Google Cloud、Azureより低価格とアピール=VMware on Cloudサービスで
VMwareの顧客をめぐってパブリッククラウド企業の競争がますます白熱している。BroadcomによるVMwareの買収を受けて、ワークロードの移行が検討されているためだ。Googleはマイクロソフトに対する価格面での優位性をアピールし、最大手のAmazon Web Services(AWS)はいまのところ直接的な反応をみせていない。
GoogleはクラウドプラットフォームでVMware基盤を支える方式の「VMware Cloud Foundation on Google Cloud VMware Engine」(VCF on GCVE)の商用提供を開始、価格面をアピールしている。基本的に、VMwareが最近アップデートしたVCFサービスがすべてGCVEで利用できるようになった。
確約利用料金が約20%下がったほか、ライセンスポータビリティに対応したことで、オンプレミス環境からGoogle Cloud環境にワークロードを移行する際のコストが(Broadcom以前のライセンスモデルと比較して)最大35%安くなるという。また、ワークロードの移行先に選んでもらうインセンティブとして、GCVEの初年度の料金が最大40%安くなる。
総合的には、新しいノードタイプとインセンティブを利用してVCF on GCVEを運用する場合の総コストは、マイクロソフトの「Azure VMware Solution」と比べて最大30%安くなるという。
具体例として、新しいノードタイプの1つを3年間の確約利用契約で利用するケースを挙げている。料金は1時間あたり3.60ドルとなるが、同じような地域のAzureで、同じ期間ワークロードを運用すると、1時間あたり5.17ドルになるとした。
マイクロソフトも5月に「VMware Rapid Migration Plan」の提供を開始し、同じような対応をしている。Azure VMware Solutionにワークロードを移行するとライセンス特典があり、あるていど料金を固定できるプランだ。
ユーザーは一定期間(1年、3年、または5年)にわたり、固定料金で予約インスタンスを利用することができる。予約インスタンスとは、従量課金モデルと異なり、Azureでアプリケーションを実行するインスタンスに対して使用料を前払いするもので、インスタンスあたりの料金が安くなるという利点がある。
マイクロソフトは予約モデルを推奨しており、年内に新規で1年間の予約インスタンスを購入すると、Azure VMware Solutionの20%割引が提供される。なお、5年契約の購入は6月末で終了している。
新規で予約インスタンスのプランを購入する顧客には、最大12万ドルのAzureクレジットも提供されている。Azure VMware Solutionまたはその他のAzureサービスに使用することが可能となっている。
距離を取るBroadcomとAWS
AWSはこれまで、価格競争に公に参加することはしていない。新しくBroadcomモデルとなったVMwareとはむしろ距離を置いており、5月にはAWSによる「VMware Cloud on AWS」の販売がBroadcomに引き継がれている。
BroadcomのHock Tan(ホック・タン)CEOがブログ記事でこの件を取り上げている。「AWSまたはそのチャネルパートナーによる、(VMware Cloud on AWSの)直接販売は終了しました」と説明した。
「簡単な話です」。Tan氏は短く述べている。「以前にVMware Cloud on AWSをAWSで購入されたお客様は、今後はBroadcom、あるいはBroadcomの認定リセラーと連携して、サブスクリプションを更新したり、環境を拡張したりしていただく形になります。AWSで購入された、月払いによる1年または3年の有効なサブスクリプションをお持ちのお客様については、期間終了まで引き続きAWSから請求が届きます」
この決定は、VMware Cloud on AWSがVMwareにとって大きな成功であるにもかかわらずなされたものだ。
氏はブログ記事の中で、VMware Cloud on AWSが廃止されるかもしれないという誤った報道がきっかけだったと書いている。
「残念なことに、VMware Cloud on AWSが廃止されるかもしれないという誤った報道がありました。同サービスを長年ご愛顧いただいているお客様には、無用のご心配をおかけしております。当社はこの誤った情報を訂正すべく、迅速に対応しています。(中略)同サービスは継続しており、ご購入可能であり、お客様の戦略的な事業構想を変わらず支えていくことをお知らせいたします」
Broadcomがマイクロソフト、Googleとの統合を強めたことで、2社が上位の競合との差をさらに縮める可能性もある。調査会社による最近のレポートでは、AzureとGCPがAWSのシェアを追い上げていることがわかっている。
米Synergy Research Group(SRG)のレポートによると、AWSは今年第1四半期もパブリッククラウド市場で最大の売上を上げ、市場の31%を占めた一方で、前年同期の32%と比べるとわずかに減少しているという。
対照的に、マイクロソフトの市場シェアは昨年の23%から今年は25%に拡大し、後を追うGoogleのシェアも10%から11%に伸びている。
「AWSが大きなリードを保つ一方で、前年比で大きく成長したのはマイクロソフトとGoogleです」とレポートにはある。「四半期成長率については3社とも、2四半期連続で大きく上昇しています」
VMwareをめぐって価格競争をする理由
インセンティブ競争が繰り広げられているのは、Broadcomのライセンス変更が広い範囲に影響するもので、長年VMware製品を利用している顧客が値上がりをにらんで支出を抑制する方法を検討している可能性があるためだ。
米フォレスター・リサーチが最近発表したレポートには、次のように書かれている。「あるVMwareの顧客は、現在のVMware製品の使用状況を踏まえて、新しいライセンスモデルと製品パッケージのどこに対応するかを考えると、500%値上がりすることになりそうだと話しています」
BroadcomのTan氏は最近、長期顧客に新しいサブスクリプションライセンスモデルに移行してもらう取り組みについて、進捗を伝えている。「既存の最大顧客1万社のうち、3,000社近く」が契約に至った、と嬉々として語った。こうしたお客様には、おおむね複数年契約を結んでいただいています」
「進捗は順調です」と氏。「まだ完了したわけではありませんが、期待通りに移行が進んでいます」
一部の競合は、移行が進んでいるのはBroadcomが価格交渉をいとわないためだと指摘している。
米Nutanixが開催した直近の決算説明会では、Rajiv Ramaswami(ラジブ・ラマスワミ)CEOが次のように述べている。「Broadcomはこれまでにも、価格やパッケージの変更に関して、とても柔軟な姿勢を見せています。特に、大口顧客を失いそうな場合や、市場や顧客基盤から反発を受けて対応する場合です」
アナリストの間では、多くの顧客企業に金銭的な負担がかかると強調する向きもあれば、結局は関係者全員にとってプラスになる可能性もあると指摘する声もある。
「実際、Win-Winになるのかもしれません。もしかすると、Broadcomは売上の大きさよりも利益の質を重視しているのかもしれず、それは(Tan氏の)やり方でもあります。そうであれば、良い結果が出ているということになります」。米AvidThink(アヴィドシンク)の創設者でプリンシパル、Roy Chua(ロイ・チュア)氏が最近、変化する市場ダイナミクスについてSDxCentralの取材を受けた中で語った。「顧客にとっても損にはならないかもしれません。VMwareの料金の加算分を支払いたくなければ、結局のところ、契約先を変えることになり、それで満足のいく結果になるかもしれません。ロックイン状態を味わわずにすむでしょう。ですから、市場の変化は、私が予想していなかったような面白いものになる可能性もあります」
Google claims it beats Microsoft on VMware costs
電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
Twitter:@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime
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