AT&Tが米衛星通信ASTに周波数をリース=5G接続をリモートエッジへ
米通信大手AT&Tが保有するローバンドの主要周波数を一部、米衛星通信事業者AST SpaceMobileにリースする計画だ。5Gブロードバンドのカバレッジをさらに多くのリモートエッジ ロケーションに拡大する取り組みの一環で、衛星通信サービスとの統合の強化につながる可能性がある。
同社が米連邦通信委員会(FCC)に最近提出した文書では、ASTと長期リース契約を締結したことが報告されている。本契約によってASTは貸与された周波数を使用、AT&Tのサービスを自社で活用できるとある。また、ASTのサービスについて、AT&Tが現在提供しているサービスとのスムーズな統合が可能になるとも書かれている。
「ASTは貸与された周波数に接続しているAT&Tユーザーの携帯電話に直接ブロードバンドアクセスを提供する意向であり、何らの変更または特別なチップセットの使用を行わず、地上波無線インフラの追加・増築も行いません」。米SDxCentralに共有された同文書にはある。「これにより、AT&Tはライセンスエリア内で宇宙通信によるブロードバンド カバレッジの提供が可能になると見込んでおり、自然災害発生後の一時的なカバレッジ提供もこれに含まれます」
AT&Tがローバンドの周波数をリースしたという事実から、この取り組みが真剣なものであることが伺える。ローバンドは伝搬特性が良いことから通信事業者に非常に重んじられている周波数帯だ。AT&Tは最近、ある業界初の5Gアップリンクテストでも850 MHz帯の周波数を一部使用している。
ASTは通信業界で利用する衛星関連の取り組みを続けているが、今回の周波数リースによってこれをさらに強化する。テキサス州に本社を置く同社は標準的な携帯電話とのデータ通信が可能な衛星コンステレーションの構築を進めている。
昨年には試験衛星「BlueWalker 3」を軌道に乗せた。同衛星は最近、サムスンのスマートフォン「Galaxy S22」2台を使った双方向音声通話試験の中でも使用されている。同試験は1台がテキサス州のAT&Tネットワークに接続、もう1台が日本の楽天モバイルネットワークに接続した状態で行われ、英通信大手Vodafoneも参加した。
同試験はASTとAT&Tによる過去の研究が基になっている。昨年後半にはAT&Tのネットワーク担当プレジデント、Chris Sambar(クリス・サンバー)氏がある動画に出演、携帯ブロードバンド通信のカバレッジ拡大にASTの衛星ネットワークを利用する戦略の可能性を大いに語った。
昨年は競合のT-Mobile USがElon Musk(イーロン・マスク)氏のSpaceXと提携、T-Mobile USが保有する2.5 GHz帯の周波数を使用した衛星接続を提供することが大々的に宣伝された。AT&TのJohn Stankey(ジョン・スタンキー)CEOはこれを一蹴、あるBloombergの取材で衛星接続との統合では自社がT-Mobile USを大きく引き離していると語った。
AT&Tと衛星通信=取り組みの歴史
自社の事業に衛星接続を結び付けようとするAT&Tの取り組みはASTとの協力に限ったことではなく、これまでにも積極的に行われている。
2021年には英衛星通信事業者OneWebと戦略的契約を締結、同社が持つLEO(低軌道)衛星コンステレーションを利用してリモートエッジ ロケーションにまで及ぶ法人向けサービスのカバレッジ拡大を図った。約13年前にも米TerreStar Network(当時)と共同で衛星通信を利用したスマートフォンサービスを開始している。
最近では自社で提供する公共安全サービス「FirstNet」向けのポータブル端末を発表、同サービスではバックホールに衛星接続を利用している。
米調査会社MTN Consultingは最近の調査報告で衛星通信市場の競争が激化していると指摘。AST、SpaceX、Lynk(いずれも米)のような新規参入企業の登場、資金調達環境の厳しさ、市場集中といった状況を挙げ、競合企業は自社のアドレサブル市場拡大を余儀なくされているとした。D2D通信、IoT、クラウドベースのサービス等の市場に可能性があるという。
「このような市場機会があるとなると、衛星通信事業者は従来の通信市場を破壊しようとしているのではないか、という考えが頭をもたげることがあるかもしれません。ですが実際には、無線アクセスを提供するサービス事業者は第一に通信事業者であり続けるでしょう」。MTN ConsultingのArun Menon(アルン・メノン)氏が同報告書で述べている。「ユビキタスカバレッジの提供を受けられれば顧客体験を強化することができます。また、衛星通信事業者には、どのように規制上の障害を乗り越え資本フローを安定させるかという大きな懸念事項があります。現在は多くのプレイヤーがひしめいていますが、いくらかは今後3年から5年で姿を消していくことになるでしょう」
AT&T leases spectrum to AST to expand 5G remote edge connectivity
Dan Meyer is Executive Editor at SDxCentral, with a focus on telecom, 5G, radio access networks (RAN), and edge networking. Dan has been covering the telecommunications space for more than 20 years. Prior to SDxCentral, Dan was Editor-In-Chief at RCR Wireless News. You can contact Dan directly at: dmeyer@sdxcentral.com, on Twitter at: @meyer_dan, or on LinkedIn at: dmeyertime.
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