生成AIは仕事を奪うのか=それを許した場合には
「生成AIは私の仕事を奪うのだろうか」という疑問には、業界を問わず、多くの労働者が頭を悩ませている。
専門家の答えは「はい」でも「いいえ」でもある。
生成AI技術が最近の歴史の中でも最も破壊的な変化をもたらすものになることに疑いの余地はない。自動化に適した仕事の存続を揺るがす一方、他方ではリーダーやククリエイティブな人々の力になり、全く新しい職務や職業上のチャンスが生まれることになるだろうと多くの専門家は言う。
「労働者は必ずしもAIを脅威と捉える必要はなく、むしろ変化と捉えるべきです」。AIの専門家でコンテンツ作成プラットフォーム「Promptify」 の創設者、Chris Gomes Muffat(クリス・ゴメス・マファット)氏 は述べている。「歴史を振り返ると、新しいテクノロジーは例外なく古い仕事の存続を揺るがしてきましたが、同時に新しい仕事も生み出してきました。前向きに考えて適応することが必要です」
主な推進要因は自動化、スキルのミスマッチ、コスト削減
統計を見ると、 状況は暗いように思える。 10社中4社のリーダーが、2024年にはAIが従業員に取って代わる可能性が高いと述べている。さらに、3分の1以上(37%)が、2023年にAIが従業員に取って代わったと回答している。
IBM、Google、Microsoft、 Dropbox がAIツールの導入に伴いレイオフを発表した大手テクノロジー企業だが、ほんの数例だ。他にも無数の例がある。
当然のことながら、多くの労働者が自分の職業 について不安を抱いている。米SurveyMonkeyの調査 によると、労働者の42%はAIが自分の仕事に及ぼす影響を懸念しており、すでにAIを職場で使用している労働者は、 AI技術に不安を感じている可能性が2倍高いことがわかった。
しかし、何がこのようなレイオフの原因となっているのだろうか。
まず、自動化 が持つ利点があるとMuffat氏は述べている。AIを搭載したマシン は、単純に、ある種の仕事を人間よりもはるかに速く効率的に、そして長時間実行できる。さらに、スキルのミスマッチもある。労働者がAIシステムの使い方や管理方法を知らなければ、職を失うかもしれない。
さらに、コスト面の理由もある。マシンは手当や休憩などの福利厚生を必要とせず、24時間稼働できるため、要は企業のコストを節約できる。
「AIは24時間365日実行できるため、企業が顧客により良いサービスを提供するのに役立ちます」と氏は言う。「例えば、チャットボットは、人間の労働者が勤務時間外であっても、1日中いつでも問い合わせに答えることができます」
AIが人間に取って代わることが懸念される理由
しかし、人間が職を失う以外にも、AIは完全無欠ではないし、欠点がないわけでもないという問題がある。
「AIがミスを犯した場合、大きな問題が起こる可能性があります」と氏は言う。
例えば、サイバーセキュリティシステムを運用しているAIが脅威を見逃せば、貴重なデータの損失やその他の深刻な問題につながる可能性がある。
もし企業がAIに依存しすぎていれば、システム障害やハッキングが発生した場合、その影響は「悲惨」なものになりかねないと同氏は言う。
「1つのカゴにすべての卵を入れるようなものです。カゴに何か問題が起きれば、すべての卵が割れてしまうかもしれません」と氏は言う。
2つ目は、公平性と透明性に関する問題だ。例えば、企業がAIを使ってローンの利用資格や雇用の決定を行う場合、そのAIモデルがどのように決定を行っているかを非常に明確にしなければならない。
「そうしないと、誰も気づかないうちに不公平な結果や差別につながりかねません」と同氏は言う。結局のところ、「他のツールと同様に、重要なのは、効率と人間味のバランスを取りながら、それをどう使うかです」
職業上のチャンスでもある
とはいえ、AIは労働者に大きなチャンスをもたらすものでもあると専門家たちは主張する。
まず、AIは新たな職業と雇用を生み出している。人々はシステムを設計、管理、保守するとともに、最適に使用する方法を知る必要があるからだ(プロンプト・エンジニア など)。
