MWCバルセロナに見る、5Gの本当の失敗
「MWCバルセロナ」は、名目としてはモバイル通信業界が一堂に会する年に1度のきらきらしたイベントだ。今年も世界中から人がやってきて、業界でも最先端のことがらについて話し合い、飲み交わし、推測し合う機会となった。まさに輪になって『クンバヤ』を歌うようなひとときだ。
しかし、すべて嘘だと私は言いたい。
今年のMWCバルセロナは、形の上では例年通りの輝かしいイベントだったかもしれないが、MWCの年次見本市なら毎回そうだと思われているようなイベントには全くならなかった。つまり、「次は何だ?」と全員で問いかけるようなイベントだ。
( 先にお断りしておくが、私は今年のイベントに実際に足を運んだわけではない。一方で、例年は時差ボケでイベント期間中から終了後も1週間はぼんやりしていることが多く、今回はいつもより明瞭に客観視できているとも思う)
数字と成功はイコールではない
数字で見ると、今年のイベントには10万人を超える人が参加し、会場参加の人たちの話では、来場者数や地下鉄の混雑具合もコロナ禍以前の水準に戻ったようだ。まったく素晴らしいことなのだが、私としては、失敗したイベントに大勢の人が参加していたということしか察せない。
私が今回のイベントに批判的になっているのは、実に気軽に「5G」という言葉が使われていたためだ。
5Gだって?
5G!
今は何年だったろうか。2015年にも見たような?
10年近く前に熱く語られていた用語が、今年のイベントでもまだ使われているという事実に、みんな本当に違和感はなかったのだろうか。
21世紀も四半世紀を過ぎようというのに、世界で最も未来志向で技術的にも進んだ業界の1つが、1つの用語を17秒*より長く使っていて気にならないのだろうか?
何が起こったのだろう。私たちの移り気な性質はどこへ消えてしまったのか。私たちはスマートフォンの画面をスクロールしすぎて溝を作るような人間ではないのか。
5Gが現状に照らして実際に、具体的に扱えるテーマであることは理解している。主催のGSMAは世界の5G接続数が16億件に達したと、何やら嬉しそうにアピールしていた。皆さん、素晴らしい成果です。さすが。お見事。私たちはやりました!
しかし、何かが成功したから、うまくいったからと言って、いったいいつからこの業界はその栄誉に安住するようになったのだろう。
この界隈には、古いが安定稼働していて収益も生み出している技術があると気づく暇すらなく、次の新しいものを考え出すことだけを任務としているような、熱心なプロフェッショナルがいるものではなかっただろうか。
現状を理由にし始めたのはいつか
今年のイベントでも、5G-Advancedや、さらに先の6Gに関する議論を盛り上げようとした人々がいたことは知っている。でも、本来欠かせないはずのマーケティングや大胆な文句での宣伝、騒々しいほどの支持の表明がどこで行われただろうか。5G-Advancedにはまだ公式仕様がないとか、6Gはまだ何年も先の話だとか、そんな話は聞きたいのではない。
この業界はクレイジーな場所になっていたのだろうか。いつから未来を生きることよりも、現実の状況がものを言うようになったのだろう。
茶番を何とかするため、AIという言葉を可能な限り多くの新アイテムに取り入れ、業界は進歩していると思えるようにする試みがあったことも知っている。だが、これは怠慢に過ぎない。こうした人たちは、本当に新しいものは何もなかったという事実から目を逸らさせようと考えたのだ。
今年のMWCバルセロナがおかしかっただけだろう、業界が一刻も早くあの時のことを忘れてくれますようにと祈るしかない。
それよりも良いのは、全員でこの明らかな失敗を帳消しにすべく注力することだ。次の機会で必ず挽回しよう――「MWCバルセロナ2025―7Gの年―」で。
*訳注:短編動画の適切な長さは17秒までとする説がある。
電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
X(旧Twitter):@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime
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