OPEN-RAN

ファーウェイCTO、仮想化RAN・オープンRANを冷評

ファーウェイCTO、仮想化RAN・オープンRANを冷評

ファーウェイはオープンRAN技術、仮想化RAN技術に断固反対だ。CTOのPaul Scanlan氏は9日、この点を明言した――氏とファーウェイはどちらのアーキテクチャも支持しない。

このコメントはメディアとのグループ通話で述べられたもので、現在通信市場で最も誇大に宣伝されている発展途上の2つの枠組みに対し、世界最大のRANベンダーが立場を表明したものとしてはそれほど驚くべきものではない。この厳しい批判がなされる少し前には、世界で最大の力を持つオープンRANコミュニティであるO-RAN Allianceがノキアの参加凍結の決定を受け、今後の方向性を模索していた。

Scanlan氏によると、オープンRANには多くの問題があるという。オープンRANは標準化がされておらず、既存のネットワークインフラとの統合も容易ではなく、5Gの展開が猛然と進む時期がすでに始まっており、それに対応するのには間に合わない、と氏は言う。

「オープンRANは実現しないというわけではありません。さまざまな形で実現するだろうと思いますが、……(中略)……商業的な観点から見て、実際のところ遅すぎたのではないかと思います」と氏。

 

オープンRAN標準化の不足

「問題は標準化がされていないことです。あれは同業者団体です。標準化がなされておらず、標準と呼べるものがなければ、協力も競争もできず、オープンRANを先へ進めるイノベーションを起こらないでしょう」と氏。O-RAN Allianceのような団体は「ただの友人の集まり」だとした。

オープンRANを成功させるためには3GPPに提起して約200カ国の代表者の関与を求め、「(3GPPに集まっている)さらに多くのベンダーや学界などからの貢献者と協力し、様々な素晴らしいアイデアを出し合って標準を作成し、相互運用性を実現できるようにするべきです。それが必要なことです」と氏は言う。

標準化されなければ、オープンRANのような技術はバラバラなものになり、相互運用性が失われることになる――ほとんどのネットワーク事業者にとって受け入れたくない結果だ、とScanlan氏は言う。

また、オープンRANのメリットとしてよく挙げられるコストの低さについても、推進派の紹介の仕方は不誠実だと氏は言う。「通信事業者にとって問題となるのはCAPEXではなく、実際のところOPEXです」。基地局当たりの平均コストの約65%がOPEXだという。設置スペースの賃料、バックホール費用、エネルギー消費などだ。平均して基地局当たりOPEXの約12%をRANが占めている、と氏。

オープンRANのもう1つの課題は、セキュリティと責任の所在だ。一般的なオープンRAN環境では、「3社か4社のベンダーが各々提供したコンポーネントを繋ぎ合わせることになります。これがセキュアであり、(パフォーマンスを)実現し、(約束された運用コストに収まることを)保証するのは誰の責任になるのでしょうか」と氏は問うている。

「サイバーセキュリティの観点から見て、オープンRANはより安全なものになると誰もが言います」とScanlan氏。「まあ、私は同意できません。つまり、誰が責任を取るのかということです」

 

ファーウェイ、モバイルコアとエッジで仮想化の限界に達する

ファーウェイは、vRANの見通しについてもほとんど同じくらい懐疑的だ。Scanlan氏によると、仮想化はコアネットワークでは効果が実証されており、モバイルエッジコンピューティングでも多くのビジネスチャンスをもたらすと思われるものの、エッジに関してはセキュリティの課題が残っているという。

「仮想化RANでは、仮想化によって何をしたいのか、ターゲットとなる目標は何か。クラウドに資産を置くときに私たちがまずしたいのは、柔軟性とリソースの拡張性を確保することです。また、ソフトウェア主導であるために変更ができますし、下りのあらゆるものをクラウドから実行することができます」と氏は説明する。

また、vRANの基本的な理念である市販ハードウェアの仕様に関連する、品質とパフォーマンスの問題もある。

ファーウェイは4年ほど前、5G機器にコモディティ化したチップを使用することを検討したが、「基板レベルでのジッタが高すぎることが問題でした。それではレイテンシの面で当社が求める目標を達成できないため、チップを自社開発しなくてはならなかったのです」とScanlan氏は言う。

長年ファーウェイの幹部を務めてきた氏は、vRANやオープンRANがもてはやされる根本的な要因についても言及した。技術革新に政治が絡むことで複雑さが生じ、手っ取り早い方法が求められていると指摘する。

「実に多くの人々がさまざまな理由で深い考えもなく仮想化について語り、vRANやオープンRAN、あらゆるものについて口にします」と氏。「もし、技術開発をしているわけでもなく、ネットワーク事業者側にいて各技術の課題や問題点を理解しているわけでもない人が何かをしたいというのならば、その理由の多くはおそらく政治的なものであり、あまりよく考えられたものではないのです」

https://www.sdxcentral.com/articles/news/huawei-cto-disses-virtualized-open-ran/2021/09/

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