氏は、AIの登場によって、コンピュータが(まだ)太刀打ちできない創造的、社会的、技術的スキルへの需要も高まっていると指摘した。
「AIは人間の役割を代替するというより、人間の強みを強化できるものです。混乱と同時に多くの機会も生まれます」と同氏は言う。
労働者が競争力を維持し、この避けられない未来に備えるには、AI関連の新しいスキルに適応、習得しなければならないと同氏や他の専門家たちは強調した。
実際、IBMの調査では 、2024年に採用活動を行う企業の96%が、候補者がAIスキルを持っていればプラスになると回答、83%がAIスキルは現在の従業員の雇用維持、さらにはキャリアアップに役立つと回答している。また、各社の経営陣は「今後3年間でAIと自動化を導入する」と回答、従業員の40%がリスキルを必要とすることになるという。
労働者はすでにAIを活用している。マイクロソフトの調査では、3分の1近くが仕事でAIを利用、そのうち72%がAIによって生産性が向上したと回答している。さらに、70%が「自分の作業負荷を軽減するために、できる限り多くの仕事をAIに任せる」と答えている。
「AI技術は、仕事をより簡単にし、さらに面白くするのに役立ちます」と氏は言う。「それは、退屈で繰り返しの多いタスクを処理してくれるスマートなアシスタントがいるようなものです」
例えば、AIは大量のデータを分類して有用なパターンや洞察を見出だすことができる。人間がやれば数時間、数日、さらには数週間かかる作業だったかもしれないと同氏は言う。
「こんな風に考えてみてください。AIは怖いモンスターというより、私たちに楽しくて新しいゲームを教えてくれる、クールな新しい友達のようなものかもしれないのです」と氏は言う。「AIを怖がるのではなく、ゲームに参加してみませんか。ルールを学ぶなどの課題がないわけではありませんが、それは可能ですし、素晴らしいチャンスにつながる可能性があります」
AI活用には既存の労働者への投資が必要
組織も自らの役割を果たす必要があると専門家たちは強調する。AI時代に競争力を維持するには機敏性が必要だが、短期的な成長痛を和らげるために思いやりのあるアプローチを取る必要がある。
組織自身と従業員の両方に利益をもたらすために、組織はワークショップ、オンラインコースや学術パートナーシップを通じて、既存の従業員のトレーニングと能力開発に投資することが可能だ。氏は、これによって従業員のスキルプールを構築・強化できるだけでなく、「従業員が評価され、投資されていると感じられる」ため、既存の従業員の士気も高まると指摘する。
組織がAI技術を効果的に活用するための従業員のトレーニングに重点を置いているため、今日の「より装備の整った現代的な従業員」はスキルセットを強化できるようになる、と米PwC の製品&テクノロジー最高責任者、Joe Atkinson(ジョー・アトキンソン)氏 は語る。
「結局のところ、生成AIであらゆる仕事がなくなるということはありません。むしろ、仕事というものが変化し、生成AIを会社の有利になるように活用する準備ができている、より装備の整った労働力が育成されていくでしょう」とAtkinson氏は言う。
AI技術の習得で素晴らしい未来のキャリアが約束される
しかし、労働者は企業が行動を起こすのをただ待っているのではいけない。Muffat氏は、トレーニングやオンラインコースに積極的に参加し、AIで広く使われているPythonなどのプログラミング言語を学ぶべきだと述べている。
そして最終的には、「AIの専門知識に対する需要が高まっているということは、将来の素晴らしいキャリアを確保するチャンスがあるということです」とMuffat氏は言う。AI技術を学べば「開拓者となるエキサイティングな機会」につながる可能性がある。重要なのはこの技術に適応し、AIとともに成長することだ。
長期的には、AIと人間のコラボレーションは「より生産的で革新的な社会につながる可能性があります」と同氏は述べる。「肝心なのは、この移行をどのようにコントロールし、全員が確実にその恩恵を受けることができるかということです」
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