シスコ幹部、5G事業者に対し重要な投資先を3つ示す
シスコのマススケールインフラストラクチャグループ担当SVP兼GM、Jonathan Davidson氏が5月下旬にJPモルガンが主催するイベントで語ったところによると、5Gの初期段階にあってモバイルネットワーク事業者は3つの重要な投資判断をしなくてはならないという。
その3つとは、無線アクセスネットワーク(RAN)、IPおよび光インフラ、そしてモバイルコアへの投資だ。それぞれの勢いと活動のレベルは、そこから得られる財務的利益に加え、各事業者とその国が持つ周波数帯に大きく依存しているという。
通信事業者やRANベンダーは数十億ドル規模の契約を結ぶと即座にそのことをアピールするが、IPインフラ、光インフラ、モバイルコアインフラにおけるモバイルネットワークのアップグレードについては詳細が伏せられたり、あまり語られなかったりすることがある。しかしDavidson氏によれば、これらもRANにおける活動と同じくらい重要であり、優先すべき場合も多いという。
5Gの初期投資は、通信事業者がIPインフラを構築する必要があるためになされるのが一般的だ。「そのため、まずタワーやセルサイトの建設に費用がかけられます。……(中略)……メトロネットワーク全体の再構築です」と氏は言う。
「5Gの携帯電話を手にしたら、まずスピードテストをしたいと思うでしょう。その結果が期待外れだったとしたら、『古い電話と同じ速さなら、なぜ新しい電話に1,000ドルも払ったのだろう』ということになります」とDavidson氏。
そうした最初の5G体験は重要なものであり、通信事業者がRAN、IP、コアの3分野すべてに渡って投資を行って初めて良いものになると氏は言う。
シスコはインターネットのインフラをフラット化するというビジョンを掲げており、そのためにAcacia製のプラガブル光学機器を含むル―テッドオプティカルネットワーキングポートフォリオを用意している。このことがIP・光インフラのアップグレードにおけるシスコの地位を支えている。また、ネットワークコア分野では十分に確立された事業を行っており、RAN市場でのビジネスチャンスにもますます注目している。とはいえ、その範囲は仮想化オープンRANの展開に対してオーケストレーションソフトウェアの提供を推し進めるというものに限られる。
シスコはvRAN・オープンRANの登場について、両方とも自社のビジネスにとってポジティブなものと捉えている。「RANをめぐり、オープンなエコシステムを作り上げようとするこの動きは非常に重要なものです。RANはインフラにおける最後のクローズドなエコシステムだからです」とDavidson氏は言う。
「無線はこれまでずっとクローズドなエコシステムであり続けてきました。私たちは、オープンなエコシステムが実現すれば、さらなるイノベーションが促進されると確信しています。そしてイノベーションが起これば、一般的にはインフラを展開する人々にとって低コスト構造化が進みます」と氏は言う。
シスコのSVP、ディスアグリゲーションの規模については現実的
シスコはネットワークのハードウェア・ソフトウェアの分離(ディスアグリゲーション)をより広範に進めていこうという動きを支持しているが、とはいえ市場全体のダイナミクスがすぐにこのモデルに移行するとは考えていない。
「売上の大半は完全統合システムの販売によるものになるでしょう。あらゆるものを統合することによる金銭的価値がそこにあるからです」とDavidson氏は言う。
氏の説明によると、2019年後半に導入されたプログラマブルなシリコンアーキテクチャである「Cisco Silicon One」は、ハイパースケーラー、データセンター、サービスプロバイダに対し、さまざまな形で独自のシステムを構築する柔軟性を提供するものだという。
同社はこれを、シリコンのみ、ソフトウェアを含まないシステム、完全統合システムという3つのモデルに分割している。「ハイパースケーラーは多くの場合、完全統合システムを選択するでしょう。次いで、解決しようとしている問題に応じて、他の2つのモデルのいずれかを選択して展開することになります」とDavidson氏は言う。
Davidson氏によると、従来のサービスプロバイダはホワイトボックスのハードウェア上で動作するソフトウェアを購入することに関心が高いが、シスコのIOS XRオペレーティングシステムを使用しているハイパースケーラーは通常、完全統合システムもシスコから購入するという。
先月下旬の決算説明会で、CFOのScott Herren氏はソフトウェアの年間売上高ランレートが現在140億ドル(約1兆5330億円)に達していることを挙げ、シスコは「世界最大のソフトウェア企業の1つ」になったと述べているが、同社は今も一義的にはインフラ製品のベンダーだ。直近の四半期における売上高の71%、91億ドル(約9960億円)を(サービスではなく)製品が占めている。
Davidson氏によると、少なくとも2015年以降は毎年成長を続けているホワイトボックスハードウェア市場は今後の展開を示す指標だという。「私たちは、ホワイトボックス市場をデータセンター市場のシェアを集約したものと考えています。これはハイパースケールネットワークのニーズを把握するための仕組みなのです。彼らがホワイトボックススイッチングの最大のユーザーだからです」と氏は語り、シスコはこの分野をターゲットにしてアドレサブル市場(製品やサービスが獲得可能な最大の市場規模)を拡大しようとしていると付け加えた。
Matt Kapko, senior editor at SDxCentral, covers 5G network operators, radio access network suppliers, telco software vendors, and the cloud. He has been writing about technology since before the dawn of the iPhone, and covering media well before it was social. Matt can be reached at mkapko@sdxcentral.com or @mattkapko.
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