AWS社、通信システムを全面的にターゲット=CEO談
クラウド大手のアマゾンウェブサービス(AWS)は無線ネットワークインフラ分野に全力で攻勢をかけるだろうかというのは長いあいだ懸念されてきたことだが、現在では概ね実際に起こるだろうこととして受け止められている。そうなればAWS社は今後の通信分野でどの企業よりも大きな役割を担うことになる。
「通信事業者各社は現在、クラウドを利用して事業の中核に当たる部分をがらりと一変させようとしています。顧客に接続とサービスを提供するネットワークやシステムの部分です」。CEOのAdam Selipsky氏がMWCバルセロナ2022の基調講演で語った。
「クラウドネイティブなネットワークを構築することで、コストを削減し、新しいサービスを迅速に展開し、ネットワークの利用状況の変化に素早く対応しようとしているのです」と氏は言う。
米Dishの5G展開に遅れ、AWSのメッセージが弱まる
AWS社は世界でも最大手の多くのキャリアと協業し、勢いは続いているが、ネットワークインフラの根幹部分を担おうという熱意が実を結ぶかどうかはかなりの部分が米Dish Networkとの事業に掛かっている。グリーンフィールドのネットワーク事業者を目指すDish社はできる限りのものをクラウドに乗せようとしており、利用するクラウドは全てAWSだ。
AWS社にとって残念なのは、Dish社がまだ商用の5GオープンRANを持っていないことだ。Dish社の経営陣は世界初のネットワークアーキテクチャで全米規模の5G事業者になるという目標を達成できることを証明するべく確固たる姿勢で取り組み続けているが、それが予想以上に困難だったことも率直に認めている。
Dish社のネットワーク展開が完了した場合に想定される成果には今もって意義深いものがある。Selipsky氏によると、企業はオンデマンドでネットワーク体験のカスタマイズや拡張ができるようになり、シンプルな展開プロセスで新しい5Gアプリケーションを市場投入できるようになるという。
「開発者は標準APIを使ってネットワークデータやAWSの各種サービスにアクセスでき、低遅延、拡張現実(AR)、ユーザーのデバイスに最適化したゲームなど、そうしたデータを利用するアプリケーションを構築できるようになるのです」と氏は言う。
通信インフラの中核部分で勢いを増す兆し
もちろんAWS社はそれ以外にも多数の既存ネットワークに触手を伸ばしており、多くはバックエンドのITインフラから着手している。「ITインフラをクラウドに移行することでサーバなどのインフラ管理の手間を大幅に軽減できるだけでなく、ビジネスプロセス全体で自動化を進め、コストを削減することが可能になります」。Selipsky氏は言う。
氏によると、ドイツテレコムは2019年に自社のアプリケーションの60%近くをアマゾンのクラウドに移行するという目標を掲げ、現在ではほとんどのITプロジェクトで約75日間での市場投入が可能になったという。レガシーシステムでは18カ月かかっていたところからの短縮だ。
スイスコムもAWS社およびエリクソンと提携し、クラウドネイティブのSA方式5Gコアネットワークを構築している。「これまでは不可能だった方法で、自在にスケールアップ/スケールダウンできるネットワーク」になるという。
NTTドコモはAWS社とNECの協力を得て、AWS社が設計したGraviton2プロセッサで動作する5Gコアネットワーク機能の技術検証を東京エリアで開始した。氏によると、Graviton2をコンピュートインスタンスに搭載することで、前世代のプロセッサと比較して費用対効果を最大40%向上させられるという。「NTTではパブリック5Gネットワークを展開する際に消費電力を最大30%削減できると見込んでいます」
Selipsky氏は「AWS Wavelength」についても触れた。AWS社はエッジのハイブリッドアーキテクチャと無線5Gネットワーク経由での接続を必要としている企業に対して自社のコンピュート/ストレージ/インフラサービスを提供するべく低レベルかつより分散型のクラウドをいくつか展開しており、AWS Wavelengthはそのうちの1つだという。
Wavelengthを利用する通信事業者の顧客が増えたという発表はなかったが、Selipsky氏によると今年後半には新たな発表があるという。「AWS Local Zones」は大都市圏にAWSを分散させたいという顧客のニーズに応えたサービスで、現在は米国の16都市に展開しており、今後さらに26カ国32都市圏で新しいLocal Zonesを開始する計画だという。
無線通信事業者のパブリッククラウドに関する取り組みについては、テクノロジー導入サイクルにおいて早期導入企業が利益を享受してきたのと非常に近い段階に入ってきているという。
「当社は多くの通信事業者様とパートナーシップを結び、共に通信を改革し、お客様の事業全体にわたるイノベーションを推進しています。5Gが進化していけば、(エンターテインメント、ロボット工学、自律走行、リアルタイム監視などのユースケースで)新たな収益源を生み出すあらゆる新しいアプリケーションが登場するでしょう」
https://www.sdxcentral.com/articles/news/aws-ceo-twists-cloud-giant-all-over-telco-systems/2022/03/
Matt Kapko, senior editor at SDxCentral, covers 5G network operators, radio access network suppliers, telco software vendors, and the cloud. He has been writing about technology since before the dawn of the iPhone, and covering media well before it was social. Matt can be reached at mkapko@sdxcentral.com or @mattkapko.
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