エリクソン、中国での見通し悪化をカバー=米ベライゾンとの大型契約で

エリクソンは2021年第2四半期の決算を発表し、悪いニュースを良いニュースで巧みに補った。
エリクソンは2021年第2四半期の決算を発表し、悪いニュースを良いニュースで巧みに補った。スウェーデンのRANベンダーであるエリクソンは第2四半期、中国での見通しが悪化した一方で、米ベライゾンと83億ドル(約9,120億円)の契約を交わしたばかりだ。CEOのBorje Ekholm氏によると、「エリクソンの歴史上、最大の契約」だという。
中国との関係が悪化するなか、エリクソンはこれまで何百万人もの失意の人々がやってきたように、長年の友人に安心感を求め、それを得たのだった。
しかし、投資家らはこれには乗せられなかった。エリクソンが持つ最大の市場でいくら良いニュースがあったとしても、中国本土で抱えた2億8,800万ドル(約320億円)の売上減(前年同期比60%減)と、中国市場向け市販前製品の3,400万ドル(約40億円)の評価損を相殺することはできないようだ。このニュースを受けて、エリクソンの株価は11%近く下落した。
エリクソンが世界最大のモバイル市場である中国で勢いを得られないことは、成長機会を妨げることになり、投資家らはそれを心配している。ベライゾンとの契約は大規模なものではあるが、予想の範疇だった。中国で成功すれば、同社が他の地域で長年築いてきた実績以上に成長していくことができる。
良いニュースと悪いニュースの話が終わると、Ekholm氏はエリクソンの機器とソフトウェアが実運用中の5Gネットワーク93個を支えていることを誇らしげに語り、5G通信インフラ機器に対する世界的な支出の増加によってエリクソンは恩恵を受けるという予測を述べた。米調査会社Dell’Oroグループは先月、5G市場が今年最大10%拡大し、総売上は1,000億ドル(約10兆9,900億円)に達すると予測している。
北米のミッドバンド5Gへの意気込み
米Seeking Alphaの記録によると、Ekholm氏は次のように述べている。「北米市場は5Gの需要が旺盛で非常に急速に進展しており、通信事業者が年末の稼働に向けてミッドバンドネットワークの構築を進めている今が重要な機会になると考えています」。「5Gネットワークによって可能となるエンドユーザー体験を提供するためには、ミッドバンド帯とそこでの構築が不可欠です」
北米は依然としてエリクソンが持つ最大の市場だ。北米での売上は前年同期比2%減の20億ドル(約2,200億円)だった。
Ekholm氏はまた、今年末に発売予定のMassive MIMO(マッシブマイモ)5G無線機や、2022年後半にミッドバンドをサポートする予定のベースバンド装置による仮想化クラウドRANポートフォリオなど、エリクソンのポートフォリオが全体として進歩していっていることを改めて強調した。
エリクソンのクラウドRANは2022年、オープンRANはずっと後に
「クラウドRANは当社の製品ポートフォリオにおいて不可欠な要素であり、当社のお客様は、これによって自動化や完全に自律的なネットワークを活用したクラウドネイティブアーキテクチャやオープンネットワークアーキテクチャを目指してネットワークを進化させることができます」と氏。
Ekholm氏によれば、エリクソンはオープンRANに対しても同様のアプローチをとっているというが、同社はオープンRANに対してはあまり熱心ではなく、これまでのところディスアグリゲーションへの取り組みはvRANまでにとどめている。「現実は明らかに、オープンRANはいずれやってくるものであり、当社もそれに備えた投資をしています。実際の最初のステップはクラウドRANポートフォリオになると考えています。これによってお客様はオープンアーキテクチャに移行できるでしょう」と氏は言う。
「完全に機能するオープンRANソリューションが完成するまでには数年かかるでしょう」としながらも、特定のアプリケーション、特に性能要求の低いアプリケーションのケースではもっと早期に実現する可能性もあると補足した。「そうした領域もありますが、オープンRANが6Gソリューションの基礎を成す部分になることは間違いありません。私の考えでは疑問の余地のないことです。しかし、それまでの間にオープンRANがどのように進展していくかは、正確にはまだわかりません。もちろん、同技術がどのように成熟していくか次第です」
この発言は、モバイルネットワークインフラ市場においてオープンRANがいつ、どこで普及するとエリクソンが予測しているかを他の何よりもよく反映していると言えるだろう。
