ノキア、O-RAN Allianceでの活動を凍結=中国による介入を懸念
フィンランドの通信ベンダー、ノキアは設立当初から参加している業界団体「O-RAN Alliance」での活動を暫定的に休止したと発表した。中国の複数のメンバー企業が米国政府のブラックリストに載っていることを懸念したためだ。
今回の決定は現時点では暫定的なものではあるが、グローバルベンダー各社が互いに協力して重要な技術革新に取り組んでいくうえで、米国政府が国家安全保障上の脅威とみなしている多数の中国ベンダーへの規制に抵触することを避ける難しさが浮き彫りになった。
業界団体は通常、グローバルな支持を得ることを目指しているが、それには業界で大きな力を持つ中国のベンダーの関与が欠かせない。最近になってO-RAN Allianceの一部のメンバー企業が米国の事実上のブラックリストであるエンティティ・リストに追加され、ノキアはO-RAN Allianceとの活動休止を選択した。
ノキア、O-RAN Alliance側に結論を委ねる
「ノキアは主要ベンダーとして最初に参加したO-RAN AllianceとオープンRAN技術に対し、引き続き強固なコミットメントを維持します。一部の参加企業が米国のエンティティ・リストに追加されたため、同団体と進めている技術的な活動を現段階で一旦休止します。同団体が検討を行い、結論を出すまでの時間を提供するのが賢明だと考えます」。ノキアの広報担当者はステートメントで述べている。
O-RAN Allianceが中国政府系企業と袂を分かつ可能性は低い。同団体は、米AT&T、ドイツテレコム、韓国SKテレコムが設立した「xRANフォーラム」と中国系業界団体「C-RAN Alliance」が2018年に合併してできたものだ。
デンマークのコンサルティングファーム、Strand Consultは2020年後半、O-RAN Allianceのメンバー企業のうち44社が中国軍関連企業または中国政府所有企業であり、その中には複数の米国政府機関がセキュリティ上のリスクとみなす企業が複数社含まれている、と指摘した。「中国の国有企業がO-RAN Allianceのメンバーの5分の1以上を占めていることを考えれば、同組織における中国政府の影響力を限られたものにすることはほとんど不可能です」。Strand Consult社のCEO、John Strand氏はリサーチノートに書いている。
ノキアは特に、米国政府による規制対象であるKindroid社、Phytium社、Inspur社の中国企業3社を懸念しているようだ。メンバー企業の中には、米国政府が規制対象の企業とそうでない企業が技術開発で協力することによって米国の法律に違反することはないと正式に認め、この問題を是正するという期待を述べるところもある。
米国の規制当局はオープンRANに向けて些事にこだわるか
「ノキアの懸念を解消するために申しますと、今後ホワイトハウスが明確な説明を行い、過去に通信事業者団体のGSMAやIEEE、ETSI、ISOなどの標準化団体、国連の通信機関であるITUなどに対して行ったのと同様に、各社がエンティティ・リストの規則に違反することなくO-RAN Allianceのようなファーウェイと同じ主要業界団体に参加できるライセンスを当然発行するだろう、と私たちは予想しています」。米Parallel Wirelessのマーケティング担当VP、Eugina Jordan氏はステートメントで述べている。
一方、Strand氏は、ノキアをはじめとする業界大手はリスクの軽減とセキュリティ向上のため、同団体との連携を全面的に再検討すべきだと主張している。
「むしろ、ノキアに続き、O-RAN Allianceのような団体への参加を終了しないまでも暫定的に休止する企業が増えるでしょう。O-RAN Allianceで中国政府が影響力を持っている状況に対する解決策が必要だと多くの人が主張しています」と氏。
皮肉なことに、「オープンRANの表向きの目的は、少なくとも米国では、中国政府の脆弱な技術がネットワークに使用されるのを制限することです」と氏は述べている。じっさい、米国ではオープンRANの開発を採用し資金を提供する理由として、複数の政治家や規制当局がしばしばこの点を挙げている。
「実のところ、O-RAN Allianceの参加企業は6か月ごとにオープンRANの仕様を取り交わしています。つまり、米国のエンティティ・リストに載っている企業を含め、中国の参加企業44社は少なくとも年に2回、新しいオープンRANコードを取得しているということです」とStrand氏は指摘する。
O-RAN Alliance、役割の縮小に直面
Strand氏によると、結論がどうなるかには3つの可能性があり、O-RAN Allianceと同団体がオープンRANに対して果たしている多大な貢献にとって、深刻な課題となっているという。政策立案者が方針を転換し、中国の政府系企業がノキアのような規制対象外の企業と肩を並べてオープンRANを開発することを正式に許可するかも知れないし、O-RAN Allianceが国家安全保障上の脅威と見なされる企業を自発的に排除するかも知れず、規制当局がO-RAN Allianceの下で開発された技術は脆弱で、ネットワークでの使用を容認できないと判断することもあり得る、と氏は説明する。
「多くの人が、ある技術が『オープンである』とブランド化されているというだけで、安全な技術だと誤解しています。実のところ、オープンRANの正式なセキュリティ評価はこれまで公開されておらず、客観的なセキュリティ評価を実施するための『オープン』仕様は一般からはアクセスできません」とStrand氏は述べている。
「Open Networking Foundation」や「Telecom Infra Project」など、オープンRAN技術に取り組んでいる他の業界団体にも米国政府がセキュリティ上の脅威とみなすメンバー企業は含まれている。
O-RAN Allianceとの活動を休止するというノキアの決定は、同社に固有の課題をもたらすことにもなった。オープンRAN技術への取り組みを強化し続けていることはノキアの誇りであり、同社はオープンRANを「無線ビジネスの将来像」とまで言っている。業界をリードするRANベンダーの中でも、オープンRAN技術を最も強く支持する既存企業として同社は際立った存在だ。
「O-RAN Allianceへの貢献を休止したことで、ノキアは明らかな問題を1つ浮き彫りにしました」とStrand氏は結論している。「国家安全保障の担当者を含め、多くの政策立案者はこの問題を認識するのが遅れています。この遅れは国家の安全を脅かすものです。他の企業もノキアの先例に倣うでしょう。政策立案者が行動を起こすまで待つことはないと思われます」
Matt Kapko, senior editor at SDxCentral, covers 5G network operators, radio access network suppliers, telco software vendors, and the cloud. He has been writing about technology since before the dawn of the iPhone, and covering media well before it was social. Matt can be reached at mkapko@sdxcentral.com or @mattkapko.
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