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文:Dan Meyer

米BroadcomとAT&Tの対立が一旦緩和=VMwareをめぐって

米BroadcomとAT&Tの対立が一旦緩和=VMwareをめぐって

VMwareをめぐる米Broadcomと通信大手AT&Tの争いが和解に向かう可能性が出てきた。一方で、数十万社に上るVMwareの顧客には、ゆくゆくはBroadcomの影響を抜け出すという選択肢があることにも変わりはない。

BroadcomとAT&T双方の弁護士が先日、ニューヨーク州の裁判所に共同文書を提出した。争点の解決に向け、口頭弁論期日を10月22日以降に延期するに足る進展があったと述べている(訳注:原文記事公開は10月18日)。AT&TによるVMware基盤の延長利用に伴い、Broadcomが関連サポートサービスを最長で11/17まで継続提供することに同意したとしている。

両社の間では係争状態が続いていたが、解消に向けた大きな進展となった。

事の始まりはAT&TがBroadcomを相手に訴訟を提起したことだ。VMwareが提供する仮想クラウド基盤の利用契約を結んでいたところ、新しくVMwareの親会社となったBroadcomが既存の契約条件を違法に変更したと主張した。AT&Tにも昔から規模で劣る競合を買収してきた来歴があり、ビジネスはビジネスだということは認めている。だからといって、契約条件は維持されなければならないという認識だ。

「新しく所有者となったBroadcomは、VMwareの事業モデルを将来に向かって変更するあらゆる権利を有する」と訴状には書かれている。「ただし、VMwareに関する既存の契約を新しい企業戦略に合わせて遡及的に変更することはできない。Broadcomはまさにそれを行おうとしている」

具体的には、「(Broadcomは)AT&Tに対し、AT&Tが必要としていないソフトウェアやサービスを含む数億ドル相当のバンドルサブスクリプションを購入するように要求し、これを受け入れない限り、以前に(AT&Tが)永久ライセンスを購入したVMwareのソフトウェアに不可欠なサポートサービスの提供を保留すると脅しをかけてきている」と主張した。

該当のサポートサービスには、AT&Tがサーバー約8,600台で75,000個超の仮想マシンを実行するのに利用しているVMwareソフトウェアのサポートサービスが含まれている。「日常的なメンテナンス、セキュリティパッチ、アップグレード、トラブルシューティング」などだ。AT&Tはサポートの必要性を強調して、VMware基盤で運用しているシステムについて次のようにも述べている。「AT&Tの緊急通信サービスを提供するのに不可欠(なシステム)であり、同サービスは、米国政府や全米の無数の警察官や消防士、救急救命士、救急隊員、緊急対応チーム(ERT)、およびその他の広く公共安全に携わる人々が頼みにしているものだ」

訴状では、旧来のVMwareの価格モデルが複雑だったことも明るみに出された。20年以上前に契約を結んで以来、数多くの再交渉や修正を行った旨が書かれている。最も新しい修正は2022年8月に行われたもので、それによって「(AT&Tは)その時点での契約期間の終了前に限り、”単独の選択”でサポートサービスを”最大”2年間更新できる」ことになった。

AT&Tの主張によると、同社がBroadcomに対してこのオプションを行使する意向を通知したのに対し、「Broadcomは更新の履行を拒否」し、「サポートサービスだけの場合よりも数千万ドル高い」コストを支払ってVMwareの新しいライセンスプログラムに参加するようにとあくまで主張しているという。

「BroadcomはAT&Tが望んでおらず、必要ともしていないサブスクリプションの契約代金として多額の身代金を支払わせようとしており、さもないと、AT&Tが世界中に抱えている数百万の顧客の業務に損害を与えかねない広範なネットワーク障害の発生リスクを負うことになると脅している。このような試みは、両当事者の書面による合意の明示的な条項によって禁じられている」と訴状にはある。「従って、AT&Tは恐喝に応じることを拒否し、契約違反及び誠実かつ公正な取扱いの黙示の誓約違反を申し立て、宣言判決及び差し止めによる救済を求めて本訴訟を提起する」

