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文:Julia King

ローコード/ノーコードで人材不足を解決=落とし穴も

ローコード/ノーコードで人材不足を解決=落とし穴も

世のDevOpsチームはソフトウェア開発者の不足に悩まされているが、ローコード/ノーコードで自動化を行えば開発業務を委任することは可能だ。米ガートナーの予測では、ローコード/ノーコード開発市場は2023年に20%近く成長、2026年までに450億ドル(約6兆430億円)近くの市場規模に達する見込みだという。一方、自動化だけで開発チームの業務を減らせる程度については限界があるとする専門家もいる。

DevSecOpsソフトウェアを提供する米DuploCloud(デュプロクラウド)のVenkat Thiruvengadam(ヴェンカット・ティルヴェンガダム)氏によると、DevOpsエンジニアは「見つけるのが本当に、本当に難しい」という。「DevOpsエンジニアのスキルセットというのは他とは異なります。開発者でもあり、運用者でもある必要があります――運用者であるということはセキュリティやコンプライアンスなどの知識もあるということです。SaaSの世界ではなおさら必要です」

「通常、運用が得意な開発者だとか、ソフトウェア開発が得意な運用者というのは見かけません。セキュリティでも同じです。DevOpsが他と非常に違うのはその部分です」。米SDxCentralの取材で語った。

Thiruvengadam氏としては、DevOps市場は現在の形のハイコード開発やIaC(Infrastructure as Code)に多くの時間をかけすぎてきたと考えているという。エンタープライズコンピューティングがクラウドに移行していくなか、新しいインフラで実施するDevOpsは「超複雑」なものとなった。ローコード/ノーコード ソフトウェアを利用すれば、要は「DevOps・アズ・ア・サービス」を作成することができ、開発・運用スキルセットを「大衆化」することができる。

「そもそも、アズ・ア・サービスの類はいずれも繊細な部分は伏せて結果を提供するというものです。人々がローコードやノーコードでやりたいと考えるのは、その方が簡単だからです」と氏。「プログラムを書き、コードを書き、コードを検証するとなると、もっとずっと多くのスキルセットが必要です」

ローコード/ノーコード開発プラットフォームを作っている企業は大量にある繊細な部分を理解している必要がある。そしてエンドユーザーには抽象化したはるかに軽量なものを提供している。たとえばDuploCloudはクラウド自動化プラットフォームを提供、クラウドインフラのセキュリティ保護と運用を「子供がレゴブロックを組み立てるように簡単に」組み合わせることを可能にしている。社名はレゴのデュプロ(Duplo)シリーズから取ったという。

「つまりは、新しい技術があったらすぐに使い始めることが可能だということです。裏側がどうなっているのかを知ろうとして多くの労力を費やす必要はありません」と氏。「新しい技術の導入は――どんな技術でも――ローコード/ノーコードで簡単になります。はるかにシンプルな消費モデルです」

AIや機械学習、スケーラビリティ、開発スピードの向上や各種の統合が後押しとなり、推定では2025年までにローコード開発者の最大50%がIT企業以外の出身者となると言われている。

 

開発における人間の役割は「なくなることはない」

業界ではローコード/ノーコードでの自動化について、世界的なDevOps人材不足に対する緩和策になるとプラスに考えている人が多い。とはいえ、考慮しておかなくてはならない但し書きもいくつかあるという。独LeanIXのバイスプレジデント、Dominik Rose(ドミニク・ローズ)氏が語った。

Rose氏によると、AIや自動化は多くの面でソフトウェア開発の効率を上げることができる一方、創造性の面ではもともと限界があり、開発は技術だけでなく「人の感覚」を必要とする営みだという。

「ソフトウェア開発や製品作りは豊かな共感力を必要とする技能だと考えています。何を優先して何を捨てるかの判断を毎日のようにしなくてはなりません」と氏。「この仕事がなくなることはないでしょう」

最近のAIで可能になった芸当や自動化技術がなおも進展していくペースには「驚かされる」と氏は言う。とはいえ、テキスト処理によって情報を集約するChatGPTなどの新たなAIツールはまだ「限られた範囲の課題」を解決できるに過ぎない。

「この技術では解決できない領域は他にも山ほどあります」と氏。「人としての感覚や共感力、トレードオフについて考えたりなどの仕事が必要なくなることはないでしょう」

 

人員の最適化が自動化への反発を招く

Thiruvengadam氏によると、現在の自動化技術では、たとえタスクの95%を自動で完了できるユースケースであったとしても、人間による監視やアクションは必要になるという。企業にしてみれば、給与を支払っている従業員の代わりに自動化を利用して業務を行うことに消極的になる要素だ。

「どのみち仕事の半分はお高いスキルセットを持った人材を雇わないと処理できないのでしょう、と人々は思うでしょう。手も埋まっていないし給与も払っているのだから、全部やってもらったほうが結局良いのではないか。なぜシステムを2つも扱わなければならないのか――と」

さらに、ローコード/ノーコードの自動化については人員を最適化できるということが大きなメリットの1つとしてアピールされている一方で、これに対しては業界の人々から反発の声も上がっている。

「仕事がなくなるわけではなりませんが、状況は変わるでしょう」と氏。「長い間やってきたことから一歩踏み出して、新しいことに取り組んでいかなくてはなりません」

氏によると、ローコード/ノーコード プラットフォームの開発企業はすでに信頼できる自動化技術を構築できているという。とはいえ、意思決定権を持っている人々を説得することが普及に向けた最大の障害の1つになっているとした。

「今の仕事の仕方をやめよう、と誰かを説得するのは時として難しいものです」と語った。

Low code/no code solves skill shortages, but there’s a catch

Julia King
Julia King Reporter

Julia King is a reporter at SDxCentral covering secure access service edge (SASE), secure service edge (SSE), and SD-WAN. She also writes the monthly Money Moves and Headcount articles. She graduated from the University of Colorado at Boulder with a degree in Journalism and Spanish. Julia can be reached at jking@sdxcentral.com

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Julia King is a reporter at SDxCentral covering secure access service edge (SASE), secure service edge (SSE), and SD-WAN. She also writes the monthly Money Moves and Headcount articles. She graduated from the University of Colorado at Boulder with a degree in Journalism and Spanish. Julia can be reached at jking@sdxcentral.com

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