
「MEC市場の成長は、RedCap NR (reduced capability new radio)を搭載したIoTデバイスの導入によって活性化され、より低価格でより多くの5G IoTデバイスが市場に投入されると予想している」とBolan氏は述べた。
Sikes氏は、AT&Tは今年度をかけて、技術や商業パートナーと協力し、この技術の利用範囲を拡大、新しいサービスをサポートしていく予定だと述べた。
商用導入に向けた進捗についてSikes氏は次のように語った。
「規模を拡大するにつれて、適切かつ必要な場所でネットワークを拡大し、できるだけ早く機能を導入することを目指します。これを年単位ではなく、月単位で実現できると思います」
Will AT&T’s 5G RedCap launch ignite IoT?
電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。
SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
Twitter:@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime
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