「現在は世界中で5Gネットワークを構築する必要があると認識しています。これは直ちに対応するべき問題であり、現在の5Gに求められるパフォーマンスを実際に提供できるのは、特定用途向けネットワークだと考えています」と氏は言う。
Ekholm氏は次のように説明している。「私たちはシンプルにこう言っています。オーケー、オープンRANの準備が整うまでには当社もソリューションを用意しておきましょう。しかし、今は市場で実際に起きている状況から注意をそらすべきではないと考えているのです」
地域差はあるものの、堅調な売上
エリクソンの売上は第2四半期、前年同期比1%減の63億ドル(約6,920億円)となり、純利益は前年同期比51%増の約4億5,000万ドル(約490億円)となった。
このうちネットワーク部門の売上は46億ドル(約5,060億円)と横ばいで、総売上の73%を占めた。デジタルサービス部門の売上は8%減の9億1,100万ドル(約1,000億円)、マネージドサービス部門は8%減の5億8,800万ドル(約億円)。昨年11億ドル(約650億円)で買収した法人向けWANベンダーの米Cradlepointを含む新興事業・その他部門の売上は、29%増の2億4,200万ドル(約270億円)だった。
Ekholm氏によると、Cradlepoint社はエリクソンの計画に沿って順調に進展し、現在はグローバルに展開しているという。「Cradlepointの買収によって、エンタープライズ市場で大きな、ますます増え続けているシェアを獲得する機会が得られたことは非常に喜ばしいことですが、Cradlepointはエンタープライズ市場に向けて当社が必要としている要素のうちの1つであり、必要な要素は他にもあることも認識しておく必要があります」
エリクソンは企業やキャンパスネットワーク向けの専用ネットワークやIoTなど、エンタープライズ市場にある他の機会も同時に追求している。「エンタープライズ分野の市場機会は非常に大きく、Cradlepoint以外にも広範な買収を視野に入れ、この分野への投資を拡大する必要があると考えています」とEkholm氏。
同社の研究開発費は第2四半期、前年同期比5,800万ドル(約60億円)増の12億ドル(約1,320億円)に急増した。これは主に、成長中のクラウドネイティブ5Gポートフォリオと新興事業・その他部門への投資増によるものだ。
エリクソンの東南アジア・オセアニア・インド地域の売上は、8%増の約8億1,900万ドル(約900億円)となった。北東アジアの売上は9%減の8億1,900万ドル(同)、欧州および中南米は7%増の16億ドル(約1,760億円)、中東およびアフリカでは18%減の5億1,900万ドル(約570億円)となっている。
第2四半期末の従業員数は101,623人で、主に研究開発部門での雇用により、前四半期から511人増加した。
https://www.sdxcentral.com/articles/news/ericsson-fights-fading-china-outlook-with-voluminous-verizon-deal/2021/07/

Matt Kapko, senior editor at SDxCentral, covers 5G network operators, radio access network suppliers, telco software vendors, and the cloud. He has been writing about technology since before the dawn of the iPhone, and covering media well before it was social. Matt can be reached at mkapko@sdxcentral.com or @mattkapko.

Matt Kapko, senior editor at SDxCentral, covers 5G network operators, radio access network suppliers, telco software vendors, and the cloud. He has been writing about technology since before the dawn of the iPhone, and covering media well before it was social. Matt can be reached at mkapko@sdxcentral.com or @mattkapko.
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