5G
文:Matt Kapko

欧州電気通信標準化機構(ETSI)、コロナ禍でも着実な5G発展を構想

欧州電気通信標準化機構(ETSI)、コロナ禍でも着実な5G発展を構想

欧州電気通信標準化機構(ETSI)事務局長のLuis Jorge Romero氏によると、3GPPによる5G標準化プロセスにはCOVID-19パンデミックによって約6カ月の遅れが生じたものの、作業は再び順調に進んでいるという

3GPPではリリース17に関する活動が続けられており、2022年半ばには完成する予定だ。また、今月にはリリース18の無線関連の活動に関する最初のワークショップが開催された。

パンデミックにはほとんどの人が不意を突かれた形となったが、ETSIでもほとんどの企業や組織と同様、完全なリモートワーク環境に即座に移行する準備は整っていなかった。Romero氏はSDxCentraによる最近の電話インタビューに対し、「私たち全員にとって大きな影響がありました」と語っている。ETSIと傘下の多数のワーキンググループや委員会では、運営方法が日々変わっていったという。

「これだけのテレワークを行い、各種のツールが使えるようになっても、備え切れないこともあります」と氏。社会契約を維持するには、個人の状況、家庭での責任、実現可能な労働環境を促進するリソースを利用可能であるかなど、「私たち1人ひとりにはさまざまな現実がある」という認識が必要だという。

 

ETSI、リモートでの意思決定に適応

ETSIではまた、常に変化していく状況に技術グループのメンバーが対応できるよう、手続き上の決定事項を委任することもした。標準開発を変わらず進めていくに当たり、小規模なグループの方が対応しやすかったようだとRomero氏は言う。

以前はまる1週間開かれていた委員会も、数週間サイクルで昼間の数時間だけバーチャル会議を行うようなったところもある。「私たちの今の働き方がそんな風であることから、各作業委員会が自分たちの好きな仕事のやり方に変えたい場合には、かなり柔軟に任せています」と氏は言う。

3GPPでは特に作業方法や意思決定のルールに「大きな変化」があったという。以前はあらゆる部分に関して実際に顔を合わせることが必要だった、とRomero氏。「皆がそれぞれ個別の困難に立ち向かわなければなりませんでしたが、私たちはこの状況下でかなりうまく切り抜けてきたと思います」

Romero氏によると、パンデミックの影響でほとんどの委員会は実際に顔を合わせる会議を控えているものの、今でも本来望ましいのは直接会議だという。議論の最中に論争が起こった際にスムーズに合意を形成することができ、委員会がより速いペースで進捗を達成できるためだ。

こうした課題はあるものの、Romero氏は3GPPがボトルネックを既に乗り越えており、5G標準の開発がこれ以上遅れることはないと確信しているとした。一方、世界的に5G展開が急速に進むなか、3GPPの規格に準拠しながら広範なカバレッジを実現するに当たってさらなる支援を必要としている通信事業者もある、とRomero氏は指摘する。

5G5Gたらしめているこうした優れた特長をすべて実現したければ、技術を適切に導入する必要があります。そうしないと、個々に小さな島をいくつも導入するようなことになってしまい、サービスの連続性が失われてしまうでしょう」と氏は言う。

 

5Gの利点が発揮されるかは企業による導入次第

ネットワークスライシングや低遅延といった5Gの利点は、システム全体を完全かつ適切にカバーするのでなければ十分には発揮できない、とRomero氏は説明する。「ネットワークスライシングが可能であることと、オーダーメイドのサービスを全体に展開できることは

5G4G以前の大きな違いです」と氏は言う。

5Gがどの程度の成功を収めるかは、5Gに参画し、多様なサービスを新しい5Gネットワークに展開する動きがさまざまな業界にどの程度広がるかにかかっている。「それがどの程度のものかは、この技術から大きな恩恵を受けるであろうそうしたさまざまなセクターにマッチするビジネスモデルが現れ始めた時に分かるでしょう」

5Gはまだ発展途上の新しい技術ではあるが、今の時点で振り返ってみると、以前に5Gで固定無線アクセスを展開したい通信事業者の希望に応えてリリース15の進捗を急いだことは良いことではなく、二度と繰り返すことはないだろう、とRomero氏は認めている。「その結果、最終版のリリース15に向けていくつかの作業をやり直さなければならず、若干の支障が発生した形となりました」と氏は話している。

ETSIは今後のプロセスを急ぐのではなく、各標準の活動では少し息をついたうえで、標準開発予定について合意したスケジュールを守りたいと考えているとRomero氏は補足した。

氏によると、3GPPでは今後のリリースに向けて、仮想化、人工知能(AI)、セキュリティ、ネットワーク管理などにますます力を入れていくという。「私たちは、ネットワーク管理に関係するこれら全てについて検討するのに多くの労力を割いています。もちろん無線は重要な部分を占めていますが、ネットワーク管理もネットワーク自動化の実現に関わる重要なピースであり、私たちはそこにも労力を注いでいるのです」

Romero氏は「現在はセキュリティも非常に重要な課題となっています」と述べ、セキュリティと仮想化は密接に関連しているとも付け加えた。

3GPP2022年の第3四半期にリリース17を完成させ、2022年初頭にリリース18の作業を開始する予定だ。

https://www.sdxcentral.com/articles/news/etsi-plots-steady-5g-boosts-amid-pandemic-woes/2021/07/

Matt Kapko
Matt Kapko Senior Editor

Matt Kapko, senior editor at SDxCentral, covers 5G network operators, radio access network suppliers, telco software vendors, and the cloud. He has been writing about technology since before the dawn of the iPhone, and covering media well before it was social. Matt can be reached at mkapko@sdxcentral.com or @mattkapko

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