クアルコムの最新5Gモデム=特徴は対応周波数帯、規格、FWA利用
米クアルコム・テクノロジーズが最新の5Gモデム「Snapdragon X75 5G Modem-RF System」(Snapdragon X75」)を発表した。多様な周波数帯をサポートし、まだ固まっていない「5G Advanced」規格に対応し、まだ形成途中のFWA(固定無線アクセス)市場を支えるという多くの目的を担う製品だ。
Snapdragon X75はモデム-アンテナ統合ソリューションであり、Sub6とミリ波の帯域を集約してネットワーク容量を増やすことが可能だ。年内の商用化を目指してサンプルの提供が始まっている。ミリ波については10キャリアアグリゲーション(CA)に対応、つまり最大10個のキャリアを束ねて1つのスーパーチャネルとして扱い、高速化することが可能となっている。Sub6の帯域でもキャリアアグリゲーションを使用するオプションが提供されている。
こうした機能は重要性を増している。通信事業者の中にはさまざまな周波数資産を組み合わせて5Gネットワークを構築している所があるためだ。ネットワークスライシングを活用したエンタープライズ5Gやプライベート5Gのユースケースをよりよく支えることもできる。
また、ミリ波帯・Sub6帯をサポートするコンバージドトランシーバーを搭載、コストと設置面積、電力要件を低減。「X65」を基にしたAIセンサー支援によるミリ波ビーム管理をアップデート、最近発表された「Snapdragon Satellite」機能もサポートしている。
「5G-Advanced」をサポート
同製品は3GPPが5G標準として最近発表したRelease 17もサポートしており、現在策定中のRelease 18にも対応する予定だ。Release 18は「5G-Advanced」と呼ばれるサービスに関するものになるという。
Release 18は2023年12月のステージ3仕様凍結を目指しており、この時点で承認済アップデートを利用したベンダー各社による商用機器の開発が可能になる予定だ。
ある記者会見でクアルコムはRelease 18への対応に自信を見せている。「その件に関しては非常にはっきりとした見通しを持っています。当社はRelease 18に関して多くのことを推進してきました」。セルラーモデム・インフラ担当シニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのDurga Malladi(ドゥルガ・マラディ)氏が説明している。
米ABIリサーチの予測では、2024年から2026年にかけて5G-Advanced無線機が市場で普及し始めるとしている。また、同分野では消費者インフラ市場が先行し、市場で使用される5G基地局の75%が2030年までに5G-Advanced仕様にアップグレードされるとした。エンタープライズインフラ市場は遅れを取り、アップグレード率はその半分程度になると予測している。
クアルコム、5G FWAを支援
クアルコムは最新のFWAプラットフォームにもX75を採用している。これによって同プラットフォームはミリ波、Sub6、Wi-Fi 7、10ギガビットイーサネットをサポートし、X75と同程度のコスト、スペース、電力削減が可能なコンバージドアーキテクチャとなっている。
こうしたサポートは5G FWA市場をめぐる取り組みの強化に役立つ可能性がある、とMalladi氏は言う。
「人々は5Gをベースとしたネットワーク展開がどこに向かうのかについて考え始めています。これは最大の成長セグメントの1つになるでしょう」と氏。「本プラットフォームとその柔軟性を活用すれば、世界全体で5GベースのFWAの導入を加速させることができると期待しています」
調査会社はFWAの将来性について強気な評価をしてきたが、通信事業者の関心度はさまざまだ。
香港の調査会社カウンターポイント・リサーチの予測では、世界のFWAブロードバンドの契約数は2021年末の約7,500万件から急増、2030年までに4億6,200万件に達するとしている。ABIリサーチも世界の5G FWA接続数は2026年までに6,900万件に達すると見ている。
一方、通信事業者の関心度は地域や各社の目標によってまちまちだ。
米国内ではベライゾンとTモバイルUSがFWAを積極的にアピールしており、各々が数百万のユーザーを支えている。一方、AT&TはFWA市場に対しては慎重で、ブロードバンドサービスでは光ファイバーによるアプローチを取っている。
カウンターポイントの主席アナリスト、Tina Lu(ティナ・ルー)氏の指摘によると、欧州の一部の市場は光ブロードバンドインフラの推進に力を入れており、「5G FWAネットワークの展開は遅れている」という。アフリカ、インド、ラテンアメリカ、中国を除く南アジア市場などの地域では光ファイバーの普及率が低く、その分5G FWAの契約数が増加すると同社は予測している。
クアルコムは少し前に「X35」をリリース。5Gの性能面では対極のモデムチップとなっている。3GPPの5G機能縮小規格「NR-Light」に対応、データ量およびリソース消費量の少ない5Gユースケースをターゲットとしたもので、eMBB向けの高速モデムと低速IoT通信の中間的な選択肢として提供されている。
Dan Meyer is Executive Editor at SDxCentral, with a focus on telecom, 5G, radio access networks (RAN), and edge networking. Dan has been covering the telecommunications space for more than 20 years. Prior to SDxCentral, Dan was Editor-In-Chief at RCR Wireless News. You can contact Dan directly at: dmeyer@sdxcentral.com, on Twitter at: @meyer_dan, or on LinkedIn at: dmeyertime.
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