オープンRANでの進捗をアピール=テレフォニカ、ボーダフォン、ドイツテレコム主導のグループ
欧州の大手通信事業者ドイツテレコム、オレンジ、TIM、テレフォニカ、ボーダフォンが新たにホワイトペーパーを公開した。5社によるオープンRAN推進の共同取り組みに関する進展と現在ある課題について取り上げている。MWCバルセロナ2023を数日後に控える中での発表となった(訳注:原文記事公開は2月24日)。同イベントではオープンRANに関する発表がたくさんありそうだ。
このグループは2021年初頭、基本合意書(Memorandum Of Understanding:MOU)を取り交わしたことで取り組みを開始した。合意内容としては、各社が個別に、また共同でオープンRANを導入するとともに、「O-RAN Alliance」や「Telecom Infra Project(TIP)」などの業界団体、EUや各国の政策立案者と協力してオープンRANが「従来のRANソリューションと同等の競争力」を獲得できるように努めることとなっている。
昨年には進捗状況を発表、セキュリティと持続可能性に関する取り組みを重視しているとした。
今回のホワイトペーパーは5社による最新の進捗報告になる。オープンRANの成熟度やセキュリティ、エネルギー効率に関連する課題についての進展が取り上げられた。成熟度については、従来のRANとオープンRANの考え方を融合させる取り組みが進んでいることをアピール。もっとも、そのほとんどはマクロRUのような「複雑ではない」領域で行われたもので、RUの中でもマルチバンドやMIMOアンテナをサポートする等の高度な機能を持たないものだけを対象とした取り組みとなっている。
一方、もっと複雑な機能については依然として成熟度が課題となっている。そうした機能は高度な5GサービスやRIC(RANインテリジェント コントローラー)等の未来志向のアーキテクチャを支えるために不可欠だ。これについては展開に取り組まなくては始まらない部分もあると同グループは認めている。
関連して、欧州でオープンRANの広範な導入が進んでいないことにも言及しており、原因としてレガシーベンダーとの取引や財務上の不確実性を挙げている。
「欧州でTier1通信事業者のブラウンフィールド(既存)ネットワークへのオープンRAN導入が遅れている主な要因は、従来のネットワークソリューションに関連する既存の契約上の義務に加え、通信事業者やサービスプロバイダー各社が目下苦しんでいる厳しい財務状況が挙げられます」とレポートにはある。「通信事業者がネットワーク更改を進める際に後者の要因が追加投資の妨げになる可能性があり、オープンRANの大規模展開が遅れる原因となっています。次なるモダナイゼーションために新しく契約が結ばれれば、2020年代後半には欧州でオープンRANが広く導入されることになるでしょう」
次のモダナイゼーションは「5G-Advanced」サービスを中心としたものになりそうだ。3GPPが現在取り組んでいるリリース18で仕様が定められる運びとなっている。3GPPは2023年12月のステージ3仕様凍結を目指しており、この時点で承認済アップデートを利用したベンダー各社による商用機器の開発が可能になる予定だ。
米ABIリサーチの予測では、2024年から2026年にかけて5G-Advanced対応無線機が市場で普及し始めるとしている。同分野では消費者インフラ市場が先行し、市場で使用される5G基地局の75%が2030年までに5G-Advanced仕様にアップグレードされるとした。
オープンRANのセキュリティ
欧州のベンダー各社はオープンRANのセキュリティ面についても既存のRANシステムのセキュリティ要件に揃えるという課題に取り組もうとしている。同グループは英国、ドイツ、イタリアの政府機関と協業していることに触れ、欧州委員会、欧州ネットワーク・情報セキュリティ機関(ENISA)に注目していると述べている。
後者については2022年半ばに公開されたOpen RANのサイバーセキュリティに関する報告書が記憶に新しい。
また、GSMアソシエーションやO-RANアライアンスなど、さまざまな業界団体との連携についても言及した。とはいえ、こうした取り組みについては各団体と中国を拠点とする企業・団体との間で現在も協力関係が続いていることが懸念点となっている。
「MoUを結んでいる各通信事業者の調達および見積依頼に参加される全てのオープンRANサプライヤー様は、少なくとも3GPPやO-RANアライアンスが定める定評のある業界標準・仕様に準拠し、各国当局や通信事業者がセキュリティポリシーに基づいて求める要件に準拠していただく必要があります」とホワイトペーパーには書かれている。
オープンRANのエネルギー効率に関する試行錯誤
また、同グループはオープンRAN機器を利用したエネルギー効率の向上を目指し、引き続き取り組みを進めると述べている。現行のオープンRAN対応RUの消費電力要件は従来のRAN機器と同等であり、「スリープモード」等の進展によってオープンRANの効率はさらに向上させられるとした。
また、オープンRANの取り組みで利用されているクラウドインフラのエネルギー効率も向上しているという。コンピューティング環境で使用されるCPUやアクセラレーター技術の進歩、サーバーや基地局タワーの新しい筐体冷却モデル、ベンダー各社やサードパーティーによるエネルギー監視ツールの提供が増えていることにも触れた。
「目的としては、業界全体で使用する統一的方法論を定めることを目指すETSIの標準に対し、結果として得られる構造を提示することです」とホワイトペーパーにはある。
アナリスト企業によると、商用展開へのオープンRANの採用は少し見られるが、多くはシングルベンダーによるものになっているという。
「アーリーアダプターはオープン化へ向かう動きを受け入れていますが、一方でアーリーマジョリティの通信事業者、あるいはRANサプライヤーに広く影響するかという点についてはまだ確実なことは言えません。年初来のオープンRAN市場はマルチベンダーではない展開が大部分を占めています」。米デローログループ(Dell’Oro Group)のバイスプレジデント、Stefan Pongratz(ステファン・ポングラッツ)氏が最近のレポートで述べている。
同社は直近のレポートで、オープンRANの勢いは今年も続くものの、「アーリーアダプターに肩を並べる難易度が上がっていることから」売上高の伸びは鈍化すると予測している。
Dan Meyer is Executive Editor at SDxCentral, with a focus on telecom, 5G, radio access networks (RAN), and edge networking. Dan has been covering the telecommunications space for more than 20 years. Prior to SDxCentral, Dan was Editor-In-Chief at RCR Wireless News. You can contact Dan directly at: dmeyer@sdxcentral.com, on Twitter at: @meyer_dan, or on LinkedIn at: dmeyertime.
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