ノキアがデータセンターとAPIにますます注力=RAN事業は苦戦
ノキアがこのところ、従来の通信事業者向けRAN(無線アクセスネットワーク)事業とは異なる事業に傾注している。データセンターやクラウド向けの領域で商機を追っているのだ。
直近では、データセンタースイッチ製品でNOS(ネットワークOS)の「SONiC」を正式に サポートすることを決めた。マイクロソフトが開発し、現在はLinux Foundationの傘下プロジェクトとなっているNOSで、ノキアの次世代のデータセンターファブリックソリューションで選べる選択肢となる。
統合にはノキアのイベント駆動型自動化プラットフォームを使用し、SONiCを使用した機器の管理・自動化も行えるようになる。
データセンター担当バイスプレジデントのMike Bushong(マイク・ブション)氏が担当したブログ記事では、SR Linux(ノキアのNOS)の提供も継続するとしている。
「オープンソースのSONiCに慣れ親しんでいる人からすると、当社からソリューションを購入できるようになったということになります。これまで考えもしなかったことかもしれません」と氏。「SONiCに関心のある人々も、試しにハードウェアを購入し、SONiCとLinuxどちらが自社の環境に適しているかを評価することが可能になりました」
「ノキア社内のエンジニアリングの中で、SONiCがいつも扱っているのとは異なる要素かというと、そんなことはありません。当社はSONiCのコミュニティに積極的に参加しており、特筆すべき貢献もしてきました。たとえばSONiCを搭載したシャーシ型製品の提供、ARMへの移植、設置面積を小さくする最適化などです」。関連して、マイクロソフトにデータセンター用スイッチング機器を供給していた契約が5年間延長された件についても述べている。
ノキア、クラウドAPIで支持を獲得
ノキアは少し前に、APIサービスを提供する米ラピッド(Rapid)を買収している。クラウドAPI戦略のさらなる強化を目指したものだ。
これを受けて、月間で最大40億件のAPI呼び出しがあるラピッドの開発者向けAPIマーケットプレイスが、ノキアのNetwork as Codeプラットフォームに統合される。買収の金銭的条件は明らかにされていないが、報道によると買収額は1億ドル弱とされており、ラピッドがかつて誇った評価額10億ドルを大幅に下回るものとなっている。
ノキアは以前からクラウド事業者向け、開発者向けのAPI強化を目指している。競合のエリクソンが通信業界向け事業に注力しているのとは異なる方針だ。
「当社は(中略)競合他社とは少し異なるアプローチを取っています。こうしたものはすべて、徐々に開発してできてきたものです」。直近の決算説明会で、Pekka Lundmark(ペッカ・ルンドマルク)CEOが説明している。
「私たちは、この市場に参入するに当たって、従来型のベストプレイヤーを買収する必要はないという結論に達しました。自然な形で発展させており、とても順調に来ています。このプラットフォームは1年前に発表したものですが、現在ではエコシステム全体で20社以上のパートナーに参加していただき、そのうち16社がCSPとなっています。(中略)このように、私たちのAPIを使っていただける開発者に対して、非常に魅力的なネットワーク基盤を提供できています。全体として、業界にとって良いことだと考えています」
APIに対するノキアの取り組みは注目すべきものになりうると調査会社も指摘している。ABIリサーチが最近発表したレポートでは、通信API分野全体の市場リーダーであり、トップイノベーターでもあるのがノキアだと評価している。
「ネットワークAPIを提供するに当たり、ひとつにまとまった形でポートフォリオを構築できていること、設定可能性や標準化、内部APIや外部APIといった通信事業者のニーズをすぐに解決できるものになっていることがトップイノベーターと位置付けた理由です」とレポートにはある。「ノキアはパブリッククラウド事業者の間で公平性を保つ方針を取っており、通信事業者が希望のハイパースケーラーを選択する自由があることも注目に値します」
RAN事業の見通しは不安定
ノキアはデータセンター向け事業とクラウドAPIが前進している一方、従来の通信RAN向けでは苦戦が続いている。
最近では、米通信大手のAT&TとベライゾンがRANの拡張計画を発表し、契約先にノキアの名前がないことが注目された。AT&Tは現在使用しているノキア機器の撤去を進めており、ベライゾンも数年前にノキア製RAN装置の購入を止めている。
ノキアの経営陣は2024年第3四半期の決算について、北米とインドでの販売が減速し、モバイルネットワーク向けの売上高は前年同期比で17%減少したと述べた。
米国市場では苦戦する一方、他の市場ではRAN向けについても順調に推移している。
先月下旬には、ドイツテレコムの契約獲得を発表した。ドイツ国内3,000か所の基地局でノキアのオープンRAN機器を使用する計画で、ノキアは再び同社に機器を提供することになる。さらに、新規導入される富士通のオープンRAN機器とノキア機器の統合も行う。オープンRANの相互運用性を1歩進める、建設的な契約だ。
とはいえ、調査会社の指摘によると、RAN市場ではエリクソンやファーウェイといった上位競合とノキアの差は広がり続けている。
決算説明会では、Lundmark氏がこうした苦戦を認める一方、他の分野に商機があることを指摘した。
「来年は通信事業者のTAMがいくらか回復するとされていますが、当社としては現実的にならなくてはなりません」と氏。「今後、通信事業者のTAMが大きく成長することはないでしょう。通信向けの売上高を伸ばすにはシェアを奪うしかありません。原価企画を行う分野であって、成長市場ではないのです。(中略)当社が向こう数年のあいだ最も大きな成長目標を掲げるのは、データセンター向け事業です。他の分野でも成長を目指しますが、最大のターゲットはデータセンターです」
電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
X(旧Twitter):@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime
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