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文:Dan Meyer

7 Layers:MWCバルセロナ2023を振り返る

7 Layers:MWCバルセロナ2023を振り返る

業界団体GSMアソシエーションが発表した数字によると、先週開催した「MWCバルセロナ2023」の参加者は8万8,000人以上に上ったそうです。検証は難しいかもしれませんが、広大なフィラ・グランヴィアの複数ホールを行き交う人波の多さから考えると、理にかなった数字のように思います。

コロナ禍前の最後の開催となった2019年当時の10万9,000人には及ばないものの、それでも多くの参加者がモバイル通信業界最大の年次イベントが本格的に復活したと驚いていました。

SDxCentralがお送りするポッドキャスト「7 Layers」では今週、リポーターのJulia King(ジュリア・キング)を迎え、MWCバルセロナ2023を振り返ってみましょう。同見本市で登場した大きなニュースやトレンドにスポットを当てていきたいと思います。

01ネットワークAPIの推進

GSMアソシエーション主導の「Open Gateway」構想にこれまで20社以上の通信事業者やベンダーが参加、5Gネットワークによる利益追求を試みているようです。

02最大手ベンダーエリクソン、ファーウェイ、ノキアの様子

経営上の課題に苦しむエリクソンはイベントでのアピールもやや控えめ。ファーウェイは地政学的な苦境に規模で対抗。ノキアはかつてのロゴを捨てて事業の勢いをアピールしています。

03オープンRANに関するかなりの数の発表

特に欧州の通信事業者はさまざまなオープンRANソリューションを積極的に試しており、導入ベンチマークを確立しているようです。

04通信業界の未来

間もなく利用可能になる5G-Advanced仕様、その後の6G技術で得られる利益予測について。前者はまだ1年以上先、後者は5年以上先の話ですが、見本市が楽しいのは少し夢を見られるところです。

音声で振り返るMWCバルセロナ2023をお楽しみください。
また、MWCバルセロナ2023の専用ページでは、同イベントに関するすべての情報を掲載しています。

05音声スクリプト

*このエピソードはPrisma®Accessの力でZTNA 2.0を実現するパロアルトネットワークスの提供でお送りします。

はじめに

Dan:SDxCentralがお送りするポッドキャスト「7 Layers」へようこそ。今回は先日開催された「MWCバルセロナ 2023」を振り返ってみたいと思います。編集長のDan Meyer(ダン・マイヤー)です。今日は同僚のJulia keen(ジュリア・キーン)と一緒です。Julia、参加してくれてありがとう。感謝します。

Julia:お招きいただきありがとう、Dan。

Dan:とんでもない。それでは始めましょう。Juliaは同イベントをリモートで取材したチームに居たよね。そこでまず聞きたいのだけど、遠くから見るとどのようなイベントに見えましたか?

Julia:ええ。他のリポーターとも話していましたが、MWCからのニュースの他にも、イベントに合わせて発表されたばかりの情報で忙しい週になったのはもちろんです。私自身はSASEやSD-WAN、他にもいくつかの分野を担当しましたが、たとえばVMwareがインテルと協力したSD-WANエッジデバイスの5G接続強化を発表しました。Emma Chervek(エマ・チャーベック)が話していたところでは――彼女はサステナビリティの専門家です――、エネルギー効率に焦点を当てた発表がたくさんあったそうです。彼女が取材したRed Hatでは、高いエネルギー効率を実現する5G vRAN製品を開発していました。サイバーセキュリティ担当のNancy Liu(ナンシー・リュー)はSnowflakeが通信業界向けにデータクラウドの提供を始めた件と、GSMアソシエーションの「Post-Quantum Telco Network Taskforce」(ポスト量子通信ネットワークタスクフォース)による発表を取材しました。その模様はまた後日お伝えします。ですので、今年のイベントの賑わいはデンバーにいる私たちも感じていましたよ。でも、実際にバルセロナに行ったDanから現地の様子や何に注目したかを伺いたいですね。今年のMWCは元の活気をすっかり取り戻していましたか。イベントで得た収穫の中でも大きかったものは何ですか?雰囲気はどうだったか、そういったことですね。

Dan:ええ、もちろん。本当に大きな見本市でしたよ。Juliaの言うように現地に行ってきましたが、前回行ったのは2019年でしたから、4年ぶりくらいかな、そのくらい経っていますね。それに、ええ、人で一杯でした。主催者のGSMアソシエーションがいろいろな数字を発表していたと思いますが、参加者はたしかイベント全日を通して8万8,000人くらいだったと思います。数えたわけではありませんが正しい数字のように思いました。前回行ったのは何年も前ですが、当時は10万人くらいという発表がよくされていたと思います。今年は当時と同じくらい混んでいるように見えましたね、分からないですが。なので、8万人という数字は妥当というか控えめなくらいじゃないかな。それに、会場のエネルギーが本当に高かった。あの雰囲気が戻ってきたのでみんな楽しんでいたと思います。会場で話した人たちはそんな感じでしたね。昨年のイベントは開催時期が元に戻り、バルセロナでの会場開催も行われましたが、参加者は4万人前後だったと思いますが、まだマスクの着用が義務付けられていたんです。そのため、その時は今年に比べてずっと控えめな感じだったという声が聞かれましたね。ですので、イベント全体を見た時に、GSMアソシエーションの力が戻ってきたという印象です。本当に良かったですね。それが大きかったことの1つです。それに、さっきも言いましたが、会場にいた誰もがまた来られたことを喜んでいましたよ。これほど大勢の人々が集まる中にまた戻って来るというのは実際面白いものです。

