シスコ、KDDI、富士通がオープン光ネットワークの展開を推進
シスコシステムズ、富士通、KDDIが10月、IPレイヤーと光伝送レイヤーを融合したオープンアーキテクチャによるメトロネットワークの本運用を開始した。運用を効率化し、電力使用量を約40%削減する。オールフォトニクス・ネットワーク(APN)に向けた取り組みの勢いが続いている。
同ネットワークでは、WDM(波長分割多重)用光信号を直接送受信することが可能なシスコ製ルータ「NCS5500」シリーズと、富士通製Open Line System(OLS)「1FINITY」シリーズを使用、オープンインターフェイスで接続している。
シスコの光システム/オプティクスグループ担当シニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー、Bill Gartner(ビル・ガートナー)氏がSDxCentralのインタビューで説明したところによると、同ネットワークにおけるシスコの役割は、それまで使用されていたWDM機器を自社製ルータに統合、必要となる設置面積と電力を削減することだったという。
「トランスポンダを搭載したシャーシをソリューションから取り除くのですが、スペースに制約のある環境では重要な事柄です」と氏。「総じて、よりシンプルなソリューションということになります。容量を増やすに当たり、シャーシやシャーシ型の機器を展開するよりも、ルータにプラガブルモジュールを統合するのです」
こうした取り組みを後押しする要素として、オープンインターフェイスの利用が増えていることがある。レイヤー0の物理的な光ファイバーと、その上でトラフィックを送信するレイヤー1のコンポーネントの分離が可能になるためだ。
「お客様にとっては、現在市場にあるマルチベンダーソリューションを利用できるという利点があります」と氏。「DWDM(高密度波長分割多重)は、標準的でないネットワーク構築技術の最後の砦のようなものでしたが、こうした新世代のプラガブル光モジュールが登場したことで、レイヤー間のオープン化(レイヤー0、レイヤー1)を進める技術となっています。また、新世代の光モジュールによって、長年プロプライエタリだったソリューションのオープン化が進もうとしています」
ネットワーク効率の向上
今回の3社による簡略化の取り組みは、効率化にもつながる。
「容量が増えれば総消費電力も増えますが、ビットあたりの消費電力は減らさなければなりません。お客様はビットあたりのコストや消費電力に注目されており、常にこれを引き下げていく必要があります」と氏。「当社はビットあたりの消費電力、コスト、占有面積を非常に重視しています。10Gから100Gに移行すれば総消費電力は上がるかもしれませんが、ビットあたりの消費電力は下がらなければなりません」
Gartner氏によると、今回の協働では、100 Gbpsおよび200 Gbpsをサポートしているが、速度が増すほど通信事業者のコストは節約になる可能性があるという。「400 Gbpsでは、90%以上の削減が見られました。どう考えても相当な数字です」
通信事業者がネットワークのエリア・容量拡大を目指すなか、より効率的な機器アーキテクチャへの移行はますます重要になってきている。
米通信大手AT&Tのエグゼクティブ・バイスプレジデント、Chris Sambar(クリス・サンバー)氏は、自社の持続可能性への取り組みを「グリーンG」(Green G、通信業界団体Next G Alliance(NGA)の取り組み)であると(いわれなく)評している。10月末から開催された「Brooklyn 6G Summit」の席で、「古いものは6倍から8倍の電力を使うため、当社では頻繁に古い機器を廃止して、できるだけ早く新しい機器に移行するようにしています」と説明した。
KDDIは、2028年度末までに今回の新しいアーキテクチャによるメトロネットワークを全国展開していく計画だ。
KDDIのオールフォトニクス・ネットワーク計画
また、KDDIは今回の取り組みを、オールフォトニクス・ネットワークへ向けた最初の一歩と位置付けている。同光伝送システムが実現すれば、光信号を伝送する際にルーティングのために電気信号に変換する必要がなくなり、光信号のまま経路全体を通すことが可能だ。
KDDIは3月、NTTと光ネットワーク技術のグローバル標準化に向けた基本合意書を締結した。両社の取り組みでは、2019年にNTTが関わって設立されたInnovative Optical and Wireless Network(IOWN)Global Forumの活用の仕方なども含めて検討が行われる。
電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
Twitter:@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime
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