Webスケールのクラウド事業者が持つ影響力は増すばかりだが、5Gベースのサービスを収益化するということとなると、まだ通信事業者が優勢だという。米調査会社MTN Consulting（MTN コンサルティング）が最新の報告を発表した。とはいえ、とはいえ、その支配力はごく弱い。

同社の説明によると、通信事業者はマルチクラウドやハイブリッドクラウド導入でエンタープライズ向けの一般的なモデルを採用すれば、財務面・運用面でのコントロールをある程度維持できるという。MTN Consultingの主席アナリスト、Arun Menon（アルーン・メノン）氏は報告の中で、このアプローチを取れば「単一のクラウド事業者への依存を弱める」のに役立つかも知れないと書いている。

このアドバイスに耳を傾けている通信事業者もある。たとえば米AT＆Tはマイクロソフトと包括的なクラウド契約を結び、5GネットワークをAzure上で運用しているが、他のサービスについては別のクラウド環境での運用を可能にする契約も複数結んでいる。

通信事業者にとっての今後の課題は、増え続ける高度なサービスや機能のコントロールをそうしたクラウド事業者に明け渡すことなく、いつまで独立性を維持できるのかを見極めることになるだろう。Menon氏によると、通信事業者は依存の度合いをコントロールすることはできるが、忍び寄る変化を抑えることは難しいという。

「たとえ通信事業者が社内で、あるいは提携先を通じてクラウド技術を身に着けることができたとしても、Webスケールのクラウド事業者は常に専門性と提供サービスの向上に努めていくでしょう。通信会社がそのペースについていくのは長期的には難しくなります」。氏は言う。「専門家に任せるのが一番いいのです」

5G接続はWebスケーラーにとって課題

クラウド事業者が避けるであろう分野の1つに実際の接続レイヤーがある。ここは通信事業者の領域だ。実際に顧客に信号を送るのに必要な周波数帯やそれに対応する通信鉄塔はほとんどの場合、通信事業者が掌握している。

Menon氏は通信事業者なら乗り越えなければならない規制環境についても言及した。これもクラウド事業者の背筋を凍らせる分野だ。

「通信業界は規制の厳しい業界です。このことはWebスケールのクラウド事業者にとっては大きな障壁です。彼らもセキュリティやプライバシー、いくつかの重要市場では市場支配力の問題をめぐって規制当局とはすでに戦っています」。氏は説明する。

氏の補足によると、通信事業者とWebスケーラーの話し合いはまだ始まったばかりの段階だという。今後進んでいけば、双方がエコシステムにおける自社の位置づけや、自社の利益への影響について交渉する機会を多く得られるという。

「今後注目されるのは、こうした契約によって通信事業者の複雑なネットワークが変革されるとともに、収益やコスト面でのメリットにつながるかどうか、そしてその過程でクラウド事業者がどれだけ大きな進化を遂げるかということでしょう」

https://www.sdxcentral.com/articles/news/telecom-operators-webscale-providers-set-for-5g-tango/2022/05