Julia:ええ、それに2019年以来だったのもDanだけではなかったでしょうね。そんなに大勢の人が集まってそんな風に盛り上がり、みんな喜んでいたと聞いて嬉しく思います。では、今年の見本市で特に目立った発表やトピックには具体的にどんなものがありましたか。

Dan:もちろんお話ししないとね。私も同じことを聞きたいですね。面白いもので、私は現地でとても忙しかったので、Juliaがさっき挙げた話題の中には見ることすらできなかったものもあるんです。ですから、チームが取材したものについてもいくつか聞けると嬉しいです。さて、会場にいた私からすると、いくつか重要なポイントがあったように思います。逆に言えば、全体としては目立って大きなニュースが出てきたわけではなかったです。というのも、前回私が参加した時は5Gの展開がちょうど始まる頃で、5Gが大注目されていたんですね。ご存じのようにMWCは通信業界のイベントです。次世代規格に入っていくというのは業界にとって大きなサイクルですから、当時のイベントは5G製品の発表、5G関連のあらゆる話題、5Gが世界をどう変えるのか、そういう話題ばかりでした。この4年間はもちろん難しい時期でしたし、今年のイベントではそういった大きなニュースは無かったわけですね。とはいえ、重要なものもいくつか出てきていました。

GSMアソシエーション

Dan:まずはGSMアソシエーションによるものです。APIに関する構想を描いていて、通信事業者と協力、通信事業者が使用する標準APIを開発しようとしているようです。「Northbound API」はアプリケーション開発者やさまざまなクラウド事業者向けにネットワークが持つ情報を活用できるようにするもので、各々のユースケースやデータストリームがどんな状態になっているか、外部から分かるようになります。これは業界にはずっと前からある話題で、通信事業者は何十年も前から議論していたと思いますが、広範なデータエコシステム、クラウドエコシステムの間でもっと大きく扱おうという試みのようです。これまではいろいろな理由でそれができていなかったんですね。だいたいは通信事業者の内部事情によるものです。でも、今回GSMアソシエーションが主導することで、通信事業者各社がこれまでよりも深く関与することになったようです。通信事業者は長いこと土管化が進んでいましたが、それがさらに進む可能性も下がるのではないかと思います。大きな後押しになりましたね。GSMアソシエーションは明らかに通信事業者を巻き込もうとしています。最初のメンバー企業としては通信事業者やベンダーが20社くらい参加しているという話だったと思いますが、標準APIに関する取り組みを始めているようですよ。かなりの規模ですよね。さらに、それ以外の通信事業者もさまざまなクラウド事業者と協力してAPIに関する同じような取り組みを進めていると発表していました。APIが大きな話題になっていたわけですが、APIというのは普段は通信事業者が自ら語る内容ではないですから、APIが大きな話題になったこと自体が通信事業者にとっては大きな意味のある前進でした。今後どうなっていくのか見ていきたいと思っています。こういった取り組みはいつも水面下で進められていましたが、今回はどうなるのか見ていきたいですね。追っていきましょう。

3大RANベンダー

Dan:もう1つは、多くのベンダーと話ができたことです。もちろん大手のベンダーはいつも参加しています。特に、エリクソン、ノキア、ファーウェイは業界の3大RANベンダーだと言えるでしょう。業界内の自社の立ち位置について、3社が異なる見方をしていたのは興味深かったですね。現在エリクソンはRANベンダーとして世界1位、あるいは2位と言われています。支配的な力があると思いますよね。ところがエリクソンは明らかに経営面でいくつか課題を抱えており、優位に立ち続けるのを少し難しくしているようです。ちょっと苦戦しているんですね。イベントでも、大きな前進をしたという発表をたくさんするということはありませんでした。それはそれで興味深いことでした。ノキアは現在、業界3位か4位と言われていますが、かなり攻めの姿勢でしたね。ブランドロゴを変更しましたし、積極的に多くの市場に参入する計画を発表し、大きなイベントも開催しました。とてもいい波を作っていたと思います。ここ2、3年は少し報われるようになりました。その点、間違いなく前進しているし、自社の方向性にとても自信を持っているようでした。ノキアについてはそれが面白かったですね。ファーウェイも面白かった。西側諸国ではほとんどの人がファーウェイや中国ベンダー全般に関して地政学的な問題が発生していることを知っていると思いますが、そのうえでホールの半分を占領するとてつもなく巨大なブースを出展していました。存在感が強かったです。話を聞いてみたところ、ほとんどの話題は西側以外の市場で事業を展開できていることや、今のところ中国製機器を禁止していない欧州の国でも多くのビジネスチャンスがあることについてでした。でも、発展途上国にもチャンスがありますね。アフリカやアジア、南米には5Gだけでなく4Gなどにも多くのビジネスチャンスがあります。ファーウェイの規模は今も大きく、事業ができる市場もたくさんあります。いくつかの市場では営業できないし、この先サプライチェーンの面で打撃があるかもしれないということはもちろん認識しているでしょうが、彼らには今も多くのビジネスチャンスがあるわけです。ファーウェイで興味深かったのはそういったことですね。