VMwareの顧客、10万社以上が離脱か―他社が獲得可能に

BroadcomとAT&Tの緊張は緩和したものの、VMwareの顧客が抱いている懸念も和らぐということはなさそうだ。

株式調査を提供しているウィリアム・ブレア&カンパニーが最近、VMwareの競合に当たるNutanixを取り上げたレポートを発表している。同レポートによると、VMwareの顧客のうち、40万社以上(インストールベース)が「いずれはVMwareから離脱する」という予測を複数の市場調査会社が出しているという。

一方で、Nutanixから話を聞いたところでは、競合にチャンスがやってくるのはまだ何年も先のことになりそうだとも述べている。VMwareの顧客は複数年の再契約を結んでおり、Broadcomとの契約が終了するのはその期間が終わった後の話だ。ハードウェアの更新サイクルに合わせる必要もある。Broadcomが顧客の維持にどのくらい積極的になるかもわからない(AT&Tが好例だ)。顧客が新しいツール一式に乗り換えて習得する気になるかにもよる。

Broadcomはこれまで、一部の大口顧客に対しては価格設定に柔軟な姿勢を見せている。

「大口顧客に対しては、Broadcomも柔軟であろうとするでしょう。そうした顧客を失いたくないからです」。Nutanixは直近の決算発表を受けてプレス向けの質疑応答を行っている。席上、Rajiv Ramaswami(ラジブ・ラマスワミ)CEOが語った。「顧客はおおむね、価格設定にも、Broadcomが取ったやり方にも不満のようです。顧客ファーストではなく、Broadcomファーストといったところでしょうか。それによって大いに顧客の不安を招いていますし、そうした企業様が当社の方に来られていて、そのうちの多くの企業様と関わらせていただいています」

BroadcomはAT&Tとの騒動をよそに、長期の顧客に対して新しいサブスクリプションライセンスモデルに移行してもらう取り組みを進めている。第2四半期決算説明会では、Hock Tan(ホック・タン)CEOが投資家に進捗具合を伝えた。「既存の最大顧客10,000社のうち、3,000社近く」と契約を交わし、「こうしたお客様には、おおむね複数年契約を結んでいただいています」と述べている。契約額を年率換算すると、今年第2四半期の総額は19億ドルとなり、第1四半期の12億ドルから増加している。

「進捗は順調です」と氏。「まだ決して完了したわけではありませんが、期待通りに移行が進んでいます」

同社がVMwareサービスの価格設定とライセンスモデルを変更した結果、長期顧客の支払いは大幅に上昇した。そうした顧客の多くが代替製品を探している。こうした状況は何度もアナリストに取り沙汰されてきた。

米フォレスターリサーチのプリンシパルアナリスト、Naveen Chhabra(ナヴィーン・チャブラ)氏が率いるチームが最近、あるレポートを作成している。現状を受けて、企業が今後、VMwareの変化に対応していく際に使用できる雛形を提供しようと試みた。レポートによると、Broadcomが変更を実施したことで、製品マーケティングで定番の「5P」――製品・サービス(product)、価格(price)、(デザイン・包装)(packaging)、流通(place)、プロモーション(promotion)、協力者(partners)――のすべてに影響が及んだという。

「あるVMwareの顧客にうかがったのは、現在のVMware製品の使用状況を踏まえて新しいライセンスモデルと製品パッケージのどこに対応するかを確認したところ、価格が500%上昇することになりそうだということでした」。影響の大きさについての記述で、このように述べている。

また、価格の変更があるのは想定内だったことで、以前から氏のチームでは次のように予測していたという。「(世界の大企業の20%が)離脱を――この言葉はとても慎重に解釈していただきたいのですが――VMwareスタックから離脱を始めるでしょう」

「一夜にしてすべてを入れ替えるわけではなく、徐々にですが、始まると思います」と氏。「いま現在、実際にそうなっているのをはっきりと目の当たりにしています。この予測が正しかったと言えるようになるまでに、さらに5か月もかかるということはないでしょう」

Broadcom’s VMware fight with AT&T cools … for now

Dan Meyer
Dan Meyer Executive Editor

電気通信、5G、無線アクセスネットワーク(RAN)、エッジネットワーキングを専門とし、電気通信分野を20年以上担当している。SDxCentral入社以前は、RCR Wireless Newsの編集長を務めていた。
連絡先:dmeyer@sdxcentral.com
X(旧Twitter):@meyer_dan
LinkedIn:dmeyertime

Dan Meyer
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