5G
文:Dan Meyer

米ベライゾンが語る、ミリ波の最大のユースケースは「テイラー・スウィフト」

米ベライゾンが語る、ミリ波の最大のユースケースは「テイラー・スウィフト」

米通信大手ベライゾン(Verizon)はミリ波帯で豊かな周波数資源を保有しており、その活用について探求を続けているが、このほど最も論理的な結論に達した。テイラー・スウィフト(Taylor Swift)だ。

米大手金融機関ウェルズ・ファーゴ(Wells Fargo)が先月28日に開催した年次カンファレンス、第7回「TMT Summit」(テクノロジー・メディア・通信サミット)にベライゾンのEVP兼グローバルネットワーク/テクノロジー担当プレジデント、ジョー・ルッソ(Joe Russo)氏が登壇し、投資家に向けて、ミリ波の理にかなったユースケースの1つが「スウィフティーズ」(テイラー・スウィフトのファン)だと語った。

「私は子供たちと冗談ばかり言っていますが、それはともかくとして、テイラー・スウィフトのコンサートに行ったことがあればお分かりかと思います。その場にいるのは皆そうした人々(集まって何かをしたい人々)で――当社の顧客です――、現地での体験を友人や家族とストリーミングで共有したいけれども、4Gの時代にはそれができずにいたのです。そんな容量はありませんでした」と氏。「当社では、ミリ波を使用すれば、イベント会場でそうしたことを可能にできると分かりました。顧客にそうした体験を提供するのは、ミリ波なしでは不可能です」

テイラー・スウィフトの力と、ネットワークアーキテクチャに与える影響を讃嘆する通信会社幹部はルッソ氏だけではない。

10月末から開催された「Brooklyn 6G Summit」では、米通信大手AT&TのEVP、クリス・サンバー(Chris Sambar)氏が基調講演に登壇し、テイラーがテキサス州アーリントンのAT&Tスタジアムで3日間のコンサートを行った際、スウィフティーズがスタジアムのAT&Tネットワークから送信したデータの量が29ペタバイト近くに上った日があったと話している。同スタジアムでスポーツイベントがある日のデータ使用量は通常約21テラバイトだというから驚くべき数字だ。

「ものすごい人気ですね」と氏は語った。

 

FWAでのミリ波利用……あるいはBEADによる支援

スウィフティーズによるこうした膨大なデータ送信は日常的に発生するものではないが、ミリ波の利用拡大への方途を示す好例ではある。

ベライゾンは5Gの立ち上げ当初、保有しているハイバンドの豊かな周波数資源が持つ速度と容量のポテンシャルを示すべく、ミリ波の利用に重きを置いていたが、マーケティングで5Gカバレッジが重要になるにつれ、徐々にその熱量は下がっていった。その後はポートフォリオにミリ波を追加することに注力し始めている。

EVP兼ベライゾンビジネスグループCEOのカイル・マラディ(Kyle Malady)氏は今年、ミリ波を送信するノード4万個を展開したと述べている。これらを利用すれば、またとない市場機会になる。

ベライゾンは今夏、37GHz帯~39GHz帯の保有周波数帯を使用、屋上に設けた中央集約型の無線基地局と模擬建築に設置した無線機の間で信号を送信するテストを実施した。信号はそこから建物全体に敷設されている同軸ケーブルを介して各モデムに接続したDPU(データ処理ユニット)に送られ、既存の配線を利用してエンドユーザーのルーターにブロードバンド信号を伝送するというものだ。

また、プライベート5GネットワークとFWA(固定無線アクセス)にミリ波帯の保有資産を利用してパフォーマンスを向上させることも検討している。

先月にはバージニア港の現在のWi-Fiネットワークを技術満載のプライベート5Gネットワークに置き換える契約を結んだ。更改後のネットワークでは、Cバンドとミリ波の帯域を含むベライゾンの「5Gウルトラワイドバンド」の周波数を使用する。

急速に伸びているFWAサービスのミリ波対応についても準備を整えている。

「ミリ波については、目下プライベートネットワークに非常に注力していますが、ミリ波を構築できる具体的な場所についても検討しています。それが特定地域のFWAということになるのであれば、実行が可能です」。スイスの大手金融機関UBSが今月4日に開催した「UBS Global Media and Communications Conference」にベライゾンのハンス・ベストベリ(Hans Vestberg)CEOが登壇、投資家に向けて語っている

最近実施した直近の第3四半期の決算説明会では、FWAの接続数が合計で384,000件増加したと報告している。そのうちの3分の1は法人営業チームが獲得したものだ。同四半期末の時点で総接続数は270万件に達している。

ベストベリ氏はその際、FWAサービスの提供エリアを来年からもっと多くの農村地域に広げていく計画だとも述べている。

「当社にとって、さらに大きなチャンスです。サービスが十分に行き届いていない市場が増えており、そうした市場に当社のFWAは極めて迅速に展開されることになるためです」と拡大計画について語った。

米政府の「Broadband Equity, Access and Deployment(BEAD)」プログラムによる支援対象となる可能性もある。同プログラムでは、全米を対象としたブロードバンドサービスの提供地域拡大のために約425億ドルの予算が確保されている。

ベストベリ氏は4日のUBSによるカンファレンスで投資家に対し、ミリ波を利用したFWAサービスはBEADの資金提供の対象とすべきだと語った。

「私は今でも、FWAがBEADの予算に対する最良のソリューションの1つになると考えています…(中略)…なぜなら、はるかに迅速(なソリューション)だからです」と氏。「私たちが皆で情報格差を解消しようとしているところに、すぐにブロードバンドを提供することが可能です」

Verizon: Taylor Swift’s ‘Swifties’ are the ultimate mmWave use case

Dan Meyer
Dan Meyer Executive Editor

電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
X(旧Twitter):@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime

Dan Meyer
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