オープンRANと次世代5G

Dan:他にも2つ簡単にご紹介しましょう。オープンRANはずいぶん長いこと現在進行形の話題として取り上げられてきたし、もちろん今もそうであるようです。見本市でもオープンRANの話題はやはりたくさん出ていました。話をしていたのは主にベンダーの人やオープンRANの推進派、支持派となっている人々ですね。つまりはまだ発展途上だということでもあって、通信事業者に話を聞くと、まだ技術が成熟するのを待っているところで、積極的に取り組むのはその後になるようです。有名な通信事業者ではオープンRANについて盛んに議論していました。そしてもう1点、もし次世代のGの話が出なかったとしたら見本市とは言えないよね。仕様はまだ策定途中ですが、「5G-Advanced」と呼ばれる5Gの次のバージョンが向こう数年で登場する予定になっています。もちろんその話題は出ていました、5G-Advancedの内容がどうなるかという話ですね。残念ながら、ほとんどの部分は基本的に現在の5Gを拡張したものになるようで、素晴らしいビジネスチャンスが多く生まれるという類のものではないようです。少なくとも今の時点ではそう思われるということです。6Gについての議論もありましたが、これもどういったものになる可能性があるかだとか、ほとんどがごく暫定的な内容でした。6Gの検討は2020年から始まりましたが、仕様として策定されるのは少なくとも2027年以降というスパンになっています。それでも、どういったものになりうるか、周波数帯はどうなるかという話がたくさん登場していました。面白いのは、こういった話というのは5年くらい前に5Gについて話していた内容と同じなんですよね。そのまま先に進んできた感じですね。

イベントでの主な収穫

Dan:ともあれ、以上がイベントでの主な収穫です。さっきも言ったように、大きなニュースがあったわけではありません。でも、今挙げたトピックは少なくとも私にとっては大きな収穫と言えるものでした。繰り返しにはなりますが、見本市が本格的に復活しつつあると聞けたのは嬉しかったですね。そして、チームの皆はリモートで仕事をして、遠くからイベントを追うことができていたわけですね。ちょっと羨ましいな。少し距離を取って追いかけるというのはいいことだものね。来年はもしかしたら逆の立場になるかもしれませんね。君が現場に送られて、僕も家から安全にあのカオスな場所を取材するわけです。君が興味を持つかどうかは分からないけどね。その前に、来年も続くのかどうかが先ですね。

Julia:ええ、さっきお話にあったファーウェイのブースは見応えがありそうです。それから、今年はRAN 5Gについての議論の多くは必ずしも新しいものではなかったようですね。でも、参加企業にとってはコロナ禍以降では1番大きな舞台で自社の成果をアピールするチャンスになったわけで、エキサイティングなイベントになったという風に聞こえました。楽しまれたようで何よりです。

Dan:ええ、まさにそんな感じでした。来年も同じくらい大きなブースがあるんじゃないのかな。もし機会があればぜひチェックして、迷い込んでみるのもいいですよ。では――Julia、お時間をいただき、大きなイベントとなった今回の見本市の様子を振り返っていただき、本当にありがとう。多くの企業にとって今年のキックオフになるようなイベントでした――少なくとも通信業界では。2023年に各社が行う取り組みの前準備の場にもなったと思います。それを見られたのは良かったです。繰り返しになりますが、Juliaは先週の出来事を少し思い出させてくれてありがとう。本当に感謝します。そして、SDxCentralがお送りする「7 Layers」の今回のエピソードをお聞きいただいた皆さま、ありがとうございました。

*このエピソードはPrisma®Accessの力でZTNA 2.0を実現するパロアルトネットワークスの提供でお送りしました。

7 Layers: MWC Barcelona 2023 Review

Dan Meyer
Dan Meyer Executive Editor

Dan Meyer is Executive Editor at SDxCentral, with a focus on telecom, 5G, radio access networks (RAN), and edge networking. Dan has been covering the telecommunications space for more than 20 years. Prior to SDxCentral, Dan was Editor-In-Chief at RCR Wireless News. You can contact Dan directly at: dmeyer@sdxcentral.com, on Twitter at: @meyer_dan, or on LinkedIn at: dmeyertime.

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Dan Meyer is Executive Editor at SDxCentral, with a focus on telecom, 5G, radio access networks (RAN), and edge networking. Dan has been covering the telecommunications space for more than 20 years. Prior to SDxCentral, Dan was Editor-In-Chief at RCR Wireless News. You can contact Dan directly at: dmeyer@sdxcentral.com, on Twitter at: @meyer_dan, or on LinkedIn at: dmeyertime.

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