KDDI、世界初のSA方式5GオープンRAN仮想化基地局を稼働
KDDI、サムスン、富士通の3社が世界初となるSA(スタンドアロン)方式の5GオープンRAN仮想化基地局を稼働させたと発表した。
基地局はサムスンの仮想分散ユニット(vDU)と仮想中央ユニット(vCU)、富士通のMassive MIMO無線機で構成されており、KDDIの既存の5Gコアネットワークにトラフィックを伝送している。
KDDIの説明によると、O-RAN標準に準拠したサムスンの仮想RAN(vRAN)ソフトウェアを市販サーバで稼働させ、サムスンのベースバンドユニット(BBU)、富士通の無線機をオープンインターフェースで接続して利用しているという。
KDDIは国内の他の地域でも同じ構成でオープンRANを展開する予定だとしている。「本基地局を皮切りに、KDDIとサムスンは日本の他の地域でもオープンRANを展開していく予定です。両社は全国展開を検討しておりますが、現時点で基地局数を公表することはできません」。サムスンで日本でのネットワーク事業を率いる岩男恵常務は質問に対して答えている。
また、今回5GオープンRAN基地局を1局展開したのは試験や概念実証(PoC)ではなく、「日本での商用展開を開始する」 ための取り組みであると強調した。
サムスン、vRAN、オープンRANの特徴を区別
サムスンにはO-RANにも準拠したvRAN機器・vRANソフトウェアを取り合わせたポートフォリオがあり、その方向性を選んだ通信事業者との契約を早期に数件獲得している。米ベライゾンと大規模なRAN契約を結び(ベライゾンは通信事業者として初めてサムスンの新しい機器を商用展開)、2021年早期には同社初の5G vRAN製品ポートフォリオを発表した。
また、英Vodafoneによるイングランド南西部とウェールズ全体への基地局展開計画(2,500局)にも機器を提供した。
岩男氏によると、vRANとオープンRANが持つ唯一無二かつ相補的な面についてのサムスンの見方を知れば、Massive MIMO無線機による次世代モバイルサービスの潜在能力がよく分かるという。
「オープンRANではRANの内外でオープンかつ相互運用可能なインターフェースが使われます。一方、vRANではBBUの専用ハードウェアを柔軟なソフトウェア実装に置き換える仮想化ソフトウェアアーキテクチャを採用しています」。氏は説明する。
「仮想化されていないオープンRANや、オープンでないvRANというものも考えられます」と氏。「vRANがソフトウェア中心のアプローチでハードウェアとソフトウェアを分離するのに対し、オープンRANはRAN要素の相互運用性をベースにしており、BBUと無線機の間でオープンインターフェースを利用、マルチベンダー環境を支えることができます」
KDDI、5GオープンRANの拡大を予告
サムスンが提供するO-RAN準拠の5G vRANハードウェア・ソフトウェアは、これまでにも日本や英国の商用ネットワークに導入されている。今回のKDDIのケースで異なるのは、SA方式の5Gコアネットワークコンポーネントが利用されていることだ。
5GオープンRAN基地局を利用している点も非常に特徴的だが、5Gコアネットワークも未だに世界でも驚くほど数が少ない。米調査会社Dell’Oro Groupのリサーチディレクター、Dave Bolan氏によると、1月の時点でSA方式5Gネットワークの展開例は19例しかない。
KDDIは自社のSA方式5Gコアネットワークによって、ネットワークスライシング、マルチアクセスエッジコンピューティング(MEC)、高速化、低遅延化を実現できると話している。同社は今後のオープンRAN計画の詳細については明らかにしなかったが、川崎に設置した新基地局が成功裡に稼働していることで、地方を含む日本全国への展開を加速させるようだ。
Matt Kapko, senior editor at SDxCentral, covers 5G network operators, radio access network suppliers, telco software vendors, and the cloud. He has been writing about technology since before the dawn of the iPhone, and covering media well before it was social. Matt can be reached at mkapko@sdxcentral.com or @mattkapko.
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